第89話 黒衣のゴブリン
岩魔鷲の大群を制圧して鬼人と別れたあとは、特に厳しい戦闘も無くオレと猫は安定して素材採集を続けることが出来ていた。
それでも時折岩魔鷲は飛来してくるし、地上ではゴブリンの上位種に襲われることもあったが、オレ達が窮地に陥ることはなかった。
むしろ、岩魔鷲などは『鳥の羽』を大量にドロップしてくれるので、オレに取っては素材採集となんら変わらないため、慣れてしまったらタダの美味しい獲物にしか見えない。
でも猫にとっての岩魔鷲は、純粋に素材採集を邪魔してくる面倒な敵なようなので、オレが一人で撃退出来ている時は手も出さずに素材採集を続けるようになった。
そんな感じで素材採集からのインゴット精錬を始めとして、戦闘から入手した鳥の羽と精錬したブロンズインゴットで標準弾矢を続々と生産を続けることで、さらにオレ達のLVは一つずつ上がった。
しかも素材は大量に入手出来ているので、懐事情もだいぶ温かくなりそうだ。
ちなみにオレも一つだけ聖銀鉱を見つける事が出来た。
ただ、今のオレには全く使い道がないので、猫に預けることにした。猫は頑なに買い取ると言い張っていたが、オレ達は仲間なんだからそこを変に気にされると困る。ちゃんと使える可能性が高い猫に渡しておいて後から還元して貰った方がパーティとしての利益は大きいはずだと言い聞かせた。
……代わりに猫の取り分としていたブロンズインゴットを大量に渡されてしまったが。
猫によると、彼のレベルではブロンズインゴットはもう生産にほとんど使わないそうだ。オレの言う主張を当てはめるなら、標準弾矢に調合した方が戦力強化になると言われてしまい、言い返せなかったからだが。
ちゃんと遠隔戦力として役に立たないとと改めて思った瞬間である。
そんなことをしながら《ノスド採石場》を徘徊しているうちに時間が経ち、空が赤みが差し始めた頃にオレ達は帰還することに決めた。夜の戦闘のことを考えたら、暗くなる前に大人しくルーテリアに引き上げた方がいいからだ。
帰還のために、最後に襲ってきた岩魔鷲からドロップした鳥の羽を回収していると、ふとオレは景色に違和感を覚えた。
『方角の目印』に……と、採石場から見えるやや遠めの景色を覚えたオレの中で、印象深く残っている堆く積もった岩石群。
オレの記憶で岩石群があったと思っていた方角に、岩石群が見当たらなかったからである。《採石場》という『特に目印もないダンジョン』で迷ったと思ったオレは思わず猫に声を掛けた。
「ガドル!確かあそこに岩の山があったと思うんだが、オレの記憶違いか?」
猫はオレの指した方向に視線を向けてジッと考え込んでいる。
「いやぁ、オラは周りの景色をそこまで覚えてないだ。でもファクトさんが無くなったと思うならなくなったんでないか?」
「……それはそれでマズい。本当に無くなったんだとすると、オレは採石場の道筋と方向がよく分からん」
オレは腕組みをして唸った。
「たぶん大丈夫だど。オラ、一応自分なりに目印をつけて進んできただ。だから出口方面へは行けるはずだ」
なんと頼もしい猫の言葉だろう。
その言葉に甘え、オレは猫の案内で《ノスド採石場》の入り口へ向かって歩き出した……が、その直後のことである。
ゴオッという豪快に風を切る音と共に、オレ達の背後から不吉な音が迫ってきたのだ。
「ガドルッ!伏せろっ!」
オレは前を歩く猫を突き飛ばしながら地面に伏せた。
頭上を結構な熱量を持つ大火球が通り過ぎ、進行方向で着弾と共に炎上した。爆風がその大火球の威力を教えてくれる。恐らくはイクスプロージョン級の魔法である。
「じ、冗談じゃねえ!」
オレは慌てて振り向き、大火球を放った主を確認する。
なんと、ゴブリンの集団だった。
そしてその全員が魔法使いらしき杖を構えている。一匹だけ明らかに周囲と異なる威厳を保った黒衣のゴブリンがおり、そいつがゴブリンの魔法集団を司っているリーダーのようだ。
「あいつかっ!」
オレはすぐさまクロスボウに標準弾矢をセットすると、黒衣のリーダーゴブリン目掛けて狙い澄ませた一発を放った。
『ギャヒィィィ!』
「なんだと?!」
オレの放った標準弾矢は、狙った黒衣のゴブリンでは無く隣に控えていたゴブリン魔法使いを捉えていた。いや、正確に言うと黒衣のゴブリンを狙った標準弾矢の軌道上に、ゴブリン魔法使いが割り込んできたのだ。
すぐに次弾矢をセットしたオレは、もう一度黒衣のゴブリンに狙いを定めて標準弾矢を発射した。すると、今度も着弾直前に付近のゴブリン魔法使いが吸い寄せられるように割り込んで、黒衣のゴブリンへの攻撃を邪魔したのである。もちろん邪魔したゴブリン魔法使い自体は倒せているのだが……。
「身代わりにしてるのか!」
そうとしか思えない。
自主的に庇っているというより、強制的に近くのゴブリン魔法使いを召喚しているように見える。敵とは言え胸くその悪い奴だ。
オレがゴブリン達の様子を観察している合間にも、ゴブリン魔法使いたちから一斉に火球が襲いかかってくる。それを確認した猫はオレの前に出ると、自慢の大盾で火球を受け止め、弾いて見せた。やるな!猫。
『ギャギャギャッ!!』
奇声を上げるとともに黒衣のゴブリンが杖を高く掲げた。
すると、掲げた杖の先に火球が生まれる。そして周囲のゴブリン達から魔法力のような物を集めてドンドン火球が大きくなっていく。
さっきの強烈な一撃は多分これだ!集団魔法……のようなものだったようだ。こいつは危険である。
「ガドル!これは回避だ!」
「もちろんだっ!」
配下のゴブリン魔法使いからかき集めた力で練りあがった巨大火球が、黒衣のゴブリンの手によってオレ達に向かって襲いかかってきた。先ほど威力を見ているオレ達は、これを受けるわけにはいかない。
さいわい初撃を躱す事が出来たことから、この魔法に誘導性能は無さそうなので、とにかく全力で移動して回避するしかない。
オレ達は巨大火球の軌道に対して直角方向へ回避することで、なんとか直撃を避ける。が、それでも着弾の爆風で吹き飛ばされたオレ達はそれなりのダメージを食らってしまう。
「痛いだよ!」
「ダメだ、回避してても勝てない!そもそも巨大火球を撃たせたらいけないらしい!」
オレはクロスボウに貫通弾矢をセットした。黒衣のゴブリンが身代わり作戦を強行するなら、その弱点を突くまでだ。
「くらえっ!」
オレの手から放たれた貫通弾矢は、黒衣のゴブリン目掛けて真っ直ぐ飛んでいく。
『ギャギャ!』
奇声とともに、黒衣のゴブリンは杖を掲げた。
案の定、近くのゴブリン魔法使いが軌道上に召喚されるも、オレの貫通弾矢は身代わりを貫くだけで、その奥にいる黒衣のゴブリンへと向かっていく。
『ギャギャ!』
二体目が召喚される。
が、同じ末路をたどっただけであり、貫通弾矢の進行はいささかも止められない。
『ギャース!』
結局、貫通弾矢は周囲のゴブリン魔法使いを全て犠牲にしたところで威力が相殺された。
この一撃で黒衣のゴブリンを仕留めることは出来なかったが、黒衣のゴブリンの愚策のお陰で周囲のゴブリンを一層することが出来てしまった。これであの巨大火球は撃てなくなった筈だ。
残った敵は黒衣のゴブリン一体を残すのみである。
「今だ!」
オレは再び標準弾矢をセットし、一匹残った黒衣のゴブリン目掛けて放った。今度こそ邪魔者なく射抜ける筈である。
しかし……
オレの期待通りの結果にはならず、放った標準弾矢は黒衣のゴブリンの目の前で激しい炎を上げて燃え上がり、焼失してしまった。
木の矢などとは違って、いわゆる燃える材質ではない標準弾矢が……である。
どうやらオレは、黒衣のゴブリンの強さを見誤っていたようだ。
明らかに単体で強い。
周囲のゴブリンを身代わりにしていたのは、恐らく自分の力で無効化するのが面倒くさいから……。そうとしか考えられない。魔物に搭載されているAI思考は思った以上に人間くさいところがある。
だがそんなことは些末な出来事である。
黒衣のゴブリンは単体で、先ほどよりも更に巨大な極大火球が、今にもオレ達に襲いかからんと生成されていたからだ。
「マズいな……あの野郎、今頃やる気だしやがって」
隣で蒼い顔をしている猫を横目に見ながら、必死に思考を回転させていた。
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名前:ファクト
性別:男
種族:ドワーフ
称号:クイーンビーバスター
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職業:調合士
LV:14
腕力:30 (24+ 6(STR+50%))
活力:45 (30+15(VIT+70%)+1)
敏捷:43 (33+10(AGL+70%))
器用:50 (48+ 2(DEX+50%)+1)
魔力:19
運 :20
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武器:ハンティングダガー(STR+12) :即死効果50%
盾 :
サブ:クロスボウ(STR+10) :命中精度80%UP:調合士装備時
弾 :ウッドボルト(STR+5)
頭 :ハードレザーバンド(VIT+4) :VIT値+1
手 :ハードレザーリスト(DEX+4) :DEX値+1
胴 :ハードレザージャケット(VIT+12) :毒無効
下肢:ハードレザートラウザ(VIT+5/AGL+4) :クリティカル回避5%
足 :ハードレザーブーツ(AGL+10) :移動速度20%UP
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所持金:
3,540G
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固有スキル
調合
アイテム鑑定:調合士
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修練スキル
虫の知らせ
必中
短刀術
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レシピ
回復薬小
回復薬中
毒消し薬
麻痺治療薬
木片
魔力粉 ※2way
木の弾矢
標準弾矢
徹甲弾矢
回復領域
魔力障壁
ブーストLV2
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受注クエスト
回復薬小の納品(束)350G/10個
毒消し薬の納品(束)250G/10個
麻痺治療薬の納品(束)300G/10個
回復薬中の納品(束)1,500G/10個
魔力粉の納品(束)6,500G/10個
新作武器の材料調達
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名前:ガドル
性別:男
種族:猫の獣人
称号:鍛冶マイスター:シルバー
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職業:鍛冶
LV:13
腕力:31 (25+6(STR+50%))
活力:76 (30+43(VIT+70%)+3)
敏捷: 8 (15-7 (AGL+70%))
器用:46
魔力:11
運 :30
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武器:アイアンハンマー(STR+10) :スタン効果10%
盾 :スクトゥム(VIT+30/AGL-10)
頭 :アイアンヘッドギア(VIT+6) :VIT値+1
手 :パワーグラブ (STR+2/VIT+4)
胴 :チェーンメイル(VIT+10)
下肢:レザートラウザ(VIT+4)
足 :アイアングリーヴ(VIT+7) :VIT値+2
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固有スキル
《鍛冶[シルバー]:付与効果小》
《装備鑑定:鍛冶》
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修練スキル
《鉄壁》
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