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イルグラード(VR)  作者: だる8
第二章 この世界を冒険する!
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第46話 情報交換

「おぉ!やったぁ!復活したぁ!ありがとぅ!おっちゃん!」

「すみません……本当にありがとうございました。貴方があのファクト様なんですね?」


 ランスロットはオレがやった回復薬小をぐったりしていた仲間に惜しみなく使い、(ランスロット)の二人の仲間は完全復活を遂げた。

 どちらも性別は女性で、ドワーフの探索者がミア、小人族の白魔法使いがティアナというらしい。


 二人の性格は真反対でミアは良く言えば自由人。悪く言えばがさつというところ。まあ気兼ねなしに接する事が出来るのはありがたい。一方のティアナはおしとやかな女性で常識人といった物腰と性格。小人族なのでちんまり見えるが、もしかしたらリアル年齢はオレより年上かもしれない。もっとも言葉遣いはやや若めに感じるが……。


「たまたま通りすがっただけだ。『様』なんてつけて呼ばれるガラじゃない。くすぐったいので普通に呼んでくれるとありがたい……ところで」


 オレは彼らに一番聞いてみたいことをぶつける。そう、ランスロットの口から聞いた『ルーテリア』という街についてだ。


「君たちは『ルーテリア』という街からきたのか?」

「はい、そうです」

「そだよ~?」

「ええ、そうですね」


 反応は三者三様だ。誰がどの返事だったかは説明せずとも分かりやすい。


「そうか。それならルーテリアという街についていろいろと教えて欲しい。ちなみにオレは『モルト』という街からスタートし、今は『アカシア』の街を拠点にしている。これまで、ルーテリアという街の名を聞いたことがなく、さきほど初めて聞いたばかりでな」

「なるほど、そうだったんですか。だからさっきは……」


 腕組みをしたランスロットが、納得したように頷いている。


「えっと?おっちゃん、あたしもモルトとかアカシアとか聞いたことがないんだけどお?どゆことぉ?」

「こら!ミアちゃん。そんな聞き方しないっ。ファクトさ……ん。私達は私達でルーテリアの街の事しか知りません。助けて頂いた身で申し訳ないですが、私達にもその……街のことを教えてもらえますか?」

「あぁ、構わない。情報共有をしよう」


 ティアナがまた『様』をつけそうになったことには触れない。


 ランスロットのパーティと共にその場で車座になると、オレは自分の知っている限りで、始まりの街として存在しているモルトとアカシアについてその位置や特徴を伝えた。

 どうやら彼らの話によると、ルーテリアの街もやはり始まりの街の一つで間違いないようだ。街のロケーションは山岳地帯にほど近い北の果て。それを聞いたオレは頭の中で位置を整理してみた。

 本当は地図があるとすごく楽なのだが……こればかりは手に入れられてないので仕方ない。


 仮に地図のど真ん中をモルトだとしよう。すると、モルトから見て真西よりやや北よりの位置にアカシアがある。そしてその先には海のようなデカい湖が広がっている。

 一方でアカシアの北には《あやかしの森》が広がっている。

 森の最南端に当たるのは、アカシアとモルトの街の間にやや張り出した場所だ。その地点から森は北へ大きく広がり山岳地帯へぶつかるまで続いている。その東の脇の辺りにある街がルーテリア。ということらしい。


 頭の中で位置関係を整理したオレは、今更ながらにあまりモルトの東の方面に向かっていないことに気づく。始まりの街であるかどうかは分からないが、きっと街なりダンジョンなり……何かあることだろう。しかしルーテリアに行ってみたい衝動に駆られていることもまた事実だ。


「うーん」

「どうかしたんですか?」


 情報共有をしながら唸って考え込んだオレをランスロットが心配そうに覗き込んでくる。


「いやぁ、次はどっち方面に行こうかな……ってな。ルーテリアの街にも興味があるが、モルトの東方面は情報がないので行ってみたい。どちらを優先しようか?という悩みが」

「おっちゃん!贅沢な悩みやわぁ」

「あぁ、全くだ。この世界は楽しいなぁ」


 ミアがちゃちゃを入れてきたのでオレは同調で返した。

 ティアナがややハラハラしたような表情をしているが、心配は要らんぞ。オレはそんなことで怒るような性格じゃないからな。むしろ引っ込み思案のひきこも……いや、これはイルグラード内では触れないでおこう。


「さて、そろそろオレは行こうと思う。仲間が待ってるからモルトに向かう予定だが、君らはこのあとどうするんだ?」


 オレはゆっくりと立ち上がる。


「ボクたちは一旦ルーテリアの街に戻る予定です。まだまだこの《あやかしの森》に入るには力不足とわかりましたし、もう少し力をつけてから再挑戦しようと思います」

「ランスの言う通りです。無事に戻れるだけでもありがたいです」

「あたしはどこ行くでもいいけど、リーダーはランスちゃんだからランスちゃんの決定に従うよぉ」


 どうやらランスロット達はルーテリアの街に戻るようだ。

 もしオレがルーテリアに行くようなことがあれば、彼らの元を訪ねて見ようと思う。折角なのでオレはランスロット、ミア、ティアナの三名とフレンド登録をした。これで行動がバラバラだったとしても、またどこかで再会出来ることだろう。


 ランスロット達との別れ際、オレはふと思い出す。

 彼らが向かおうとしている方角は、ちょっと前に盗賊がーらんどが向かった方角ではなかったか?あの時のオレは知らなかったが、今なら分かる。がーらんどは『ルーテリア』の方角へ姿を消したのだ。


「そうだ。盗賊について知ってるか?」

「盗賊……ですか?」


 ランスロットが首をかしげる。彼はあまり良く知らないようだ。


「知ってます。ファクトさん。確か唯一PKを仕掛けることが出来る職業……ですよね?」

「えぇ?そんな連中おるのぉ?」


 ティアナがオレの言葉に反応する。彼女は優等生のようだ。ちゃんと取説やキャラメイクの際のAIの説明を聞きこんでいる故の回答である。

 一方でミアはよく分かっていない様子。まあこれは想定の範囲内。


「ティアナの言う通りだ。で、ルーテリアはどうだか知らないが、モルトでは盗賊職を選んだプレイヤー達は何か徒党を組んで一般プレイヤーに攻撃してくる事がある。連中は……やり方は分からないが『盗賊』であることを隠蔽して仕掛けてくるので、注意が必要だ」

「怖いわぁ……それPKで死亡するとどうなるん?」

魔物(モンスター)にやられた時と一緒だ。オレ達は盗賊からの攻撃をまともに食らうし、逆にオレ達の攻撃は盗賊限定でプレイヤーに攻撃可能だ。そしてお互いに言えることだが、死亡退場してしまえばその場に残った装備品を追い剥ぎのように奪えるし奪われる。ただオレ達は出来ないが、連中は金も盗めるので油断するとやられるぞ」


 オレの言葉に絶句するランスロットたち三名。


「それ、レア装備を手に入れた直後とか……かなり危ないって事ですか?それは」

「その通りだ。また『盗賊』であることを隠蔽してくるので、例えば……なんでもいいが、戦士や魔法使いのフリしてパーティに参加し、レア装備が出た瞬間に背後から襲われる可能性などもある。野良パーティでレア狙いは危ないかも知れないな」


 ランスロットは察しがいい。最も注意すべきタイミングにすぐに追いついたようだ。

 ただし、一概にそれだけを狙ってくるとは限らないのが怖い……とオレは思っているが、それは盗賊(ガキ)に最初にやられたからだ。まあここまでは今の時点で話す必要はないだろう。


「オレが盗賊ではないかと睨んでいる怪しいプレイヤーを教えておく。ただ……気をつけて欲しいのはそのプレイヤーが盗賊であると確定はしてないということだ。だから個々で注意するだけに留め、公言はしないようにな」

「分かりました」


 オレはルーテリア方面に向かった『がーらんど』の名前だけ伝えた。

 本当はアサルトや、連中の作戦に登場したフィリップなどの情報を伝えても良かったのだが、余計な情報を得ることで彼らが連中に集中的に狙われるのは良くないと考えたからである。


 オレはランスロット達パーティと別れ、足早にモルトへ向かう。

 無駄なことをしたとは思っていない……が、予想より時間を食ってしまったのは事実だ。あんまり待たせるとエルナが膨れてしまうかも知れない。(ガドル)にも久しぶりに会いたい。


 さっさと《あやかしの森》を抜けると、オレはあまり目印のない大草原の中をモルトの街に向かって走った。


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