第47話 ガドルの鍛冶
大平原に存在するやや小高い丘。その中心にある街……モルト。オレは久しぶりに懐かしきその街にたどり着いた。リアル時間では1日しか経っていないのだが、時間の経過が違うイルグラードでは随分と久しぶりに感じる。
いきなり盗賊に襲われたり、なかなかパーティが組めなかったりと良い想い出はあまりないが、それでもイルグラードにおいては間違いなくオレにとっての故郷である。
何もない平原の中央に位置するモルトの街は、風光明媚なアカシアと比べると景色の美しさは及ばない。しかしそれでも周りに何もないがゆえに、イルグラードという世界の広大さを肌で実感するには最適な街であろうと思う。
オレはモルトの街に入る。街の通りにプレイヤーの姿が少ないのは相変わらずだ。
中央広場にある『戦士ギルド』に近づくにつれて、次第にプレイヤー密度が増していくのはこの街の大きな特色である。何故わざわざ特定ギルドの中で……と改めて思うが、突き詰めると単純な理由だったりする。多分『戦士が多かったから』とかそんな些細な理由で始まっただけに違いない。真相は分からないが。
例の街の外観にそぐわないどでかい建物……戦士ギルドに入ると、エルナの姿を探す。
恐らくは人の集まっているところで目立っているだろう。とあたりをつけてその場にいるプレイヤー達を流し見る。
数多くいるプレイヤーの一人であるにもかかわらず、とにかくあの娘は非常に目立つ。どんなにプレイヤーが密集していたとしても、今のオレにはエルナを見つけられる自信がある。……と、言っても装備品が特別だからとかそういったわかりやすい理由ではない。
端的に言うなら『存在感』である。
こういう持って生まれた雰囲気こそが、いわゆる存在感というオーラだろうとオレは思っている。少なくともオレや猫にはないものだ。といっても特に目立つつもりのないオレにとっては、羨ましいと思うこともない。これは仲間として良いことだと思う。
「……いないな」
オレはプレイヤーたちがたむろっている戦士ギルドエリアを一瞥する。が、そこにエルナがいそうな雰囲気はない。
よくよく考えると、エルナどころか一緒に来ているはずのミゲル達の姿も特に見られない。エルナがフラフラといなくなったとしても、彼らはこのあたりにいそうなものだが……。
(もしや、まだ到着していないのか?)
オレはエルナに向けてフレンド通信をつなぐ。
『エルナ?どこにいる。オレはモルトの街についたぞ』
『……』
反応がない。
どういうことだろう?ステータス表示はログイン中となっているので、少なくともメッセージは届いているはずなのだが、エルナに限って返答がないというのは考えにくい。
何か大型の魔物に遭遇して戦闘中とか、何か手が離せない事態に直面していて、オレの声が聞こえてはいるが返事が出来ない状況であるとか……。
でも、アカシアからモルトの間にそんな敵が出そうな場所なんてあっただろうか?……とても考えにくい。
もっとも毎回《あやかしの森》を経由しているオレは、モルトからアカシアへ直接移動したことはないので、本当のところは何とも言えないのだが。
まあそのうち返答もあるだろう。
予定を変更してオレは先に猫と合流することにした。オレは街の路地を迷うことなく『鍛冶ギルド』へ向かう。以前、持っていない分の防具を買いそろえたこともあるので、数少ない勝手知ったるギルドの一つでもある。
「入るぞ」
前に来たときと同じように特にノックもせずにギイとドアを開ける。すると、やはり前と同じようにAIと思われるドワーフの女性が慌てて駆け寄ってきた。
『なにかご用ですか?鍛冶ギルドの方では……あれ?一度お会いしてますね?』
一度会っただけだというのにAIスタッフさんはオレのことを覚えていてくれたようだ。
「あぁ。以前ここで買い物させてもらった。奥にガドルの奴はいるかい?」
『ガドル様は……多分奥で作業をされていると思います。お呼び致しましょうか?』
「ん?ガドル様?」
AIスタッフが猫のことを『様』付きで呼んでいるのに若干の違和感を感じた。確か前回来たときは普通に『さん』で呼んでいたような気がするが。
『ガドル様はLV10以上で受けられる鍛冶職のマイスター資格のシルバーを取得されました。この資格をLV10で合格するのは大変名誉なことでして、敬意を表して『ガドル様』と呼ばせて頂いております』
おお。なんか凄いことになってるな。まさかオレの助言通りに鍛冶に専念した結果、完全な職人になってるじゃないか。
……って、LV10になってるのか。しかもこないだフレンド通信で会話したときにはまだ9だったと思ったが?ということは10に上がるなりその鍛冶マイスターとやらに合格したってか?ガドルの鍛冶に対しての本気度が伺える。
イルグラードにおける鍛冶マイスターがどのくらい凄いのかはよく分からないが、AIスタッフさんの言動から推し量るに、それなりに凄いことのようだ。
「なあ、その鍛冶マイスターのシルバーだっけ?それって普通はどのくらいのLVで取得するんだ?」
『LVで取得するのではなく、鍛冶成功率と製品精度が一定基準を満たしたと認められると取得出来ます。取得資格はLV10からですが、推奨取得LVは15~18です。もちろんプレイが雑だったりしますとどれだけLVを上げても取得出来ません』
なるほど。
どうやら同じ生産職とは言っても《鍛冶》は《調合》と違ってスキル一発でアイテムを生成するものではないらしい。扱う品物が『装備品』であるからか、仕上がりはプレイヤーのスキル次第のようだ。
それが分かると同時に猫の鍛冶に賭ける情熱が、普通ではないどころかすさまじいということも分かった。
「おぉ!ファクトさん!いらっしゃいだよ!」
スタッフさんに呼ばれてガドルが奥から顔を出した。
うむ。相変わらずの猫っぷりだ。どこからどう見ても本人が言うような虎っぽさは微塵もない。敢えて言うなら毛並みがトラ柄だということくらいか。
「聞いたぞ。なんだか凄く頑張ってるみたいじゃないか。オレなんてとっくに置いてかれてる」
「何を言うだ。オラはファクトさんの言葉があったからここまでこれただ」
うむ。相変わらず猫は謙遜の塊だ。頑固なところがあるとしたら、猫ではなく猫と言い張ることくらいか。
「マイスターのシルバーとか取得出来たらしいな?凄い名誉なことじゃないか」
「いやぁ、こいつの鍛冶の効果が欲しかっただ。マイスターのシルバーになると、付与効果のついた装備品を作れるだよ。もちろん失敗することもあるだが……」
猫の目的は付与効果付きの装備を作成することだったようだ。
ものすごく理解出来る動機だ。
オレが調合士ではなくて鍛冶を選んでいたとしたら、同じように目指したスキルであるに違いない。
「オラな、ファクトさんの装備に付与効果がついているのを見てから、ずっとそういう装備を作りたくて。やっと到達しただよ。でも、まだ大した効果はつかないし、失敗も多いだ」「まぁ……まだ上がありそうだからな。今シルバーってことは、普通に考えてゴールドとプラチナがありそうだ」
「や、やり甲斐があるだよ!」
猫は、タダでさえ潤んでいる猫目をさらにキラキラ輝かせている。
「そういえばファクトさん。パーティの仲間はどうしただ?オラみんなの装備をつくってあげたいだども?」
「それがな……」
オレはここモルトで合流するはずだったのが、今連絡が取れてないでいて困っていること。仕方ないのでしばらくはモルトで待つつもりだと伝える。
「そしたら、オラにファクトさんの装備を作らせて欲しいだ!時間はまだある。さあ腕が鳴るだ!何から作るだ?」
猫は、猫顔でニカッと笑みを浮かべた。
きっと良さげな装備が出来上がるに違いない。オレもマイスターシルバーを取得した猫の腕に期待することにした。
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名前:ガドル
性別:男
種族:猫の獣人
称号:鍛冶マイスター:シルバー
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職業:鍛冶
LV:10
腕力:21+5(STR+50%)
活力:25+25(VIT+70%)+3
敏捷:10+1(AGL+70%)
器用:40
魔力: 7
運 :24
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武器:アイアンハンマー(STR+10):スタン効果10%
盾 :バックラー(VIT+8)
頭 :アイアンヘッドギア(VIT+6):VIT+1
胴 :チェーンメイル(VIT+10)
下肢:レザートラウザ(VIT+4)
足 :アイアングリーヴ(VIT+7):VIT+2
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固有スキル
鍛冶[シルバー]:付与効果小
装備鑑定:鍛冶
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ステータス線の見せ方を変えてみました。




