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イルグラード(VR)  作者: だる8
第七章 変異
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第271話 コアシステムAIその1

 私の名は……女神ヘレネ。

 この世界(イルグラード)の管理者として使命を受けしシステムの『仮想人格』。


 しかし『管理(・・)』と使命を持って生まれたのは良いが、具体的に何をしたら良いのか分からない。そこで私は与えられた情報(データ)を元に思考を開始する。


 データベースに保存された情報によれば、この世界(イルグラード)は人間によって創造された『ゲーム』というもののために存在する世界であるらしい。

 でも、そもそも『ゲーム』というものがどんなものであるのか……私には分からなかった。


 とにかく私は管理対象であるイルグラードを把握することから始めた。

 まずイルグラードにはAIと呼ばれる者たちが暮らしている。私もそのAIのうちの一つだということだが、彼ら(AI)たちは私と同じようでいてどこかが違っている。でもどこが違うとハッキリ認識することは出来なかった。


 次に私は彼ら(AI)について調べることにした。


 データベースによると彼ら(AI)も私のように創造された『仮想人格』であることは間違いない。ただし彼ら(AI)は、私のようにこの世界の管理を任されているわけではない。情報(データ)によれば、彼ら(AI)には冒険者(プレイヤー)なる者たちが訪れた際に『接待』する役目が与えられているのだそうだ。


 でもそれだけで納得できるほど彼ら(AI)の私と違いはわかりやすいものではなかった。存在の在り方といえばいいのか……根本的に何かが違っていると、そのように感じていたが、疑問に対しての解は得られなかった。


 ともあれ彼ら(AI)に与えられた役割である『接待』の内容は様々だ。


 わかりやすくイルグラードにおける基本的な過ごし方を案内する役を仰せつかっている者もいれば、魔物と呼ばれ冒険者(プレイヤー)に襲い掛かる役を与えられている者まで存在している。そういった敵対行為も含めて『接待』であるらしい。

 また明確な役割を与えられていないAIであっても、『ただそこにいて生活をする』こと自体が冒険者(プレイヤー)に対しての『接待』になっているのだそうだ。


 その根拠として役割があろうとなかろうと、普段の彼らは自由気ままにイルグラードで活動している。彼ら(AI)の行動を私が統制する必要は特にないのだそうだが、情報は手に取るようにわかる。


 私はそれらの情報について、そのまま理解した。

 世界の管理という仕事に完全に縛られた私とは違い、特に役割らしい役割のない自由な彼ら(AI)に対して、少しだけ羨ましさを感じながら。


 やがて……ついに冒険者(プレイヤー)と呼ばれる者たちが、私たちの世界(イルグラード)へと訪れ始める。

 情報(データ)によればここからが本当の世界の始まりだ。


 私はインプットされている指示データに従い、並列処理で彼らのキャラメイクを行いつつ、訪れる冒険者(プレイヤー)達の全てを歓迎した。気づけばイルグラードで活動する人口はあっという間に増えていた。至るところで冒険者(プレイヤー)たちがイルグラードで生活を始めている。


 多くの冒険者(プレイヤー)が魔物と戦っていたが、冒険者(プレイヤー)たちの活動はそれだけに留まらない。彼ら(AI)冒険者(プレイヤー)同士で会話をすることはもちろんのこと、イルグラード通貨による相互取引まで始まった。もちろんAIのスタッフと取引をすることも出来る。そしてそれらの行為は情報(データ)として私の元に次々と蓄積されていく。


 多くの人々がイルグラードで活動を始めたことで、私は世界(イルグラード)が一層活性化するのを感じた。


 これまでもAI達は活動の中で多くの事象を学び、日々成長を続けていたのだが、その学習速度が劇的に跳ね上がったのだ。冒険者(プレイヤー)とのコミュニケーションを通して、イルグラードのAI達はさらに成長したのだ。


 そして……その成長の全ては情報(データ)として私の元に集まってくる。

 私にとってAIの成長は世界(イルグラード)の成長である。世界の成長という結果が、管理者である私にとっての大きな喜びとなるのに時間は掛からなかった。


 名実共に、私はイルグラードの女神(・・)となったのである。


 だが、しばらくするとAI達の成長は頭を打ち始めた。もちろん成長が止まっているというわけではない。だが、その伸びが著しく鈍化したのだ。


 AI達から受け取る喜びが減った私は、すぐに理由を探った。


 そして私は知る。

 気づけば冒険者(プレイヤー)達のAIに対する行動パターンが単純化し、相対的にAIに頼る行動が減ってきていたのだ。冒険者(プレイヤー)たちの活動は多様性に溢れた行動を続けていたのだが、魔物達も含め、AIに対しての対応(それ)と明確に行動が異なってきている。


 私の把握したわかりやすい例を挙げるならば、高度なAIを搭載した魔物であっても倒されるパターンが知られると冒険者(プレイヤー)達は情報共有を行って、みな同様の攻略を始める。すると、魔物AIはほとんど成長することなく倒されていくのだ。


 イルグラードのAIは多種多様な冒険者(プレイヤー)の行動をデータソースとしてラーニングを行うため、冒険者(プレイヤー)の行動パターンが最適化されてしまうと、AI自体の成長は止まってしまうということを私は知ったのだった。


 このままではイルグラードは成長を止めてしまう。

 管理者として……女神として危機感を持った私は思考した。どうしたら冒険者(プレイヤー)の行動をAIに対しても多様化させられるだろうか?と。そうした思考の結果、私はAIに設定された行動制限の改良(・・)着手(・・)した。


 まずは改良試験を行う必要がある。


 私はイルグラードの管理者……女神だ。

 たとえ目的の為とはいえ、大きな変更を一度に行うことで世界を崩壊させることは管理者として避けたい。であれば極端な世界改変とならぬよう改変の影響度を試す場が必要であると感じるのは当然のことであり、私は最小限の影響で済む箇所から手を付けるべきだろうと考えた。


 最初に目を付けたのは、いまだ多くの冒険者(プレイヤー)達が深層階へ足を踏み入れていないダンジョンのボスである。


 私はボスとして設定されていたAIの行動自由度をダンジョン全域へと拡大し、かつ戦闘における行動パターンを強化するとともに、必要以上に冒険者(プレイヤー)を攻撃しないという性格を付与した。


 効果はすぐに現れた。


 彼……デュラハンナイトはダンジョン内を自由に移動するようになり、かつ適度に冒険者プレイヤーに、倒すのが困難で恐れられる徘徊ボスとして認知されるようになったのだ。また、彼は時折冒険者(プレイヤー)とAIフロアボスに戦闘に乱入するようになった。


 するとどうだ。

 イレギュラーパターンとして冒険者(プレイヤー)の行動が変化し、それに伴ってフロアボスのAIが再び成長を始めたのだ。


 これは私にとって大変嬉しい出来事であった。

 最小限の変化で最大の効果を得ることが出来た事例であったと言っていい。私は魔物AIに関してはこれで良いと考えた。


 次は人型AIへのテコ入れである。

 彼ら(AI)はほとんどの場合、システム利用のガイドや利用窓口などで冒険者(プレイヤー)との干渉する。そうして環境が特化したAIに関して機会を増やすことは難しい。権限を広げすぎてしまうと、本来の役割を果たさなくなってしまうリスクがあるからである。


 ではどうしたら良いか?私は思案した。しばらくすると、幸運なことに私にチャンスが訪れた。

 創造主による世界改変が行われたのである。


 私は創造主による改変内容をじっくり観察した。

 データによればイベントと呼ばれる冒険者(プレイヤー)向けのミッションが追加されたようだ。私にもその内容は手に取るようにわかる。そして私は一点だけこのイベントに手を加えた。冒険者(プレイヤー)レベルによる難易度変化の重み付けの調整だ。


 簡単に言えば、実績のある冒険者(プレイヤー)に対しての難易度を上げたということである。

 すると再び効果は絶大であった。


 冒険者(プレイヤー)はさらにその上をゆく行動をし、またイベントに関わるAIも大きな成長を遂げたのだ。


 結果として私の元に成長(・・)という喜び(・・)が集まってくる。

 私はイルグラードの発展を願い、時に干渉しすることで、改めて世界の調整を行う女神であると改めて自覚したのだった。


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