第269話 兆し
SIDE ランスロット
「順調♪順調♪」
戦闘中にも関わらず、ミアの能天気な声が聞こえてくる。
確かにいまのところボク達のパーティは順調にストーリーを進めている。多分……というかまず間違いなくストーリー進行は一番早いと思う。
でもボクたちだけじゃとてもこうはいかなかった。あの王城で会った二人、雷撃の賢者とか呼ばれているらしいアルテミスさん。そして、ミステリアスな雰囲気かと思いきや一転、とてもフランクな性格だった暗殺者のリンクスくん。リンクスくん……ちょっと子供っぽいところがあるけどね。
どちらにしても二人の力がなければここまで順調に進んでないだろう。間違いなくミアの力ではないと思うよ?ボクは。
特に戦闘面ではアルテミスさんの力が大きい。
初めて会う敵でもすぐに戦い方を見つけて教えてくれる。彼女は明確に声で指示しているわけはないのだけど、彼女と一緒に戦っているだけで、どのように立ち回ったらいいのか感覚でわかるのが凄いと思う。
間違いなく彼女が教えてくれているんだと思うけど、そう感じさせないところが特に凄いとボクは思っている。どうやってるのかは全くわからないけどね。
そしてリンクスくん。
彼はダンジョン攻略のスペシャリスト。もしかしたらダンジョンだけじゃなくってゲーマーなのかな?
《暗黒の洞窟》の中にある闇の世界の進み方とか彼があっという間に見つけたし。アミュレットの使い方も彼のお陰で全く困っていない。まるで攻略サイトと一緒にゲームを進めているんじゃないかと錯覚するくらいスムーズ。ボクはびっくりだよ。
でも本当に攻略情報をもっているってわけじゃ無さそうなところが凄い。
時々ブツブツ呟いてて怖いと思うこともあるけど、そのあとは大体クリア情報が出てくるんだよね。だから、その場でしっかり考えて答えにたどり着いてるみたい。凄いよね。
「ランス!来てるよっ!」
おっと。いけない。
こんなんじゃミアのことを言えないよね。ティアナの警告のお陰で、目の前まで迫っていた刃を風神で打ち上げるように払うことが出来た。
ボク達は今、冒険者の襲撃を受けている。
たしか前にファクトさんが言ってた。盗賊職はプレイヤーキラー(PK)が出来るって。それをまさに今受けているところ。でも予想より襲撃者が弱くって拍子抜けしているところ。
それにしても……。
「なんでこんなに盗賊が襲ってくるんだろ?そんなに私たちはカモに見えるかな?」
納得がいかないといった様子のティアナ。
「くくっ。ティアナは装備がいいからね~。お金持ってるカモに見えるんじゃない?」
「そういうミアこそ無駄に良い装備もってるじゃない」
からかってくるミアに反論するティアナにも余裕は見える。
襲撃してくる盗賊職の冒険者は、それだけ強さが違う。要するにボク達と比べると弱い。でも不思議なことに蹴散らしても蹴散らしても襲ってくる。正直言って面倒臭いほどにね。
「ふふ。襲い来る盗賊を返り討ちにするのは良い気分だ。地獄を見せてあげるよ?」
リンクスが舌舐めずりをしている。
その反応も少し違うと思うんだけど、ツッコまない。というのも彼は、始めたばかりの頃に盗賊の襲撃にあって酷い目に遭ったという話を聞いたから。今襲ってきている相手は違う人みたいだけど、思うところがあるのだとボクだって思う。
「やれやれ……」
その隣では雷撃の賢者ことアルテミスさんが、わかりやすくため息をついていた。
アルテミスさんも呆れているのかな?
……
SIDE アルテミス
ったく?どういうことだよ?あたしに楯突こうってのかい?こいつら若頭の部隊にしちゃ弱すぎるし、元締めのあたしのことを知らないの?誰の部隊か知らないが教育がなってないわねっ!徹底的にお仕置きしてあげる。ついでに若頭もお仕置き決定ね。
実は裏で盗賊団のボスをしている雷撃の賢者ことアルテミス。彼女は、次々と襲ってくる盗賊に苛立っていた。ちなみに苛立ちの原因は襲ってくることではなく、その弱さに対してだった。
ただでさえステータスで優遇されている筈の盗賊。
普通にゲームプレイをしていれば、いわゆる一般職冒険者より強くなる筈の盗賊。だが、アルテミスは常日頃から若頭達に、プレイスキルを磨くことを指示していた。
というのは当然自分のように、盗賊を凌駕する冒険者もいるし、まだイルグラードでは牙をむいていないようだがあのファクトのようなプレイヤーもいる。知っているプレイヤーでなくても強い冒険者は山ほどいるのだ。安全にPKプレイなど出来るはずはない。
にも関わらず、今襲撃してきている冒険者のゲームスキルの低いこと低いこと。動きの素早さやパワーから類推するに、レベルだけは高いようだがそんな程度では自分には通用しない。
また自分はともかくとしても、今籍を置いているランスロット達にだって通用していない。戦闘職でも上級職でもない、探索者のミアに翻弄されている様子を見てガッカりしているのだ。
アルテミスはリーダーのランスロットについては、プレイヤースキル含め強いと評価していた。また自分と一緒に加入したリンクスに関しても、戦闘はともかくゲーマーとしてのスキルが高いことを評価している。
だが、白魔のティアナと探索者のミアに関しては、普通の冒険者だと評価していた。
もちろんティアナは清純そうに見えていて腹黒いところもあるし、ミアだってただの能天気ではない。アルテミスはそんなこと百も承知の上で普通と評価していた。だからこそそんな普通な冒険者に翻弄されているようでは、盗賊である価値がない。
だから低すぎるプレイヤースキルに腹を立てていたのだ。
どうせあたしらがストーリー攻略一番進んでいるんだし、ここらで一度アジトに戻るか?いやダメか。アジトは王都だ。フレアヴェールの拠点はアイツらに開放してないし……仕方ないね。個別に若頭のやつと連絡を取ってみるか。
どちらにしても襲撃中の盗賊は始末しないとね!
雷撃の賢者アルテミスは、帯電した両手を迫ってくる盗賊たちへと向けると、最大級の雷撃が盗賊達に襲いかかった。彼女が攻撃したそのあとには、ピクリとも動かなくなった冒険者……盗賊の集団が倒れていた。




