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イルグラード(VR)  作者: だる8
第五章 イルグラードの夜明け
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第192話 ガドルの工房にて

 イルグラード初期街の一つ……城塞都市モルト。ファクトとガドルが冒険を始めた街である。

 城門をくぐり、街の中に入ったエルナ達はぐるりと辺りを見まわす。冒険者(プレイヤー)の姿がほとんどなかったアカシアの街のイメージから、モルトも同様であるかが気になっているからだ。


 そしてモルトはというと、人数の変化が激しかったアカシアの街ほどではないが、やはり全体的に冒険者(プレイヤー)の数は少なそうに見える。

 エルナもミゲルたちもモルトの街に入るのが初めてではないので、少ないことだけはすぐに分かった。


「(っち……王都行くの厳しいなぁ。もう少し鍛えてからかよぉ……)」


 ふとそんな呟きにも似た声が、どこからか聞こえてきた。どうやらエルナ達に近くにいた知らない冒険者(プレイヤー)の声のようである。

 呟きの内容からして既に王都に出発したものの、全滅……もしくは断念して戻ってきた冒険者(プレイヤー)たちのようだ。彼らが王都へ向かった道のりのどこまで進むことができ、どこで壁に跳ね返されたのかは分からない。

 しかし、そうして戻ってきてる冒険者(プレイヤー)も少しずつ出始めているようである。


「みんな、もう王都チャレンジしてるんだね」


 エルナは思わずそう呟く。

 別に焦ってストーリーを進めたいというわけではないのだが、皆がチャレンジしているのを知ると何も手をつけていないことが気になってしまう。


「気にすんな。実装されたストーリーは逃げやしねぇ。それにまだファクトの奴も戻ってきてねえんだろ?お前は一人で進めたいのか?」


 ミゲルの問いかけにゆっくりとエルナは首を横に振る。


「違うわよね?大好きなファクトさんと一緒にやりたいんだもんね?」

「な……ぁ……う、うん。そうだよ!ファクトと一緒にやるんだ!わたしはファクトと一緒にやるんだもんっ!」


 スフィアの直球のコメントに目を白黒させながらも、エルナはファクトと一緒にストーリーを進めたい意思を伝える。

 そんなエルナの様子にふふっと笑顔で返すスフィア。


「若いっていいなぁ、素直で。な?俺も若けえころはスフィ……ぐっ?!」


 余計なことを言いそうになったミゲルの足をスフィアが思い切り踏んづけた。これが相当痛かったようで、突っ立ったままミゲルは悶絶している。


「そういうことなら、私たちもファクトさんと一緒に行きましょう。いいわよね?ミゲル」

「……あ、あぁ、異存はねぇ。大所帯の方が面白えしな。で?もう一人の仲間の鍛冶の奴はどこにいんだ?」

「うん。ちょっと待ってね!」


 ここで初めてエルナはガドルに連絡を取る。

 突然の声かけにビックリした様子のガドルだったが、鍛冶ギルドにいるらしくギルドに来てくれとのことだそうだ。


「じゃあ!みんなで猫ちゃんに会いに行こう!」

「「猫?」」


 エルナの物言いにミゲルとスフィアが首を傾げた。


……


 鍛冶ギルドについたエルナはガドルに会いに来たことを伝えると、AIと思われるギルドスタッフに案内されながらギルドの奥へと向かう。


「あれ?確か前この辺じゃなかった?」


 AI(スタッフ)に案内されるままに歩いていたエルナだったが、突然そう声を上げて立ち止まった。エルナの指差す先には通路があり、その先にいくつかの扉が見える。


「エルナ、本当に覚えてんのか?方向音痴のお前(エルナ)が」


 絶対に間違っているのはエルナだと言わんばかりに、はよAI(スタッフ)の後について進めと(あご)で伝えるミゲル。


「えぇっ!……確かにそんなに自信はないけどさぁ。ここ一本道で最初の角だよ?そのくらいのことは流石に覚えてて……」

『ガドル様は、つい先ほどシルバーマイスターからゴールドマイスターへと昇格されました。そのため個室工房を移動されました。こちらの奥になります』


 エルナとミゲルのやり取りを遮るようにAI(スタッフ)が説明を入れる。それを聞いたエルナの表情がにま~っと崩れていく。


「ほらぁ!やっぱり合ってたじゃん!」


 勝ち誇るエルナを見ながらミゲルがさらに顎をクイッと動かす。


「でもな、どっちにしても今は違うんだろ?AI(スタッフ)さんが、ちゃぁんと案内してくれてんだから、ついてこうぜ?」

「あ……うん」


 場所関係の記憶が珍しく合っていて喜んだエルナではあったが、ここはミゲルの言うことが正しい。


「それにしてもゴールドマイスターって?」

「すごい!猫ちゃんまた昇格したんだ!」


 鍛冶職の仕組みを良く知らないスフィアが首を傾げる。そして同じくよく分かってないけどとにかく喜ぶエルナ。


『はい。ゴールドマイスターとは鍛冶LV15以上で受けられるマイスター資格でして、作製される装備の品質が一定以上を均一で保てることをギルドが保証しております。シルバー以上から個室工房を持つ事が出来ますので、ゴールドではより設備の整った工房をご利用出来ます』

「へぇ。じゃあガドル君とやらはLV15くらいってことなんだな?」


 ミゲルが大して驚いた様子も見せずにそう言うのを聞くと、AI(スタッフ)はクルリと振り向いてミゲルの方をジッと見つめる。


「な、なんだよ?」

『ご存じないようなのでお伝え致しますが、LV15というのはあくまでもマイスター資格に挑戦出来る最低レベルのことです。当方で設定している平均取得基準はシルバーで15~18。ゴールドは25~程度です。ガドル様は非常に優秀な職人でございます』

「お……おぉ?そうなんか」


 ややAI(スタッフ)の迫力に圧されたミゲルである。


『さて、こちらでございます』


 そう言ってAI(スタッフ)がドアをノックすると、中から『はいだ~』と返事が聞こえてくる。返事を聞いたAI(スタッフ)がドアを開けてくれたので、三人はエルナを先頭に工房へと入っていく。


「よくきただ!オラの工房へようこそ!」

「おひさしぶり~猫ちゃん!あ、ちがった!虎柄の猫ちゃん!」


 挨拶を聞いて、鍛冶ハンマーを持ったままつぶらな瞳をエルナたちの方へ向ける。


「虎柄の猫じゃなくて(トラ)の獣人だす。……後ろの方々は?」

「あ!そうそう。(ガドル)ちゃんに紹介しようと思って。ファクトと一緒にダンジョンに潜った仲間だよ!えっとこっちの怖そうなのがミゲルで、こっちのお姉さんがスフィアさん」

「怖そうなのって……ったく」


 エルナの雑な鐘会に苦笑いしながらミゲルとスフィアが前に出る。


「盾戦士やってるミゲルだ」

「白魔法使いのスフィアです。よろしくね」

「鍛冶のガドル。(トラ)の獣人だ。ファクトさんたちと一緒にパーティ組んでるだよ」


 ぴょこんと一礼するガドル。


「それにしても、アレだ。エルナが『猫ちゃん』って呼んでる理由が分かった。猫獣人の冒険者(プレイヤー)は何人か知ってるが、ここまで猫寄りの奴は初めて見たわ」

「……(トラ)だす」


 どこかで聞いたようなやり取りがここでも繰り返されるのだった。


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