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イルグラード(VR)  作者: だる8
第五章 イルグラードの夜明け
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第188話 同行者

 すったもんだがあったランスロット一行だったが、そのまま王都『ベル=フレッタ』の街並みを眺めつつ、最奥にあるお城へと向かって歩いて行く。

 もともと銀色のハーフプレートで全身を包んでいたランスロットの脇を、装備を一新したミアとティアナが歩くその一行の姿は、本人たちがどう思っているかはともかく、いわゆる物語の主人公として出てきそうな勇者一行……のようである。


 装備品の機能を重視した結果、見た目にはわりとバラバラで統一感のない冒険者(プレイヤー)が多い中、圧倒的な存在感は周囲を凌駕している。

 同時期……つまり、今この瞬間に王都『ベル=フレッタ』で王城に向かっている冒険者(プレイヤー)はランスロットたちだけではない。しかし、彼ら(ランスロット)の英雄然とした雰囲気に気圧(けお)されたかのように、歩く先々で道が開けていく。


 ……彼らの人となりを知ったら、普通の冒険者(プレイヤー)だと分かるにもかかわらずである。

 人がいかに見た目に弱い生き物かが分かる光景だ。


「ヤバいよ!あたしたち避けられてる?」

「そんなはずは……別に恨み買ったり嫌がられるようなプレイは……してないはずだけど」

「でも混雑してるのに歩きやすくて助かりますね」


 本人たちに立派すぎるいでたちで目立っているという意識はまるでなさそうである。

 ただそれでも非常に目立つランスロット一行の進行方向は、聖書に記載されるところの「モーゼの海割り」がごとく、道が開けていく。その比は、以前エルナが戦士ギルドで発生させた人混み割りどころではない。

 

 と、そんなちょっとした騒動を起こしつつ、王城の門前までたどり着いたランスロット一行。

 目の前には荘厳で麗しい外観が三名を待っていた……はずなのだが、それより門前の混雑っぷりが酷い。海割り(・・・)のお陰で、ランスロットたちの周囲はまだマシなほうではあるが、それでも王城門前は冒険者(プレイヤー)でごった返している。

 

「風情もへったくれもないじゃん!これじゃ満員電車待ちか、デ○ズ○ー○ン○の入場待ちみたいじゃない!」

「私たちみたいに早くストーリーやりたい人が殺到してるんだよ。他人(ひと)のこと言えないでしょ?私たちだって混雑の一部よ?」

「それにしても……?」


 不満顔のミアとそれをなだめるティアナを尻目に、ランスロットはやや違和感を感じていた。

 というのは、人が集まってくること自体は理解できるが、門前(・・)で混雑してしまう理由が分からなかったからだ。何故なら城門は開け放たれ(・・・・・)ているかである。


「なんでこんなところでたむろってるんだ?さっさと入ればいいのに?」

「緊張して立ち止まってるとか?」


 ランスロットの小さな独り言にミアが混ぜっ返してきた。さすがにそんなわけはないだろう。わざわざここまで来てるんだ。さっさと行きたいに違いない。


「確かに。門が閉じられているわけじゃないのですから、ランスの言う通り……ちょっと変ですね」

「まあ行ってみようか。行ったらわかるだろう」


 大勢の冒険者(プレイヤー)は門の先に行かずに立ち止まっているのに対して、門の先へ進んでいる冒険者(プレイヤー)が一定数いることにランスロットは気づいていた。

 進めないわけではないのだ。


「よっし!あたしが先頭で行っちゃうよ!」


 ミアが元気よく走りだした。

 仕方なくランスロットとティアナも遅れすぎないように後をついていく。すると開かれた城門のところでちょっと面白い光景を目にすることになった。


「なにやってんの?ミアちゃん」

「見て分かんない?入れないんだ!」


 そう。

 一人駆け出したミアは城門のところで駆け足の足踏みをしていたのだ。全力で走れば走るほど、前に進まないその姿は滑稽である。


「……理由がわかったよ。ミア。ちょっと落ち着こう」


 ランスロットは何とかして城門の先へ行こうとするミアを制した。


「なにさ?」


 ミアは空走りを止めてランスロットの方を振り返る。が、ランスロットはミアの方を見ていない。

 よく見るとランスロットだけではなく、ミアも一緒にやや上方を見上げていた。


「え、なになになんかあるの?」


 ミアは二人の立っている位置まで戻り、同じように上を見上げた。すると……

 

(この先は4人以上のパーティを組んで進むこと)


 と、開かれた門のところに文字が浮かんでいたのだ。

 先ほどまでは文字が表示されていなかったので、城門の先に進もうとした際に『4人』という条件をクリアしていない場合に表示されるようだ。


「これって……4人以上でないとストーリーが進められないってことよね?」

「そういうことだね。どうしてそんな制約があるのかわからないけど、イベント的なものなのか、それともいきなりボス戦があるのか」

「じゃあこの冒険者(プレイヤー)の混雑って、私たちみたいに4人未満のパーティの人たちってこと?」


 ティアナが驚いて周囲を見渡す。

 みんな、もっと大人数でパーティを組んでいるかと思えば、意外と少人数チームが多いようだ。そしてよく見るとみな、目を皿のようにして周囲の冒険者(プレイヤー)を物色しているようにも見える。


 人数制限があるために臨時のパーティを組む必要があるが、ランスロットが懸念したようにボス戦があるかもしれないこの先に対して、組む相手を吟味しているのだろう。


「困ったな……これじゃ先に進めない。かといって臨時のパーティを組むにしても……」


 ランスロットが視線を向けるとみな一様に目を逸らす。

 どうも海割り(・・・)しながらやってきたことが逆効果だったようだ。普通の感覚であれば、あのように注目されながら道中を歩きたくないと思うのは自然なことかもしれない。


「ふん!目立つことを恐れる腰抜けどもめ。君たち……えっと、ランスロット君か。どうかな?あたしが手を貸そうじゃないか?」


 途方に暮れて立ち尽くすランスロットの背後から、ややぞんざいな……しかし救いの声が飛んできた。


「ちょっと待った!彼らには僕が声を掛けようとしたんだ。割り込みはやめてくれないかい?」


 すると人混みの中ほどから、もう一人救いの声が飛んできた。


 ランスロットたちが振り向くと、そこには冒険者(プレイヤー)なら誰もが知っている人物が立っていた。


「雷撃の……賢者さん?」


 ティアナの声がやや震えている。

 無理もない。白系ではあるが、魔法使いを志す彼女にとっては、憧れの存在であり雲の上の人物である。


「アルテミス。と気軽に呼んで欲しい」

「ちょっと待てって!」


 ちょうどそのタイミングで人混みから一人の冒険者(プレイヤー)が姿を現した。声をかけてきたもう一人の冒険者(プレイヤー)だ。

 装備品は真っ黒である。闇に紛れるには都合の良さそうな……そんな出で立ちである。


「雷撃の賢者だかなんだか知らないが、抜け駆けは勘弁してほしいな」

「なにを言いがかりを。あたしの方が先に声はかけたろう?それに4名以上ならいいんだろ?そこのランスロット君が良いというならお前も一緒に行けばいいだろうが」

「ごめん、喧嘩は勘弁してくれないか?」


 なぜかランスロットの関係のないところで一触即発の雰囲気になってしまった二人をなだめる。


「ごめん。ティアナは君のことをよく知ってるみたいだけど、ボクはあんまり知らないんだ。一緒に行って助かるのはお互い様だと思うから、自己紹介してくれると助かるんだけど……黒装束の君もね」


 ランスロットの言葉を聞いて二人はにらみ合いをやめた。


「じゃああたしからな。あたしの名はアルテミス。職業は賢者だ。雷魔法が得意だから二つ名がついたみたいだが、別にあたしはこだわっちゃいない。気軽に名前で呼んでほしい」

「次は僕だ!名前はリンクス……理由(ワケ)あってソロで活動している。職業は暗殺者だ。戦闘には自信がある。きっと役に立てる」


 二人の自己紹介が終わるのを待って、ランスロットはミアとティアナに自己紹介を促した。


「あ……暗殺者!あ、あたしもそれ目指してるんだ。いろいろ教えて欲しい……です!あ、名前はミア」

「白魔法使いをしているティアナです。よろしくお願いします」


 リンクスの職業を聞いたミアが非常に動揺したのに対して、ティアナは憧れの人を前にしても落ち着いた様子だ。

 二人が自己紹介を終えるのを待って、ランスロットは二人の方を向いた。


「ボクが、このパーティの代表をしている戦士のランスロットです。お二人の申し出、ありがたく頂戴します。一緒にこの先に進みましょう!よろしくお願いします」


 深くお辞儀をするとランスロットはにっこりと笑顔を見せた。


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