第187話 新装
「王都!王都!ついたよ~!」
「ミアちゃん、はしゃぎすぎだって。みんなこっち見てるじゃない」
ランスロットパーティ一行が王都に入る。
ワイワイと後衛女性陣二人が相変わらず賑やかなのは、既にこのパーティの代名詞と言って良いほどイメージとして定着しつつある。知らぬは本人達のみ……パーティや個の強さとしてではなく、そのなんとも言えない存在感(女子会的なノリ)で有名になりつつある。
そんな珍道中を率いるのは人っぽさがかなり残る鬼人戦士ランスロット。
さすがに注目度が高すぎると思ったランスロットは、風神は装備せずにアイテムボックスに仕舞っている。今、腰に差しているのは、ミアがどこかのダンジョンで拾ってきた使い古しの長剣である。
「早速!お城に行こう!ストーリー!ストーリー!」
「ダメってミアちゃん。ランスの剣を買わなきゃって話をもう忘れたの?」
「えぇ?剣なんてどうせ……むぐむぐむぐ」
どうせ風神を使うんだから何でもいいじゃない……と言いかけたミアの口は、間一髪ティアナによって塞がれる。危ないところだ。
何のために偽装してるんだか分からなくなってしまう。
「ミア。どっちにしろこの長剣じゃあこの先やってけない。お城も行くけど、ちゃんと使える武器を調達するよ」
ランスロットは、とっさの言葉で一連の流れを取り繕った。
事情を知っている者からすると、違和感を隠しきれないぎこちなさが全開なのだが、そこまでランスロット達のやり取りを注視する者は流石にいない。
相変わらずの賑やかさでワイワイと王都の武器屋に入ったランスロット一行。しばらくして出てきた時にランスロットの腰に、先ほどと異なる一振りの剣が差してあることはもちろんだが、それ以外にもティアナとミアの装備が随分と良い物に変わっていた。
「ねぇ……ボクの剣を買うだけだったはずだよね?なんでティアナの装備一式とかミアの装備一式とか完全に変わってるの?素直に剣だけ買ったボクが、バカみたいじゃない?」
「そんなことないよ!ほら、もともとあたしの装備って随分前の低レベル時の時のものだし、これからストーリーやろうってのに……ねぇ」
「そうです。ランスはともかく、私たちのような女性があんまり貧弱な装備のままでは、お城にそぐわないですし」
そんなことを言いながらクルリと回って見せるティアナとミア。
まずはティアナ。
もともとは革鎧を中心とした冒険者然とした装備に加え、申し訳程度の革のバックラーと魔法石のついた初球の短杖を身に着けていた。
ところが、店から出てきたティアナの姿は前とは比べものにならない変化を見せていた。
金色の装飾が施されている純白のワンピースドレスの上から、さらに純白のローブを羽織っている。両手の装備はなくなっており、代わりに左右の手に一つずつ魔力の籠った指輪がそれぞれ装備されていた。
ランスロットでなくても、変わりすぎだろうとツッコミたくなる変わりようである。
そしてミア。
こちらも元はハードレザーの装備一式に身を固めていたはずなのだが、なにか黒っぽいヒラヒラしたマントを羽織っている。マントから見え隠れする中の装備はそれほど変わってなさそうだが、色は黒系に統一されているようだ。
武器は、短刀を使っていたはずだが……これは黒マントに隠れて良く見えない。が、この様子だと武器も一新してそうだ。
「いくらなんでも変わりすぎだろう?二人とも。いったいいくら使ったんだい?そんなにお金貯め込んでた?」
呆れたように言葉をこぼすランスロット。
「見た目の変化ほど使ってないです。そもそも今までが質素すぎて、ずっとお金使ってなかったし。……だからそこそこ持ってたってのもあるけど、この服は『白魔女セット』って言って、白魔法の効果を高めてくれる装備ですよ。白魔法使いの装備ではわりと一般的です。むしろ高いのは……あ、いえなんでもないです」
なるほど?
見た目の変化は大きいけど、白魔としての装備ランクをレベル相応にしたってことかとランスロットは一応納得。
手ぶらになるため?に身につけた指輪の方がずっと高額のようである。
「あ!ティアナちゃんごまかしてもダメだよ!その指輪、服装備と比べて1桁違うんだからね!ちゃんとランスちゃんに言っとかないと」
「え!金額までバラさなくてもいいのに!いいよ私も言っちゃうから。ランス!ミアちゃんあんなこと言ってるけどね、このミアちゃんの黒いヒラヒラだってすごく高いんだよ?この一着が私の指輪含めたセット一式とほどんどかわらないんだから!」
「……そ、そんなに持ってたのか。二人とも?」
ショックを隠し切れないランスロット。
一緒に行動してきたはずなのに、どうして二人がそこまでお金を貯め込むことが出来ていたのか全く分からない。みんなで溜めていたパーティ資金に手を出さない限り……あ!
そこまで考えを巡らせたランスロットは、急いで共通の財布としたパーティ資金を確認する。
ファクトたちパーティは使っていない(ファクトが知らないだけ)が、イルグラードでは個人でアイテムやお金を確保するための空間のほかに、パーティメンバーが共同で使用できる空間を使用することができる。
そこへランスロットパーティは『パーティの資金』として共同でお金を溜めていたのだったが……。
「あぁ!やっぱり!減ってるじゃないか!ボクの溜めた分だって入ってるんだよ?!」
「パーティの資金は、パーティを強化するために使うんだよ!このあたしの装備や、ティアナの装備増強は無駄じゃない。パーティ全体の強化に役立ってるから使っていいはず!」
恨めしそうなランスロットに高言を垂れるミアだったが……そのミアの頭をティアナがパシンとひっぱたく。
「痛いっ!」
「ミアちゃん!あたしは資金から使ってないよ。一緒にしないで……ね?あと、パーティ資金の使用目的は間違ってないけど、使う前にランスに一言言わなきゃダメよね?そんなに偉そうに言えることじゃないよ」
そう窘めたあと、ティアナはランスロットに向き直る。
「勝手に資金を使ってしまった形になってしまったことは、本当にごめんなさい。これまでずっといままでランスにおんぶにだっこでここまで来たでしょ?風神を手に入れて、ランスはますます強くなった。でもあたしたちはその強さに実際ついていけてない。なんとかしなきゃとずっと思ってたんだ。私も……ミアちゃんもね」
「……」
なんとも言えない表情のランスロット。
「でもね、私はともかくミアちゃんのマントは本当に強いよ。絶対に役に立つから今回は許して!ほら。ミアちゃんも!」
飄々としたミアの首根っこをつかまえると、ティアナは強引に頭を下げさせた。
「……わかった。次からはちゃんと教えてね?ボクだって使いたいことはあるんだから」
「ま、しばらくミアちゃんの分を買うことはないかな。先につかっちゃったし、つぎはランスかあたしね。さ、お城行こう!」
さあこの件は解決!とばかりに、元気よく先頭切って歩き始めるティアナ。
そしてあとに続くミア。
そんな二人の背中を見ながらランスロットは思った。
ティアナは、個人であの額持ってたんだ……凄いな。と。




