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イルグラード(VR)  作者: だる8
第四章 バージョンアップ
179/352

第179話 魔狼と銀狼

「で……結局みんなから逃げ出してきた形になったけど、本当にこの方角でいいの?ミアちゃん」


 モルトの街の中央広場から脱出?したランスロット一行は、そのまま周囲に広がる草原をおよそ南西方面へと進んでいた。もう少し北寄りの西方面であれば、湖畔の街アカシアへ向かっていると言ってもおかしくないのだが……もちろん彼らの目的地はアカシアでは無く、王都である。


「そもそもだよ?誰からどんな情報を貰ってきたかすら、まだボクは聞いてないんだけど」

「そうよね。わたしも聞いてないし」


 先頭を元気よく進むミアについていく形ですすむ3名パーティ。その先頭を行くミアが、二人の言葉を聞いてくるりと振り返った。


「大丈夫だって!あの!雷撃の賢者さんの、知り合いの、知り合いの人とパーティ組んでる人から聞いてきたんだから!雷撃の賢者さんはもうとっくに王都に拠点を持って活動してるらしいよ?」


 自慢気に笑顔でそう話すミアだが、それを聞くランスロットとティアナの表情はどんどん曇っていく。


「それさ……もう充分他人だし、完全に雷撃の賢者の関係者ではなくなってるよね」

「他人ですね」

「大丈夫だってば!そりゃ聞いた相手は他人(そう)かもしれないけどっ!」


 二人の方を向きながらひょこひょこと後ろ歩きを始めるミア。


「ミアちゃん、危ないよ?前見ないと」

「大丈夫っ大丈夫っ!でね、情報なんだけどさ……」


 ミアがそこまで話し掛けたとき、素早く剣を抜いたランスロットはミア……の脇をすり抜けると手にした長剣を横に払った。


『ギャン!』


 ランスロットの一振りは、今まさにミアに襲いかかろうとしていた狼の魔物2体を斬り伏せた。


「全然大丈夫じゃないよ!ミア。本当に危ないから、ちゃんと前みようよ!」

「ご、ごめーん」


 流石に魔物(モンスター)が襲ってきていたことに気づかなかったのはマズかったと探索者(・・・)のミアがしゅんとする。そこを怠ってしまっては、職業の役目を果たせていない。


 ミアを注意しつつも、ランスロットの警戒は解かれない。既にランスロットたちの周りは狼の魔物(モンスター)で囲まれつつあった。しかもどんどん数が増えていく。


「ランス……多分ですけど、魔狼(まろう)の群れです。一匹一匹はそれほど強くないですが、とにかく数が多くてキリがないかもですね。ただし群れを銀狼(シルバーウルフ)が束ねている可能性があります。もしそうですと銀狼(シルバーウルフ)さえ討てれば、群れは崩壊するはずです」


 ティアナの助言を聞いたランスは振り返らずに頷いた。

 そして、ひっきりなしに襲いかかる魔狼(まろう)を次々と討ち取っていく。だがそれでも魔狼(まろう)の攻撃が止む気配はない。


「ティアナ、ボスのいない魔狼(まろう)はこれほど連続した攻撃を続けてくるかい?もちろんないとは言わないだろうけど……」


 ランスロットは左から来た魔狼(まろう)を盾で打ち落とし、正面と右から同時に襲いかかってきた魔狼(まろう)を一振りで切り捨てた。シールドバッシュで動けなくなった魔狼(まろう)はミアが確実にトドメを刺していっている。ワイワイと五月蠅いながらも、息の合った連携だ。

 《あやかしの森》で初めてファクトと会った頃と比べると随分パーティとして成長している。


「そうですね……。いまのところ魔狼(まろう)しか見当たらないですけど、高確率でボスがいると思います」

「おっけぇ!じゃああたしが最初にそいつを見つける!」


 ミアは二刀流の大型ナイフ……ククリを器用に操り、魔狼(まろう)の群れの中に飛び込んでいった。

 ランスロットはそんなミアの特攻を止めもせず、その場で襲いくる魔狼(まろう)を少しずつ確実に始末していく。油断してさえいなければ、こんな魔狼(まろう)に遅れをとるようなミアではない。口うるさく言いつつも、実力はランスロットも認めている。


 ミアが斥候をしてくれている間、戦線……と言ってもランスロット一人ではあるが、安定させるのが役目だ。少なくとも魔狼(まろう)の攻撃目標がティアナにいってしまうことだけはあってはならない。

 それだけを考えて、ランスロットは戦線を維持していた。


 しばらくすると、ミアがランスロット達のところに戻ってきた。


「いたよ!銀色の大きな狼。ここからちょっと先の小高い丘の上に」

「距離は?」

「ん~走って1~2分かな?ほら、あの辺。ちょっとこんもりした丘があるでしょ?」


 そうしてミアが差した先。

 ここからではまだ銀狼(シルバーウルフ)の姿を確認することは出来ないが、そこへ到達するまでの間に大量の魔狼(まろう)が群れを成して待ち構えていることだけは分かる。

「どうしよっかぁ?ゆっくりと進む?それとも……」

「もちろんっ!」


 ランスロットは右手に持った長剣を振りかざした。よく見ると綺麗な銀装飾が施された美しいサーベル形状の剣である。明らかにその辺の武器屋や鍛冶ギルドなどで手に入れることが出来るような代物には思えない。LV15の戦士であるランスロットが持つにはやや不釣り合いと言っていいほどだ。

 少なくとも、身につけている鎧や盾などと比べると、誰が見ても数ランク上の武器である。


「突破する!頼むぞっ!風神」


 ランスロットの持つサーベルがやや青みを持った光を帯びる。

 その状態でランスロットが剣を振るうと、目の前の魔狼(まろう)はもちろんだが、明らかに剣のリーチが届いていない魔狼(まろう)まで血しぶきを上げて倒れていく。まるでランスロットの持つ長剣(サーベル)の切っ先から、見えない刃がさらに伸びている。そんな印象を受ける一振りだ。


「さっすが!レア中のレア装備!あたしが見つけただけある!」

「いいからっ!ランスについていこう!ぼうっとしてるとミアちゃん置いてくよ?」

「あ!ひどいティアナちゃん……」


 蒼く光る魔剣で無双しながら銀狼(シルバーウルフ)のいる丘へと突き進むランスロット。そしてあとを賑やかについていくティアナとミアの二人。

 そのたった3名の進軍は魔狼(まろう)の大群の中を、海を割る伝説のモーゼがごとく切り開きながら突き進んでいく。


 ランスロットが持っていた長剣(サーベル)は、実装された数少ないレア装備の一つである。


 銘は……魔剣『風神』

 武器の特殊効果は、自分の魔力を消費して風属性の魔力を自在に操ること。


 ランスロットはそれを遠方まで届く刃として纏わせることで、必殺の武器として使用していたのだった。


 なおこの武器は、少し前に《ラミーラ坑道》の宝箱からミアが入手した正真正銘のお宝である。引き当てた時のミアのドヤ顔は『生涯忘れられない』とランスロットに言わしめるほどのインパクトだったという。


「見えたっ!」


 先頭を走るランスロットの声が、後ろを走るティアナとミアにも聞こえてくる。

 ティアナは得意の白魔法でそっとランスロットの体力を回復させた。


 小高い丘の上で向かってくるランスロット達を待ち受ける銀狼(シルバーウルフ)の堂々とした姿は、神々しさすら感じる凜とした立ち姿であった。

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