第178話 王都へ行こう
王国と王都の名前が変更になりました。m(_ _)m
時は、少し前のお話……ちょうどファクトたちが《ラミーラ坑道》へ潜り始めた頃のこと。
鬼人の戦士ランスロットは、仲間の小人属の白魔法使いティアナ、そしてドワーフの探索者ミアと共にモルトの街に来ていた。
三人ともLV15前後。
《ノスド採石場》でファクトたちと別れてからも、《ノスド採石場》や《あやかしの森》だけではなく、実はラミーラ坑道第一階層も含めた各ダンジョンでとにかくレベル上げを中心に続けてきたためか、かなりの早さでレベルが上がっている。
「ね~え~、そろそろ他も行かない?あたしもうゾンビとか飽きちゃった」
「ミアちゃん、そんなこと言わないの!ランスが困った顔をしてるでしょ?でも……今のわたし達じゃ奥には行けなさそうよね?そもそもどうやって下に降りるのかわからないし。その意味ではわたしも他の敵を見てみたいなぁ」
ミアの能天気な声が、モルトの街の中央広場から聞こえてくる。嗜めているようでいて、結局は話を膨らませているティアナも相変わらずだ。
「う~ん。いつもなら制止するところだけど、正直ボクもゾンビは飽きました。あんまりアンデッド得意じゃないですし」
心なしかランスロットの顔は青ざめている。
きっと、もともとお化け屋敷などホラー系が好きじゃないんだろうと、誰でも分かる反応だ。
「じゃあもう決定じゃん!新天地行こうよ!新天地!」
「ミア?新天地?」
両手でグッと小さいガッツポーズをしながらアピールを繰り返すミアに、ランスロットはどこのことを言ってるのかわからないと首を傾げる。
「決まってるじゃん!まだ行ってないとこだよ!」
「あの~ランス?ミアちゃんが言ってるのは『王都に行こう!』ってことだと思うよ?」
「王都!そうか、なるほど確かにボクたちにとっては新天地ですね!」
イルグラードには一つの王国が存在している。王国の名は……『ベル=リアーナ』
城壁の街モルト
湖畔の街アカシア
山間の階層都市ルーテリア
冒険者が始まりの都市としてプレイを開始する三つの街は、いずれも巨大湖『セプテル』の東に位置する『ベル=リアーナ王国』所属の都市だ。
ミアやティアナの言う『王都』とは、『ベル=リアーナ王国』の首都でもある王都『ベル=フレッタ』のことである。
そして王都『ベル=フレッタ』は、始まりの都市が存在する北部ではなく南部に存在する。
「でもミア?ボク達は王都の場所を知らないよ?南の方にあるってことだけは支援AIから聞いて知ってるけど、地図とか手に入れているわけじゃないし。どうやって行くつもりなの?場所は分かってるの?」
ランスロットは当然の疑問をミアに尋ねる。
実は初期の街のAIが、王都の情報をリークすることは仕様上禁止されていおり、冒険者たちはいわゆるNPCから都についての情報を入手することは出来ないようになっていた。
「え~?そんなのなんとなく南に行けば見えてくるんじゃないの?ド○ク○2のムー○ペ○の街だってム○ンブ○グの城だって、なんとなく南に行ったら見つかったじゃん!あんな感じなんじゃない?」
「いや……それはさすがに短絡的過ぎなんじゃ」
ミアのあまりの無計画な物言いにランスロットは渋い顔をする。いくら情報が無いからといって『南方へ行くぞ!おー!』では済まないだろう。
ちなみにランスロットが事前に仕入れている情報では、南に行けば行くほど出現する魔物も強くなるらしい。であるならば、せめて行く先くらいはしっかり分かっておきたいと考える。強い敵とギリギリで戦いながら、道にも迷って……など、全滅のリスクがかなり高い。
それだけは避けたいという想いがランスロットにはある。
「もぅ!ランスちゃんはいつもいつも安全策しか考えないんだから!ゲームなんだからガンガンいこーよ!」
今度はシャドーボクシングでもするように、シュシュと口で言いながら小さく拳を突き出すミア。
「……ミアちゃんは無謀すぎだけどね~。でも、ランス?少しくらいは冒険してみようよ?」
「そう?でも一番大変な回復役のティアナがそう言うなら、行ってもいいかな。ただし、闇雲に南下するわけにはいかないでしょ。何か考えは……ミアにはなさそうだけど、ティアナ何かあるかい?」
ランスロットはミアを一瞥だけしてティアナに声をかける。
「むむ!ランスちゃんそれは酷くない?あたしがまるで考えなしみたいじゃない?!」
抗議の声を上げたミアに、ランスロットとティアナ二人の視線が集まった。そして無言で頷く二人。
「ひど~い!さっきのは冗談で、本当はちゃんとプラン考えてあるんだよ?聞きもしないで酷くない?」
「普段の行いと言動がねぇ……」
「ランスのいうとおりね。いつもが大雑把過ぎるからよ」
「むぅ!」
二人の集中攻撃を受けてミアはちょっとむくれ気味だ。
「ホントなんだよ!ちゃんとギルドで先行冒険者から情報仕入れてきたもん!」
「……本当?珍しいこともアタッ」
「イテッ!」
ランスロットのスネにミアのトゥキックが決まる。だが、直後にティアナのチョップがミアの額に炸裂した。
この三人にとってはいつもの光景である。三人漫才をやっている場所が人通りがそれなりにある中央広場なので、目立っているというだけだ。
「ミアちゃん。ちゃんと聞いてきたの偉い!わたしが聞くから教えて?」
「ティアナちゃん……嬉しいけど、チョップは痛いよぉ」
「で、どんなプランなのか教えてくれるかな?」
ティアナの質問にミアの目がキラリと光った……ような気がした。
「ティアナちゃん!よくぞ聞いてくれましたっ!実はですね!」
「「「うんうん」」」
気づけば、三人の周りには冒険者が集まってきていた。
最初は能天気なやり取りを珍しがって見ていただけだったのだが、『王都』についての情報が聞けそうだとあって、集まっていた冒険者が隠しもせずに立ち聞きしていたのだった。
「ダメ!ミアちゃん。折角もらってきた情報をこんな人の沢山集まってるところでバラしちゃ!いくよ?ほら、ランスも」
「あ、あぁ!そうですね、逃げましょう!」
ランスロットたち三人は、パタパタとその場を逃げだした。
本気で三人から王都の情報が得られるかもと信じていた冒険者はいなかったようで、追いかけてくる人影はなかった。




