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龍女皇陛下のお婿様  作者: 俄雨
ビグ村編
53/344

明日を目指す旅路7

お付き合い有難うございました。

ブックマーク、評価などしていただけると幸いです。



 身支度を整え終わり、大きめの鞄を背負い込む。二人と一柱で仮シュラインに頭を下げて背を向けた。オンボロ納屋とはいえ、この村での生活中心であった場所だ、敬意は払わねばならない。


「扶桑だと、建物を建てる場合土地のお祓いをするのですが、そういった細かい儀式についても、取り纏めませんとね」

「大樹教でも南方なら似たような事をしていたと思いますから、あとで調べてみましょ。治癒神友の会の体系化も随分と進みましたし、また改めて纏め直した方が良さそうです」

「その点については僕も貴女には及びませんから、お任せします」

「あー! 頼られてる! 生きてる実感があります! もっと頼ってください!」


 これから村を出て、サウザを経由し、大陸南方へと向かう。

 サウザを流れる運河が注ぐ大きな河に沿って下って行くつもりであった。その道中は川船、徒歩、相乗りの馬車などになるだろう。

 幼い神と若い娘を引き連れての旅であるから、道中も気は抜けないが、少なくとも、アインウェイクなどというバケモノに目を付けられるよりは安全だ。


「端を歩きましょう。皆に見つかると、もみくちゃにされますし」


 商店通りは避ける。曲りなりにも村の英雄であるから、ヨージ達の出立を惜しむ声も多い。旅費の足しに、道中の腹ごしらえにと、もう散々貰った後だ。施しは受けるが、分相応は弁える。


「イナンナーってどんな国です?」

「赴く場所は本国からだいぶ離れた自治区ですから、地母神教の影響はそこまでではありません。ただ本国となると、あそこは、超母権社会でして」

「女性が強いんですか?」

「はい。働くのも、狩りに出るのも、全部女で、獣人族の多い国ですね。父権社会である扶桑からすると、首を傾げすぎて頭が取れてしまうのではないかと思うような場所ですね。複数の部族が寄り合って出来た王国で、十年に一度王が各部族の首長から選出されます。当然女王です」

「扶桑も女皇を戴いていますよね」

「あのヒトは、女性というものに矜持を持っている。女性は女性らしくしろ、という言論の権化のような存在でして……まあその話は道中にでも」


 一国の版図が大きな広がりを見せる時代ではあるが、それでも各国の特色は強い。各人種入り乱れてはいるものの、歴史の長い国は歴史が築いた文化文明を基礎に組み立てられている。帝国は不明だが、扶桑などはあのヒトが生きている限り、きっとずっと同じ色なのだろう。


「ん。よーちゃん、あれ」

「む……」


 ビグ村の出口に小さな少女の姿が見受けられた。彼女は大きく手を振っている。

 グリジアヌだ。あの晩の事を思い出すと、多少気恥ずかしい。


「いよー。出るのかい?」

「はい。お世話になりました。グリジアヌもどうかお元気で」

「は?」

「は?」

「いや、ついて行くけど」

「ええ……」

「なんだその顔! なあ、リーア、アタシもついて行って良いだろ?」

「……」


 珍しく、本当に珍しく、リーアが熟考している。また、鼻を鳴らして臭いを嗅いでいるのは何故か。犬でもあるまいに。


「よーちゃん」

「は、はい。我が神」

「あの晩、グリちゃんと何か……した?」

「し、していません。していません。我が神に誓います」

「えー? ほんとー? よーちゃんほんとー?」

「リーア。あの晩ときたら、コイツ……」

「ぐ、グリジアヌ……」

「あはっ」

「んー、ま、いいかあ。グリちゃん」

「なんだ?」

「よーちゃんを食べる時は、ちゃんと人数分に、分けないと」

「集団生活の秘訣だな」

「僕はお祝いのケーキではありませんが」

「んんん? 何の話してます? 皆さん? ヨージさんを? 捕食?」

「子供が気にする事ではありません、さ、行きましょう。だらだらしていたらいつまで経っても目的地に到達しませんからね。ほら、キリキリ歩いて。ね、我が神。ガンガンいきましょう、ガンガン」

「んー」


 リーアはふわりと浮き上がると、そのままヨージの肩に乗る。手綱でも引くようにして髪の毛を引っ張るのは止めて欲しかったが、これはリーアなりの抗議なのかもしれない。


「いた、痛い、我が神、痛い」

「むー」

「ま、宜しくな、ヨージ。寂しくなったら、言えよ?」

「あー、もー、だからー……いた、痛い、我が神、ハゲちゃうから!」

「え、なんか楽しそうです! ヨージさん、エオも、エオもッ」

「ぐえぇ」


 うら若い乙女に縋られているのだから、もしかすれば喜ばねばならない状況であるのかもしれないが、このまま手違いで針の筵になっては人生バッドエンドまっしぐらのような気がする。

 若い彼女達が幸福な生を歩める為の旅は、始まったばかりだ。


「いでで……ほら、行きますよ」

「んー」

「はーい!」

「旅だ旅、良いんだよなあ、旅はさぁ」


 何としても、自分に刻限が訪れるまでには――


「ミュアちゃんと、ライセン、手振ってる」

「……振り返してあげてください」


 彼女達の未来に続く幸福と、そして、自分の新しい生の意味を、見出したい。



 ビグ村編 了


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― 新着の感想 ―
めちゃくちゃ面白いです。このまま一気読みさせていただきます!!!!!
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