ギルドの測定器、死す
今回はついに人里、冒険者ギルドへ向かいます。
テオ君、自分の「普通」が、世間の「天変地異」だと知る日は来るのでしょうか。
森を出た僕とフィオナ様は、数か月ぶりに人の住む街へとやってきた。
活気あふれる『自由都市リリウム』。
まずは生活費を稼ぐために、僕は冒険者資格の再登録をすることにした。
「テオ様。いいですか。ここでは『加減』を忘れないでくださいね。特に魔法は指先一つ分......いえ、毛穴一つ分くらいの出力で十分ですから」
「分かってますよフィオナ様。僕、器用貧乏ですから加減は得意なんです」
不安そうなフィオナ様を連れて、ギルドの重い扉を潜る。
受付に行くと、そこには驚いた顔の職員がいた。
「あら、君......確かSランクパーティー『暁の剣』の荷物持ち(バッグ)だったテオ君じゃない。クビになったって聞いたけど」
「はい。なので、一から登録し直そうと思って」
職員さんは気の毒そうな顔をしながら、奥から一台の魔導機械を持ってきた。
魔力を流し込むことで、その人の攻撃能力を測る『攻撃力測定器』だ。
金属製の太い柱のような形をしていて、かなりの頑丈さを誇るらしい。
「いい?ここに魔法を当てて。その威力で君のランクを決めるから」
「分かりました。......えい」
僕は指先を軽く向け、最も威力が低いとされる初級魔法を放った。
「【水魔法:水鉄砲】」
ピチャッ。
そんな可愛らしい音が響いた。
指先から出たのは、一見するとただの水滴だ。
職員さんも「あちゃー、やっぱり荷物持ちさんね」と苦笑いしていた......その時。
――ズドォォォォォォォン!!
落雷のような爆音がギルド内に響き渡った。
水滴が触れた瞬間、測定器の金属柱が飴細工のようにぐにゃりと歪み、そのまま壁を三枚ぶち抜いて地平線の彼方へと吹き飛んでいったのだ。
「あ」
僕は思わず声を漏らした。
壁にぽっかりと開いた大穴からは、遠くの山まで一直線に「水の道」ができている。
「......測定器が、ない」
職員さんが、手に持っていた書類をパラパラと落とした。
周囲の冒険者たちも、酒のジョッキを握ったまま石のように固まっている。
「......テオ様」
「フィオナ様......今の、指先一つ分でしたよね?」
「毛穴一つ分と言ったはずです!!」
フィオナ様が頭を抱えて叫ぶ。
おかしいな。今のはただの「水鉄砲」だ。
たぶん、測定器が古くて壊れやすかったんだろう。
「すみません、壊しちゃいました。修理代、出しますね」
「......しゅ、修理とかそういう問題じゃなくて......今のは第十階梯の極大魔法以上の威力で......というか、水の質量が銀河系クラスで......」
職員さんはブツブツと何事かを呟きながら、そのまま白目を剥いてガクッと机に沈んだ。
その頃。
王都の近くで依頼を受けていたガイルたちは、山の上から「謎の水の奔流」が通り過ぎるのを目撃していた。
「な、なんだあの魔法は!?地形が変わってやがる......!あんな魔法を撃てる奴が近くにいるのか!?」
ガイルが震えている頃、僕は「また器用貧乏っぷりを発揮して、加減を間違えちゃったな」と一人で反省していた。
ギルドの名物、測定器さんがお亡くなりになりました。
テオ君の「水鉄砲」は、もはや質量爆弾の域に達しています。
次回、ギルドマスターが登場。
「君、うちのギルドを壊す気か!?」と怒られるかと思いきや......?




