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僕の「ゴミ捨て」は世界の危機らしい

聖女様を居候に迎えたテオ君、今日はお掃除の日です。

でも。彼の「ゴミ捨て」は、この世界の経済を終わらせる威力がありました。

フィオナ様が居候になってから数日。

拠点にしている『影の別荘』に少しゴミが溜まってきたので、僕は掃除をすることにした。


「さて、ゴミを捨てなきゃ」


僕は庭の片隅で、そっと右手をかざした。


「【闇魔法:影のゴミ(シャドウ・ダストボックス)】」


地面の影が丸く広がり、庭の見えない真っ暗な「穴」が現れる。

僕はそこに、昨日食べた魔獣の骨や、使い古したボロ雑巾をポイポイと投げ入れた。

穴に触れた瞬間に、それらは音もなく消滅していく。


「ふぅ、すっきりした。闇魔法って、消去機能がついてるから便利だよね」


僕が満足げに頷いていると、背後から「ヒッ......」という短い悲鳴が聞こえた。

振り返ると、フィオナ様が真っ青な顔で僕の『ゴミ箱』を指差している。


「......テオ様。今、何を捨てました?」

「え?ただの生ゴミですよ」


「違います!今、あなたが捨てたのは......この世で最も硬いと言われる『ジェノサイド・ベア』の呪われた骨と、私の服を修復したときに出た『聖なる糸の屑』ですよね!?」


「そうですよ。もういらないかなって」


フィオナ様はフラフラとゴミ箱の縁まで歩み寄り、その中を覗き込もうとして......慌てて顔を背けた。


「これ、ゴミ箱じゃありません!”【虚無の深淵(アビス)】”です!触れたものすべてを分子レベルで分解して消し去る究極の消滅魔法......。本来なら国を挙げて封印するレベルの禁忌術ですよ!」


「えぇ......。でも、これがないと部屋が散らかるし」


「部屋が散らかるという理由で、世界の(ことわり)を消さないでください!!」


フィオナ様が必死に叫ぶ。

でも、おかしいな。これくらい、器用貧乏な僕が片手間で思いつく程度の小技なんだけど。


「......ん?テオ様。そのゴミ箱の底に、何か光るものが溜まってますけど」


フィオナ様が恐る恐る指摘する。

見ると、ゴミ箱の底には黒い闇に混じって、キラキラと輝く紫色の結晶がいくつか転がっていた。


「ああ、これ?魔法の残りカスです。邪魔だから、後で適当に森へ捨てておきますね」


「待って!!捨てちゃダメ!!」


フィオナ様が、僕の腕をガシッと掴んだ。

その目は、獲物を見つけた猛獣のようにギラついている。


「これ......不純物を究極まで取り除いたことで生成された、純度百パーセントの”【魔導結晶】”ですよ!一個あれば、王国の国家予算が一年まかなえるほどの超一級品です!」


「......えっ、これが?」


「これをゴミと一緒に捨てるなんて、歴史に対する冒涜です!私が預かります!いえ、買い取らせてください!お願いします!」


フィオナ様が、地面に頭を擦り付けんばかりの勢いで懇願してくる。

ゴミを拾って喜ぶなんて、聖女様も意外と庶民的なんだな。


「いいですよ、タダで。ゴミを掃除してくれたお礼です」


「神様......ここに本物の神様がいた......」


フィオナ様は震える手で、僕が「カス」と呼んだ宝石を宝石箱に収めていた。


その頃。

僕を追い出したガイルたちは、ゴミの処理すらできずにキャンプ地を異臭まみれにしていた。

「クソッ、なんでこんなにハエが寄ってくるんだ!テオがいた時は、いつも一瞬で綺麗になっていたのに......!」

彼らはまだ、自分たちの足元に転がっていたゴミの中に、どれほどの宝が混ざっていたのかも気づいていなかった。

ゴミから出るお宝。

テオ君にとっては「掃除の残りカス」ですが、世界にとっては「伝説の秘宝」です。


次回、いよいよ二人は人里へ。

テオ君、ギルドで「普通の依頼」を受けようとして、街をひっくり返します。

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