世界中から届く「ゴミ」……いえ、感謝状の山
別荘に戻って数日。ようやく生活が落ち着いてきたけれど、玄関先には毎日、信じられない量の「荷物」が山積みになっていた。
「テオ様、また届きましたわ。……これは隣の王国の国王から『魔王再封印の礼』として贈られた、伝説のオリハルコン製の鍋ですね」
「こっちには帝国の父から『宇宙掃除の謝礼』として、純金でできた洗濯板が届いているわ。……テオ殿、これどうするのよ」
フィオナ様とカトレア様が、金銀財宝に埋もれながら呆れ顔で僕を見る。
器用貧乏な僕からすれば、金箔のついた洗濯板なんて、滑りが悪くて使いにくいだけだ。
「うーん、邪魔ですね。ちょうど焚き火の火が弱くなってきたし、感謝状の束は『着火剤』にしましょうか」
「「世界に数枚しかない公文書を着火剤にしないで!」」
二人の悲鳴が響く中、僕は闇魔法で「シュレッダー」の影を作り、山のような羊皮紙を細かく刻んでいった。
すると、その刻み屑が庭に舞い落ちた瞬間、紙に含まれていた「感謝の念」と僕の魔力が反応して、色鮮やかな光の花びらへと変わった。
「あ、綺麗ですね。これなら庭の彩になって、掃除の手間も省けます」
「……テオ様。あなた、各国の歴史を物理的に『肥料』に変えてしまいましたわね」
フィオナ様が、もはや拝むような仕草で僕を見つめる。
カトレア様も、帝国最高の工芸品である「黄金のバケツ」を僕が「アポロの水飲み皿」に流用したのを見て、乾いた笑いを漏らしていた。
「キュイッ!」(この皿、冷たくて美味しい!)
アポロが黄金の皿から水を飲み、満足げに喉を鳴らす。
その背中を、僕は闇魔法でコーティングした「魔法のブラシ」でブラッシングしてあげた。
「よし。アポロもピカピカだ。……フィオナ様、カトレア様。お昼は庭で、帝国の余った食材を使って『おにぎり』でも食べませんか?」
「「……いただきますわ!」」
二人は競い合うように僕の隣に座り、僕が握った「ただのおにぎり」を、世界で一番の御馳走を食べるような顔で頬張り始めた。
世界を救い、宇宙を掃除した男の昼食は、相変わらず穏やかで、少しだけ賑やかだった。
その頃。
王都の路地裏で「テオが捨てた手紙の破片」を拾い集めていた学者たちは、その一片から溢れ出す魔力に腰を抜かしていた。
「……これは、失われた古代語!?しかも、裏には『お掃除チャックリスト』と書いてある……!これこそが、世界の真理が記された聖典だ!!」
彼らがゴミ山を宝の山として崇めている間、テオの別荘では、そんな「聖典」が今日も鼻をかむ紙として消費されていた。
ついにここまで来ました。第39話、大団円目前です!
伝説の武器がキッチン用品になり、宇宙の汚れがタワシで落ち、挙句の果てには各国の感謝状が庭の肥料になる……。
テオ君の「器用貧乏」が、もはや「神の御業」を超越して「日常」に溶け込んでいく様子を書いていて、私自身もとても楽しかったです。
次回、いよいよ最終回(第40話)。
数年後、世界はどう変わったのか。そして、テオ君と二人のヒロイン、アポロの結末は?
「最高のハッピーエンドを!」
「最後までテオ君らしくお掃除してほしい!」
そんな想いを込めて、最後の一話を書き上げたいと思います。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
それでは、感動(?)のフィナーレでお会いしましょう!




