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世界の「目詰まり」。僕の指先ひとつで惑星(ほし)の洗濯

帝国の巨象をスプリンクラーに改造して数日が経った頃、空の様子が明らかにおかしくなった。

雲がどす黒く渦巻き、大気からは瑞々しさが失われ、世界中から「生命の輝き」が吸い取られているような、嫌な予感が漂ってきたんだ。


「テオ様……。これは、数千年に一度現れると言われる”【虚無の浸食(ヴォイド・イーター)】”ですわ。世界の理が汚れにまみれ、自浄作用を失った果ての終末……!」


フィオナ様が聖杖を握り締め、震えながら空を見上げる。

カトレア様も、帝国中の魔導師たちが絶望して倒れたという報告を受けて、顔を青くしていた。


「テオ殿。もう、私たちの手に負える規模じゃないわ。世界そのものが『腐敗』し始めているのよ……!」


「うーん……。腐敗っていうか、これ、ただの『換気不足』じゃないですか?世界の魔力回路が、長年の排気ガスや邪念で目詰まりしているだけですよ」


僕が空を指差すと、そこにはどろりとした黒い霧が、天の川を覆い隠すようにへばりついていた。

器用貧乏なりに、世界全体の「大掃除」を計画することにする。


「よし。バッグにある予備の『お掃除ブラシ』を、闇魔法でちょっと大きくしてみようかな」


「え?大きくするって、どのくらい……?」


僕は自分の『お掃除便利バッグ』から、使い古したタワシを取り出した。

闇魔法で「空間の重なり」を広げ、水魔法で「銀河の激流」をコーティングして、空の彼方へと放り出す。


「【闇魔法:影の銀河大掃除(シャドウ・ギャラクシー・クリーニング)】」


その瞬間、夜空の半分を覆い尽くすほどの巨大な「影のブラシ」が出現した。

ブラシはゴシゴシと音を立てて、宇宙の境界線にこびりついた黒い霧を、まるで換気扇の油汚れを落とすように削ぎ落していく。


「な、何をしているの!?宇宙の深淵を掃除しているというの!?物理法則が悲鳴を上げているわよ!」


「あ、そこ。角の汚れが落ちにくいですね。ちょっと強めにこすりますね」


僕が指先をひねると、巨大なブラシがキュッキュッと音を立てて加速した。

すると、真っ黒だった空がパァァァッと晴れ渡り、見たこともないような鮮やかな星々が、宝石を散りばめたように輝き始めた。


「……信じられません。世界の『寿命』そのものが、お掃除ひとつで数万年も延長されましたわ……」


フィオナ様が膝を突き、祈りを捧げる。

カトレア様も、空から降ってくる「浄化された純粋な魔力の雪」を浴びて、言葉を失っていた。


「キュイィィ!」(空がピカピカ!)


アポロも、綺麗になった宇宙の風に乗って、かつてないほど高く舞い上がっている。


その頃。

世界滅亡を確信して、最後の一杯の酒を煽っていたガイルたちは、空から降ってきた「魔力の雪」を浴びて、持っていた安酒が最高級の美酒に変わったことに驚愕していた。

「な、なんだ……!?空が……世界が、新築の家みたいな匂いがするぞ……。テオ……あいつ、ついに『神の部屋』まで掃除しちまったのかよ……!」


彼らが宇宙規模の清潔さに畏怖の念を抱いている間、テオは「ふぅ。これでしばらくは換気しなくても大丈夫ですね」と満足げにタワシをバッグに仕舞っていた。

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