帝国の終末兵器。僕の「錆落とし」で園芸用品に
祝祭の翌日、皇帝陛下から「どうしても相談したいことがある」と帝国の最深部にある『黒鉄の禁域』へ案内された。そこには、数千年前の神話の時代から眠り続けているという、巨大な鋼鉄の巨人が鎮座していた。
「テオ殿。これは我が帝国の最終防衛兵器、”【獄炎の巨象】”だ。しかし、長い年月で関節が固まり、魔力回路も煤けて、今や動かすこともままならん……」
見上げれば、ビルのような巨大な巨象。でも、表面は赤錆だらけで、魔力の通り道であるラインには、カチカチに固まった古い油が詰まっている。
「……うわぁ。これ放っておくと爆発しますよ。器用貧乏なりに、ちょっと『オーバーホール』させてもらいますね」
「えっ?オーバーホールだと?帝国最高の技師たちが百年かけても分解できなかったのだぞ!」
カトレア様が止める間もなく、僕は自分の『お掃除便利バッグ』から、闇魔法で精製した「超浸透性クリーナー」を取り出した。
水魔法で「高圧の魔力洗浄液」を作り、巨象の隙間に一気に流し込む。
「【闇魔法:影の細部洗浄】」
シュゴォォォォォォッ!!
巨象の全身から、ドロドロとした黒い煤と錆が滝のように流れ落ちる。
僕はさらに、聖剣(包丁)の先で、詰まっていた魔力回路を器用に「ツンツン」と突いて、通りを良くしてあげた。
「よし。これで関節もスムーズに動くはずです。……あ、武器の砲身は危ないから、庭に水を撒く『スプリンクラー』に改造しておきました」
「……な、何を言っているの!?その砲身は、一撃で国を消し去る熱線を発射する……」
カトレア様が言いかけたその時。
巨象がガシャンッ!と軽快な音を立てて立ち上がった。
そして、空に向かって砲身を向けると――。
シュパァァァァァァァッ!!
放たれたのは破壊の熱線ではなく、太陽の光を浴びてキラキラと輝く「聖水のシャワー」だった。
巨象はそのまま、帝国の乾いた大地に優しく水を撒き、花壇の世話を始めたんだ。
「……テオ様。あなた、世界最凶の兵器を、全自動の『巨大庭師』に変えてしまいましたわね」
「ええ。掃除が終わったら、庭仕事をするのが一番健康的ですから、フィオナ様」
皇帝陛下は、平和に水を撒く巨象を見て、「……これで、我が国から戦争の火種が消えた……」と、清々しい顔で膝を突いた。
「キュイッ!」(シャワー気持ちいい!)
アポロも、巨象が撒き散らす聖水のシャワーを浴びて、空中をクルクルと飛び回っている。
その頃。
城壁の外で、一発逆転を狙って「帝国の機密」を盗もうとしていたガイルたちは、巨象から降り注いだ聖水を浴びて絶叫していた。
「な、なんだ!?毒か……!?いや、体が……心が洗われるようだ……。俺、なんでこんな悪いことしようとしていたんだ……?」
彼らが聖水に打たれて「改心」という名の無気力状態に陥っている間、テオのメンテナンスを受けた巨象は、今日も帝国の平和な庭園を守り続けていた。




