帝国の宝物庫。僕の「虫干し」で古代兵器が文房具に
ぐっすり眠って迎えた翌朝。バルフレア帝国の皇帝陛下から「建国記念祭の前に、ぜひ我が国の宝物庫を見てほしい」と招待を受けた。カトレア様は「テオ殿を驚かせてやるわ!」と意気込んでいたけれど、僕は扉を開けた瞬間に顔をしかめてしまった。
「……うわぁ、カビ臭いですね。せっかくの宝物が台無しですよ、これ」
「えっ?ここは帝国最高の防壁と乾燥魔法で守られているはずだけど……」
「いえ、器用貧乏なりに言わせてもらうと、空気の入れ替えが全然できていません。ちょっと『虫干し』させてもらいますね」
僕は自分の『お掃除便利バッグ』から、闇魔法で編み上げた特製の「影の洗濯バサミ」を取り出した。
水魔法で「湿気」を抜き、闇魔法で「時間の経過による劣化」を影の底に沈めながら、展示されている剣や鎧を次々と空中に浮かべていく。
「【闇魔法:影の天日干し(シャドウ・サン・ドライ)】」
宝物庫の天井がパカッと開き(僕が少しだけ空間を削った)、神聖な太陽の光が差し込む。
すると、真っ黒に煤けていた「終末の魔杖」が、僕の魔法で浄化され、ピカピカの「指示棒」のように輝き始めた。
「な、何をしているの!?それは一振りで城を落とすという破壊の杖よ!太陽の光に当てたら暴走するはずなのに……!」
「え?埃を払って除菌しただけですよ。ほら、先端に小さなライトも付けておきました。暗い場所でも本が読めますよ」
僕が杖の先端をカチッと鳴らすと、世界を滅ぼす魔力が、読書に最適な「優しい電球色」に変換された。
カトレア様が絶句する横で、僕はさらに「龍殺しの神剣」を手に取り、闇魔法で表面のササクレを削り取った。
「あ、これ。ペーパーナイフにちょうどいいですね。カトレア様、手紙を開けるときに使ってください」
「……神剣で、手紙を?龍の鱗を紙のように切り裂くから、確かに手紙も開けられるでしょうけど……!」
カトレア様は、自軍の軍事バランスを支える最終兵器たちが、次々と「便利な文房具」や「家庭用品」にリサイクルされていく光景を見て、膝から崩れ落ちた。
「テオ様。あなた、皇帝陛下に怒られますわよ……。……あら、陛下、なぜ泣いているのですか?」
入り口で見ていた皇帝陛下が、ピカピカになった宝物を見て、涙を流しながら拍手を送っていた。
「……素晴らしい。数百年の汚れが落ち、宝物たちが喜んでいる……。テオ殿、君は掃除の神か何かなのか……!」
「ええ……。ただの虫干しですよ?大切なものは綺麗にしておかないと」
アポロが「キュイッ!」と、綺麗になった魔導鎧の上で昼寝を始めた。
その頃。
宝物庫の外で装備のアルバイトをしていたガイルたちは、窓から溢れ出す「浄化の光」を浴びて、自分の装備がさらにボロく見える現実に打ちひしがれていた。
「な、なんだあの輝きは……。中にあるのは伝説の武器だろ?なんであいつが触ると、あんなにキラキラして見えるんだよ……!」
彼らが惨めな思いで槍を握り直している間、テオは帝国の至宝を「使いやすい道具」にカスタマイズし終えていた。




