聖女様、テオの影に住み着く
影山ネルです。
聖女様、無事に(?)起きます。
「闇魔法は「お化け」が出てきて怖いイメージですが、テオ君にかかれば最高のマイホームになるようです。
「......はっ!私、何を......」
白目を剥いて倒れていた聖女さんが、ガバッと起き上がった。
背中には、さっきの「洗顔水」の影響で生えた光の翼がまだキラキラと輝いている。
「あ、起きましたか。喉、まだ渇いています?」
「ひいぃっ!もう結構です!これ以上飲んだら、私人間やめて女神に昇天してしまいます!」
聖女さんは這いずるようにして僕から距離を取った。失礼だなあ。
「それにしても、このあたり......。なんだか、空気が変わりすぎていませんか?」
彼女が周りを見渡して絶句する。
さっき僕が水を撒いた場所は、一晩で数百年育てたような巨木が並び、足元には魔力を回復させる『エーテル草』が雑草のように生い茂っていた。
「ここ......さっきまで、魔物が溢れる『絶望の深淵』だったはずですよね?なんで『神の庭』になっているんですか......」
「さあ?たぶん、朝の空気が良かったからじゃないですか?」
僕は適当に受け流すと、茂みの奥を指差した。
「それより聖女さん。今夜の宿どうします?この森、夜になると結構冷えるみたいですよ」
「宿......?そんなものあるわけないでしょう。私は調査に来ただけですし、キャンプ道具だって......」
「じゃあ、僕が作ったやつで良ければ一緒に使います?」
僕は自分の足元の『影』に手を伸ばした。
パーティーにいた頃は、ガイルたちのテントを運ぶのが僕の仕事だった。
でも、重い荷物を持つのは疲れる。だから僕は器用貧乏なりに工夫をしたんだ。
「【闇魔法:影の別荘】」
僕が影をクイッと持ち上げると、そこから真っ黒なけれど大理石のように滑らかな壁が地面からせり出してきた。
あっという間に、森の中に一軒の「黒い豪邸」が完成する。
「......は?影から......屋敷が、生えた......?」
「どうぞ、入ってください。中は意外と明るいんですよ」
呆然とする聖女さんの背中を押して、中に入る。
外観は真っ黒だけど、内装は闇魔法で光を屈折させているから、昼間みたいに明るい。おまけに、闇の魔力が周囲の熱を吸い取ってくれるから、エアコンいらずで涼しいんだ。
「な、ななな......何ですかこの空間は!高密度の闇魔法で構成されているのに、禍々しさがゼロ......それどころか、あらゆる呪いや外敵を遮断する『絶対守護領域』じゃないですか!」
「えっ、ただの『日除け付きテント』のつもりなんですけど」
「これがテントなわけないでしょう!?これ、古代の魔王が城を建てる時い使ったと言われる失われた秘術ですよ!」
「......あぁ、ダメです......。聖職者として、こんな魔の力に魅了されるなんて......。でも、魔力が信じられないスピードで回復していく......」
「あ、ご飯も作りますね。闇魔法で熟成させたお肉があるんです」
「......もう、驚きません。毒でも何でも大人しくいただきますから......」
聖女さんはもはや抵抗を諦めたようだ。
その頃、僕を追い出したガイルたちは僕の闇魔法による『キャンプ結界』がなくなったせいで、夜通し魔物に襲われ続けボロボロの泥だらけになっていた。
「クソッ、なんでだ!いつもなら影の中にテントを張れば魔物は来なかったはずなのに......!」
なんてガイルが叫んでいる頃、僕は聖女さんと一緒に影の別荘で豪華なディナーを楽しんでいた。
聖女様、完全にテオ君の便利魔法の虜です。
闇魔法=怖い、という常識を「快適さ」でぶち壊していくスタイル。
次回、聖女様が衝撃の告白。
「私、もう国に帰りたくありません!」
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影山ネルでした!




