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世界樹の果実、僕にとっては「お漬物」でした

裏庭に実った虹色のトマトや金色のカブ。それがあまりに大量だったので、僕は「器用貧乏」なりに知恵を絞ることにした。そのまま食べるのもいいけれど、保存食にするのが一番だ。


「フィオナ様、カトレア様。これ、全部は食べきれないので『お漬物』にしちゃいますね」


「お、お漬物……?世界中の教会が聖遺物として祀るレベルの『世界樹の果実』を塩蔵(えんぞう)するのですか!?」


「ええ。闇魔法で熟成を早めて、水魔法で余分な水分を抜けば、最高にご飯に合うはずです」


僕は大きな樽を用意し、そこに金色のカブを並べた。

隠し味として、魔王が寝ていた地下室で見つけた「古代の岩塩(魔力を封じ込める結晶)」をパラパラと振りかける。


「【闇魔法:時空の重石(シャドウ・プレス)】」


樽の中に影の重力をかけ、一瞬で数ヶ月分の熟成を凝縮させる。

数秒後。蓋を開けると、黄金色に輝く、芳醇で少し酸味のある香りが庭いっぱいに広がった。


「よし、いい感じに浸かりました。カトレア様、ご飯炊けました?」


「……ええ。帝国の最高級米(ロイヤル・ライス)を、テオ殿が作った『洗浄済みの水』で炊き上げたわ。……もう、香りが暴力レベルだわ」


縁側に座り、炊き立てのご飯と、黄金の漬物。

一口食べた瞬間、カトレア様とフィオナ様の箸が止まった。


「……っ!なんですかこれ。噛むたびに魔力が爆発して、魂が洗われるような感覚……!」

「美味しい……。帝国の宮廷料理なんて、ただの砂を噛んでいるようだったわ。これ一切れで、大軍勢の傷を癒す『全回復薬(フル・エリクサー)』以上の効能があるわよ……」


二人が無我夢中でご飯をかき込む横で、賢者たちが「その、漬物の汁だけでも譲ってくれまいか……」と目を血走らせていた。


「え、汁ですか?捨てるつもりでしたけど、いいですよ」


「捨てる!?神の雫を捨てるなどと!これ一滴で枯れた大地が森に戻るというのに!!」


賢者たちが小瓶を持って列を作る中、アポロは漬物の端っこをもらって「キュキュイッ!」と上機嫌だ。


その頃。

森の教会で、ガイルたちは偶然流れてきた「漬け汁の香り」だけで、数日間の疲れが吹き飛ぶのを感じていた。

「な、なんだ……この香りを嗅ぐだけで、体の古傷が治っていく……。テオ……。あいつ、今度は何を作ってやがるんだ……」


彼らが鼻をひくつかせ、惨めな空腹感に悶えている間、テオの別荘では「世界一贅沢な朝ごはん」が平和に繰り広げられていた。


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