魔法の肥料?捨てるはずの「茶殻」で森が聖域に
庭掃除を終えた賢者たちが、満足げに(そして息を切らしながら)リビングに戻ってきた。
彼らの手には、僕が貸した「ただの箒」が家宝のように大切に握られている。
「テオ様!見てください、庭の雑草一本残らず浄化いたしましたぞ!」
「ふむ、この箒を使うだけで魔力回路が活性化する……。これはもはや、歩くパワースポットですな!」
……ただの庭掃除なんだけど、皆さんが楽しそうならそれでいい。
僕はちょうど、飲み終えたお茶の「茶殻」を庭に捨てに行こうとしていた。
「あ、すみません。ちょっと失礼しますね」
僕は急須に残った茶殻を、裏庭の家庭菜園の隅にパラパラと撒いた。
器用貧乏なりに、闇魔法で「分解速度」を上げ、水魔法で「栄養素の定着」を促す。
「【闇魔法:影の堆肥】」
その瞬間、茶殻が淡い銀色の光を放ち、土に吸い込まれていった。
すると――。
メキメキメキッ!!
地面を突き破り、見たこともないような巨大な「虹色のトマト」や「金色のカブ」が一瞬で実を結んだ。
それどころか、周囲の枯れかけていた大樹までが急成長し、森全体が神聖なオーラで満たされていく。
「……な、何をしたのだ今!?捨てたのはただの茶殻ではなかったのか!?」
「馬鹿な!絶滅したはずの『世界樹の苗木』が、あんなゴミのような肥料から芽吹いているぞ!!」
賢者たちが泡を吹いて倒れそうになっている。
フィオナ様も、実ったトマトを手に取って絶句していた。
「テオ様……。これ、一口食べるだけで寿命が百年延びそうな魔力が詰まっています。……これを『生ゴミ』として処理しようとしていたのですか?」
「え、だって勿体ないじゃないですか。栄養たっぷりだし」
「栄養の次元が違います!!」
カトレア様も、帝国の食糧問題を一瞬で解決しそうな光景を見て、自分の役職を忘れて呆然としていた。
「これ……帝国が数百年かけて研究している『不老長寿の秘薬』より、よっぽど効きそうね……。テオ殿、あなたという人は……」
アポロが、実ったばかりの虹色トマトを丸かじりして「キュイッ!」と満足げに鳴く。
その頃。
森の境界線で、空腹に耐えかねて野草を食べていたガイルたちは、その草が急に「黄金色」に光りだしたのを見て腰を抜かしていた。
「な、なんだ!?草が……草が美味すぎる!!まるで高級ステーキを食ってるみたいだ……。これ、テオの家の方向から流れてきた魔力のせいか……?」
彼らが道端の草に感動して涙を流している間、テオの裏庭では、世界中の王族が喉から手が出るほど欲しがる「神の果実」が、ただの家庭料理の材料として収穫されていた。
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