復活の魔王、掃除の邪魔なので二度寝させました
別荘の地下室。そこは僕がまだ手を付けてなかった、唯一の「開かずの間」だ。
大掃除の最後として、僕はフィオナ様とカトレア様を連れて、その重厚な扉の前に立った。
「テオ様、ここには古代の邪悪な気配が……。開けるのは危険ですわ!」
「そうよテオ殿!帝国の古文書にも、この地には『絶望を振りまく魔王』が封印されていると……」
「大丈夫ですよ。カビ臭いだけですから。……それっ」
僕が闇魔法で鍵をカチャリと開けると、中から禍々しい紫色の煙が噴き出した。
『クハハハハ……!ついに、ついに我が封印を解く者が現れたか!人間どもよ絶望に震え――』
煙の中から現れたのは、巨大な角を持つ、見るからに強そうな魔人だった。
……けれど、彼の体は数百年の放置のせいで、埃とクモの巣で真っ白になっていた。
「うわぁ……。汚いなぁ。魔王さん、動かないでください。埃が舞っちゃうから」
『……あ?埃だと?貴様、魔王である我に向かって何を―――』
「【水魔法:高圧洗浄】」
シュバァァァァァァッ!!
僕が放った超高圧の聖水(闇魔法でろ過済み)が、魔王の顔面に直撃した。
『ブハッ!?ぐ、目が、目がぁぁぁ!何だこの水は!穢れが……我の魔力が、どんどん洗い流されていくぅぅ!?』
「あ、すみません。ついでに除菌もしておきますね。【闇魔法:影の消臭・殺菌】」
魔王の周囲に立ち込めていた「絶望のオーラ(=ただの悪臭)」が、僕の魔法によって一瞬で消滅した。
ピカピカに磨き上げられた魔王は、もはや威厳など微塵もなく、ただの「綺麗好きな大男」にしか見えなくなっていた。
『な……何をした……。我の数百年の恨みが、さっぱりと消え去って……なんだか、すごく眠い……』
「あ、清潔になるとリラックスしますよね。じゃあ、また数百年くらい寝ててください。布団も干しておきましたから」
僕は魔王を元の魔法陣の上に横たわらせ、影で作った「最高級の羽毛布団」を掛けてあげた。
魔王は「……ふわぁ、いい匂い……」と呟き、幸せそうな寝息を立てて再封印された。
「……テオ様。今、魔王を『丸洗い』して再封印しましたよね?」
「ええ。やっぱり掃除は気持ちいいですね、カトレア様」
ヒロイン二人が呆然とする中、地下室は空気清浄機を置いた後のような、清々しい空間に生まれ変わっていた。
次回もお楽しみに!




