正妻戦争勃発!?料理対決の隠し味
別荘のキッチンが、かつてない熱気に包まれていた。
エプロン姿のフィオナ様と、メイド服のカトレア様が、火花を散らして向かい合っている。
「テオ様の健康を一番に考えているのは、聖女である私です!今日は聖域のハーブをふんだんに使った特製リゾットを作りますわ!」
「甘いわね、聖女様!帝国の力は食にあり!最最高級の飛竜の肉をじっくり煮込んだ、禁断のシチューでテオ殿を虜にしてみせるわ!」
二人の背後に、守護霊のようなオーラが見える。
僕はアポロと一緒にリビングで、お腹を鳴らして待っていた。
「……あ、あの。二人とも、あんまり無理しなくていいよ?僕、残り物でチャーハンでも作ろうかと思ってたし」
「「お座りなさい!!」」
……はい。僕は静かにお座りをした。アポロも隣で「キュイッ」と姿勢を正している。
数十分後。テーブルには二人の力作が並んだ。
まばゆい光を放つリゾットと、宇宙の真理を煮詰めたような漆黒のシチュー。
「さあ、テオ殿!どちらが美味しいか、判定を!」
僕は恐る恐るスプーンを伸ばそうとした……けれど。
その前に、キッチンの端っこで僕が「適当に」作っておいたチャーハンの香りが、二人の鼻をくすぐった。
「……何、この香り。香ばしくて、どこか懐かしくて、魂が震えるような……」
「ま、待ちなさい。そのチャーハン、具材は何を入れたの?」
「え?昨日の残りの冷や飯と、適当に刻んだネギだよ。あ、隠し味に闇魔法で『時間の加速』をかけて、百年分熟成させた自家製醤油をひと垂らししたけど」
僕は器用貧乏なりに、フライパンの上で一瞬だけ「百年間の発酵」を再現してみたんだ。
「ひゃ、百年熟成!?魔法で時間を操って調味料を作るなんて……!」
二人は吸い寄せられるように、僕のチャーハンを一口食べた。
その瞬間、二人の動きがピタリと止まる。
「……負けた。私のリゾット、ただの草に見えてきたわ……」
「帝国秘伝のシチューが、まるでお湯のように薄く感じる……。テオ様、このチャーハン、一口で魔力が全回復しました」
二人は戦意を喪失し、並んでチャーハンを頬張り始めた。
判定を下すまでもなく、テオ君の「残り物料理」が圧倒的な勝利を収めてしまったらしい。
「キュイィィ!」(美味しい!)
アポロも満足げにフライパンを舐めている。
こうして、第1回料理対決は「作った本人が一番驚く」という、いつもの結果に終わった。
その頃。
王都の外で泥水をすすっていたガイルたちは、空から漂ってくる「美味しそうな匂い」に咽び泣いていた。
「なんだ……この幸せな匂いは……。テオが作ったチャーハンが食いてえ……。あいつが作れば、小石だってご馳走になったのに……!」
彼らが空腹で倒れる中、別荘では二人のヒロインが、次の「洗濯対決」の作戦を練り始めていた。
料理対決、テオ君の不戦勝?です。
百年熟成の醤油、現実世界でも欲しいですね。
次回、カトレア皇女が「帝国の秘宝」を別荘に持ち込みます。
「これでテオ殿を釣るわ!」
でもテオ君は、それを「鍋敷き」にしてしまいました。
お楽しみに!




