伝説の卵をゆで卵にしようとしたら
王宮の騒がしさから離れ、僕は久しぶりにフィオナ様と森の「影の別荘」に戻ってきた。
庭の掃除をしていると、茂みの奥でキラキラと虹色に輝く、大きな卵を見つけたんだ。
「お、美味しそうな卵だな。ダチョウより大きいし、これ一つで特大のオムレツが作れそうだ」
「テオ様、待ってください。その卵……殻に神聖文字が刻まれているのですが」
フィオナ様が顔を引きつらせて止めてくる。
でも、お腹も空いているし、僕は器用貧乏なりに「最高においしいゆで卵」を作ろうと決めた。
「【水魔法:高圧沸騰】」
空中に浮かべた水の中に卵を入れ、闇魔法で温度を一定に保つ。
普通の卵なら数分で固まるはずだけど、この卵はなかなか頑丈だ。
「よし、もうちょっと魔力を込めて温めてみよう」
僕は「保温」のつもりで、闇魔法のエネルギーを卵の芯まで流し込んだ。
すると、パキッ……と小気味いい音がして、卵の殻にひびが入る。
「あ、茹で上がる前に割れちゃったかな?」
中から出てきたのは、白身でも黄身でもなかった。
手のひらサイズの、真っ白でふわふわした毛並みを持つ……小さなトカゲのような生き物。
背中には、まるで宝石のような翼が生えている。
「キュイッ!」
その子は僕の指をペロペロと舐めると、心地よさそうに喉を鳴らした。
「テオ様……。それ、ゆで卵じゃありません。数万年に一度生まれると言われる”【終焉の神竜】”の幼体です」
「えっ、トカゲじゃないの?」
「トカゲが神々しいオーラを放ちながら次元を切り裂いて生まれてくるわけないでしょう!本来なら、世界を滅ぼすほどの魔力を持って生まれてくるはずなのに……テオ様の闇魔法で温められたせいで、完全に『お母さん』だと思い込んでますよ」
神竜(仮)は僕の肩に飛び乗ると、そのままスヤスヤと眠り始めた。
どうやら、新しい家族が増えてしまったらしい。
「名前、どうしよう。美味しそうだったから『タマゴ』でいいかな」
「……世界最強の竜に、そんな名前つけないであげてください……」
フィオナ様が遠い目をしているけれど、当のタマゴ(仮)は幸せそうに僕の髪を甘噛みしていた。
ゆで卵を作ろうとしたら、世界最強のペットが爆誕しました。
テオ君の「適当な温度」は、孵化条件すら書き換えてしまったようです。
次回、タマゴを連れてお散歩へ。
神竜のブレスを「扇風機」代わりに使うテオ君の暴挙に、またしても周囲が震撼します。
あと、タマゴ(仮)の名前を募集します。
なんかいい名前ありませんか?
てことで、お楽しみに!




