魔獣の襲来。洗濯の邪魔なので消えてもらいました
王宮での生活は快適だけど、一つだけ困ったことが起きた。
今日は絶好の洗濯日和なのに、空が不気味な黒い雲に覆われ始めたんだ。
「テオ殿、大変だ、王都の門の外に数万の魔獣軍団が押し寄せている!」
騎士団長が血相を変えて飛び込んできた。
見れば、遠くの空には飛竜が舞い、地響きを立てて巨大な魔獣たちが迫っている。
「緊急事態よ、テオ様!私も加勢します!」
フィオナ様が杖を構える。その横には、冒険者ギルドから徴集された『暁の剣』のガイルたちの姿もあった。
「……あ、ガイル。久しぶり」
「テ、テオ!?なんでお前がこんな所に……いや、今はそれどころじゃねえ!見ろ、あの絶望的な数を!Sランクの俺たちでも死を覚悟するレベルだぞ!」
ガイルは恐怖で顔を強張らせている。
でも、僕にとって魔獣よりも、この「曇り空」の方が問題だった。
「せっかく洗ったシーツが乾かないじゃないか。……ちょっと、どいてもらいますね」
「は?お前、何を言って――」
僕はバルコニーから、迫りくる数万の魔獣たちに向けて、そっと手をかざした。
「【闇魔法:影の物干し竿】」
僕が影をクイッと持ち上げると、王都の外周を囲むように、巨大な「闇のカーテン」が空を覆った。
次の瞬間、カーテンがバサリと翻ると……。
「え……?」
ガイルが呆然と呟く。
ついさっきまで地平線を埋め尽くしていた数万の魔獣たちが、一匹残らず消えていた。
影のカーテンに吸い込まれ、そのままどこか(僕のゴミ箱)へ送られてしまったらしい。
「よし、ついでに邪魔な雲もどかしましょう。【水魔法:湿気取り(ドライ・パス)】」
僕が空を撫でると、魔獣を呼び寄せた暗雲が瞬時に消滅し、王都の上だけ真っ青な秋晴れが戻ってきた
「ふぅ。これでやっとシーツが干せる。フィオナ様、手伝ってもらえます?」
「……。はい、喜んで。もう、神様すら呆れるレベルですね」
フィオナ様は笑いながら僕の隣に立った。
一方で、ガイルたちはその場に膝をつき、ガタガタと震えていた。
「嘘だろ……。俺たちが命懸けで戦おうとしていた相手を……あいつ、洗濯のついでに消しやがった……」
自分たちが追い出した「器用貧乏」が、実は「世界の法則を書き換える化物」だった。
その事実を、彼らはようやく、魂レベルで理解し始めていた。
魔獣軍団、一瞬で退場。
テオ君にとって、数万の敵より「湿気」の方が強敵でした。
次回、王都の救世主として崇められるテオ君。
逃げ出そうとするガイルたちを、国王陛下が呼び止めて……?
お楽しみに!




