賢者の石、テオにとっては「脱臭剤」でした
聖剣をピカピカに磨き上げた後、僕は倉庫のさらに奥で、不思議な輝きを放つ「赤い石」を見つけた。
それは不気味なほど真っ赤で、ドクドクと拍動しているような魔力に満ちている。
「テオ様、それは……!まさか、錬金術師たちが一生をかけても作り出せないと言われる”【賢者の石】”ではありませんか!?」
フィオナ様が、これまでにないほど目を剥いて叫んだ。
なんでも、あらゆる金属を金に変え、不老不死すら実現すると言われる伝説の触媒らしい。
「えっ、これ、ただの『脱臭石』じゃないんですか?」
「……は?」
「ほら、この石、周囲の淀んだ魔力を吸い込んで、綺麗な空気に変えてくれるみたいですよ。倉庫の中がカビ臭かったからコーティングし、吸着効率を最大まで高める。
「【闇魔法:影のフィルター(シャドウ・吸着)】」
すると、倉庫内に充満していた不快な匂いが一瞬で消え去り、高原の朝のような爽やかな空気が流れ始めた。
「よし、これで完璧。フィオナ様、この石は僕の影の家に置いておきますね。トイレの消臭にちょうどよさそうだし」
「世界を支配できる秘宝を、トイレに置かないでください!!」
フィオナ様が泣きながらツッコミを入れてくる。
でも、実際に空気が綺麗になったんだから、石も本望だと思う。
掃除を終えた僕は、ピカピカに磨いた『皮剥き用の剣(聖剣)』と、洗濯済みの『最高級マント』を持って、国王陛下の元へ向かった。
「陛下、倉庫のゴミを片付けてきました。これ、まだ使えそうだったのでお返ししますね」
僕が聖剣を差し出すと、陛下だけでなく、立ち並ぶ近衛騎士たちが全員、その場にガバッとひれ伏した。
「おおお……!輝きを取り戻した『エクスカリバー』ではないか!まさか、あんなガラクタの山からこれを蘇らせるとは……。テオ殿、君はやはり……!」
「あ、ついでにこれも。掃除の時に出たカスで作った『脱臭剤』です。陛下の寝室に置くとよく眠れると思いますよ」
僕は賢者の石(の破片で作った小石)を陛下に手渡した。
陛下の手が、その凄まじい魔力量にプルプルと震えている。
「……こ、これは……不純物が一切ない、究極の……。もはやお礼に差し上げるものが、この国には残っていないかもしれぬ……」
陛下が感極まって涙している横で、フィオナ様は「もう、どうにでもなれ」とばかりに天を仰いでいた。
その頃。
王都の路地裏で、ガイルたちは「金」を使い果たし、自分たちの装備を質に入れようとしていた。
「な、なんだって!?この剣は錆びすぎてて鉄くず以下の価値しかないだと!?クソッ、テオがいれば……!あいつが磨けば、どんななまくらでも最高級品になったのに……!」
彼らはまだ、自分たちの足元に転がっていた「本当の価値」が、永遠に失われたことに絶望すらできていなかった。
賢者の石、まさかのトイレ行き(回避しましたが)。
テオ君の「便利ならいいじゃない」という精神が、今日も誰かの常識を破壊しています。
次回、テオ君が王宮で「お茶会」に招かれます。
そこで出された「最高級の茶葉」に、テオ君がダメ出しを始めて……?
お楽しみに!




