国王の恩返しと、僕が本当に欲しいもの
国王を救ったテオ君、ついに王宮から「最高のご褒美」を提示されます。
でも彼が欲しかったのは、金でも権力でもなく……?
呪いの霧をおやつ代わりに完食した数分後。
すっかり元気になった国王陛下は、玉座に座り、僕の前で深く頭を下げた。
「テオ殿。我が命、そしてこの国を救ってくれたこと、感謝に堪えぬ。望むものを言え。爵位か?領地か?それとも……」
陛下が横に控えていた一人の少女に視線を送った。
そこには、フィオナ様とまた違う、凛とした美しさを持つ第一王女・アイリス様が立っていた。
「我が娘、アイリスとの婚約を望むなら、私は喜んで認めよう」
「「「ええええええええ!?」」」
周囲の魔導師たちが叫び、隣にいたフィオナ様が「ちょっと待ってください!」と僕の前に割り込んできた。
「陛下!テオ様は、その……私の調査対象、いえ、私の……とにかくダメです!婚約なんて早すぎます!」
フィオナ様がなぜか必死だ。アイリス様も頬を赤らめて僕を見ている。
けれど、僕は首を横に振った。
「いえ、婚約とか爵位とかは大丈夫です。管理が大変そうですし」
「なっ……。王族との縁を、管理が大変という理由で断るのか!?」
陛下が驚愕する。
だって、王族になったら自分で洗濯も掃除もできなくなりそうじゃないか。そんなの、器用貧乏な僕には耐えられない。
「代わりに、一つだけお願いしてもいいですか?」
「……うむ、なんだ。国宝の魔道具か?伝説の聖剣か?」
「いえ。王宮の地下にある『開かずの倉庫』を掃除させてほしいんです。あそこ、質のいい
闇の魔力が溜まっていて、お掃除しがいがありそうなので」
……しん、と王の間が静まり返った。
数百人のエリート魔導師たちが、耳を疑ったような顔をしている。
「……掃除、だと?数百年の呪いとガラクタが詰まった、あの『呪われたゴミ捨て場』をか?」
「はい。ついでに、そこで出たゴミは全部僕が引き取っていいっていう許可をいただければ」
あそこには、強力な呪い(=僕にとっては美味しいおやつ)や、珍しい素材が眠っているはずだ。
「器用貧乏」な僕にとって、最高の宝の山に見えた。
「……構わぬが。お前という男は、本当に無欲なのだな……」
陛下は感銘を受けたような顔で頷いた。
違うんです陛下。あそこにある「ゴミ」が、外の世界では国宝級の素材になることを僕は知っているだけなんです。
こうして、僕は「王女との婚約」を蹴って、「王宮の掃除婦」としての権利を手に入れた。
その頃。
王宮の門前で門前払いを受けていたガイルたちは、ボロボロの姿で立ち尽くしていた。
「クソッ、なんで中に入れてくれないんだ!俺たちはSランクだぞ!?……え?『掃除担当のテオ様のご友人なら確認する』だって?テオ?なんであいつが王宮の中にいるんだよ!!」
ガイルたちの叫びは、王宮の分厚い壁に遮られ、誰にも届くことはなかった。
王女様より掃除。
テオ君のブレない価値観が、逆に陛下の信頼を爆上げしてしまいました。
次回、呪われた倉庫の掃除開始。
捨てられていた「錆びた剣」をテオ君が磨いたら、神話の聖剣が復活してしまいました。
お楽しみに!




