国王の呪い、僕にとっては「おつまみ」でした
王子様を影でお仕置きした翌朝。
ギルドマスターのバルトロさんが、見たことないような高級な羊皮紙を手に、僕の部屋へ飛び込んできた。
「テオ!大変だ!王都から直接、お前に『SS級指名依頼』が舞い込んだぞ!」
「えっ、SS級?僕、まだ、Eランクなんですけど」
「ランクなんて関係ねえ!国王陛下が正体不明の呪いに倒れ、国中の聖職者が束になっても解けねえんだ。フィオナ様を連れ戻しに来た騎士から、お前の噂を聞いたんだろう」
バルトロさんは、まるで自分のことのように震えながら僕の肩を掴んだ。
どうやら、昨日の王子様の一件で僕の「闇魔法」の凄まじさが王宮に伝わってしまったらしい。
「テオ様、行きましょう。陛下が倒れれば、国は混乱に陥ります。……それに、陛下の呪いを解けば、昨日の『王子様お仕置き事件』もチャラにできるはずですから」
「フィオナ様がそう言うなら。……呪いって、どんな感じなんですか?」
「聞くところによれば、触れるものすべてを腐食させる『絶望の黒霧』だそうです。近づくだけで魂が削られる、最悪の禁呪ですよ」
絶望の黒霧、か。
なんだか美味し……いや、面白そうな名前だ。
僕たちは王宮の馬車に揺られ、あっという間に王都へと到着した。
案内された寝所には、真っ黒な霧に包まれて苦しそうに唸る国王様と、それを取り囲んで祈りを捧げる数百人の魔導師たちがいた。
「無駄だ……。この呪いは、この世の理を超えている……」
「聖女様!よくぞ戻られた!……ん?その隣の冴えない少年は?」
魔導師たちが不審な目で僕を見る。
僕は気にせず、国王様の周りに漂う「黒い霧」に近づいた。
「あー、これ。闇魔法の濃度がちょっと濃いだけですね。……器用貧乏なりに、少し『お掃除』しちゃいますね」
「待て!素人が触れれば一瞬で灰に――」
魔導師の制止を聞かず、僕は霧の中に手を突っ込んだ。
そして、闇魔法を練り上げる。
「【闇魔法:影の圧縮】」
ジュゥゥゥ……。
そんな音がして、国王様を苦しめていた巨大な黒い影が、僕の手のひらの上で「一粒の小さな黒飴」のような塊に凝縮された。
「……ん、いい感じに固まった。これ捨てるのは勿体ないですよね」
僕はその黒い塊を、ひょい、と口に放り込んだ。
「……もぐもぐ。あ、意外とビターチョコレートみたいで美味しい」
「「「食べたぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」」」
王の間中に、魔導師たちの絶叫が響き渡った。
国を滅ぼしかけない最悪の呪いを、ただの「おやつ」感覚で完食した僕を見て、フィオナ様すら膝から崩れ落ちている。
「テオ様……。それは、食べるものではありません。概念を食べてしまうなんて……」
「えっ、だって勿体ないじゃないですか。質のいい魔力だったし」
僕がケロッとしていると、真っ黒だった国王様の顔色がみるみるうちに健康的な赤色に戻り、彼はパチリと目を開けた。
「……おお、体が軽い。……私を救ったのは、そのチョコレートを食べている少年か?」
こうして、僕はまたしても「無自覚」に国を救ってしまったらしい。
その頃。
王都の路地裏で、ガイルたちは呪い耐性のある装備を探し回っていた。
「クソッ、呪いなんてどうすればいいんだ!テオがいた時は、あいつが『影で拭いといたよ』って言うだけで、どんな呪いも消えていたのに……!」
彼らはまだ知らない。
テオにとっての「拭き掃除」が、伝説の呪いすら「おやつ」に変える神の所業だったことを。
呪い、完食しました。
テオ君の胃袋は、もはや異次元につながっているかもしれません。
次回、国王陛下からとんでもない「お礼」を提示されます。
お楽しみに!




