第7話!提案ですが
「ってわけでさ、ここでカフェを開いたらいいと思うんだ!」
今朝思いついたことを、そのままテンション高めに伝える俺に、返ってくる返事はなかった。
今この場には、やひろ以外の全員が集合している。
なぜ、やひろはいないのかというと、リズがリビングに来て早々に壺を空っぽにしてしまったことがバレ、部屋で反省するように言われたからだ。
「……はあ。全く、何を言い出すのかと思えば……。そんなこと、出来るわけないじゃないか」
「え? 出来ないって、何でだ?」
予想と反したことをせんじに言われ、焦った俺は助けを求めるように周りを見た。
「あう……接客とか、ぼく出来ないだろうし……」
「そもそも、リズはどう思ってんだ? やるかどうかは、それ次第だろ」
全員の視線が、リズへと集まる。リズは、困ったようにアハハと笑った。
「ごめんね、私もカフェとか……やっていける自信ないかな」
「決まりだな。というか、リズはいいとしても、ぼくらは五歳児なんだ。無理だろ」
せんじの言葉を合図にしたように、みんなゾロゾロとそれぞれの時間を過ごすべく、部屋を後にする。
「ちょっ、ちょっと待ってくれよ!」
慌てて引き止めるが、その頃にはもう、残っている者など誰もいなかった。
「……はあ。いい考えだと思ったんだけどなぁ……」
家を出て、丘を降りた先にある泉を、ぼんやりと眺める。
結局、俺には人を動かすほどの力はないってことか。
頬を撫でる風が、妙に冷たく感じられた。
「何か、他にいい案があれば……」
だが、一度却下されてしまったという事実に、俺の頭は全く働いてくれない。
このまま、何もせずにここで生きていくしかないのだろうか。
──ガサ。
「……! 誰だ!」
微かだが、目の前に広がる茂みの一つが、揺れた。
風か? いや、違う。何か生き物が、通ったような音だった。
熊か? ライオン? 龍?
この世界では、どんな動物が出てきても、おかしくない。
俺は、動くことも出来ずに、ただ目の前の茂みを睨み、生唾を飲むことしか出来なかった。
「……みゅ?」
聞き覚えのある、どこか間の抜けた鳴き声。
そう、そこにいたのは……。
「……みゅー!」
「みゅっ! みゅー!」
お涙頂戴物のドラマのように、駆け寄る一人と一匹。
軽やかに、その胸へと飛び込んできたみゅーを、俺は強く抱きしめてやって──。
「……グボァ!」
自分が、五歳児の姿だということと、みゅーが俺よりも巨体であったこと。
その二つが、すっぽりと頭から抜けていた俺は、みゅーのタックルにより派手に吹っ飛ばされていた。
距離からして、二、三メートルだろうか。幸い、怪我はなかった。
押しつぶされ、異世界で二度目の死を迎えていたかもしれないと思うと、震えが止まらない。
「……今度からは、飛び込んでくるの禁止な」
「みゅ?」
分かっているのか、いないのか。
みゅーは、小さく鳴いて首を捻るばかりであった。




