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「TOKIの世界譚」稲荷編 SFでファンタジーな日本神話  作者: ごぼうかえる
ミノさんの謎編

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天記神の隠し事6

 「……俺、こんなになってたのか」

 今のミノさんが高笑いをするミノさんに怯えていた。

 「ミノさんの中にいたあたし、どこにいるんだろ」

 ウカはミノさんの背中を静かに撫でながらつぶやく。

 「……おたくは大丈夫だろ。たぶん、総元にいる」

 ミノさんはヒエンとヤマヒメの女神の力を受ける自分を黙って見つめていた。

 本の中の自分は身体からは黒い煙が出ており、凶悪な神力を発していた。ヒエンはミノさんの神力を直接入れ換えるべく、結界を張りミノさんを出られなくして神力を高める。

 ヤマヒメはヒエンの力を増やすべくヒエンに力を貸す。

 ミノさんが苦しみだした。血を吐きながらもがき出す。

 「なんだ、これは! 出せ!」

 ミノさんは苦しみながら叫んでいた。身体中が切り刻まれ、血にまみれた。

 ウカ達は見ていられなかった。ミノさんはなにもしていないのに、なぜ、こんな非道な罰を与えられているのか考えてしまった。

 そして、天記神に怒りを覚えた。

 本の中のミノさんは苦しそうに血を何度も吐き、ガラスで囲われたかのような結界を叩き続ける。目に涙を浮かべ、切り刻まれる身体に悲鳴を上げていた。

 「生まれてからすぐ、これなんて、ひどすぎる……」

 ウカは口元を押さえた。

 ミタマとリガノはウカの精神状態を心配し、本の外に出るか考えた。

 「だ、大丈夫……。ミノさんができた経緯をしっかり見るから」

 ウカはミタマとリガノにそう言い、ふたりは顔色悪く引き下がった。

 「出してくれ! なんだ、これはっ! 苦しいっ! 痛いっ! 痛い!」

 ミノさんの身体から燃えるような光と白い煙が上がり始める。

 「……ごめんなさい、ハナヒメの元の神……。禊(みそぎ)です。もう少し……耐えてください……」

 「……見ていられないわねー。ちょっと強くするわよー」

 ヒエンとヤマヒメは気分悪そうにさらに神力を高め、ミノさんに送り込んだ。ミノさんはさらに悲鳴を上げ始めた。

 「やめてくれ! いたい! 本当にいたい! 身体がちぎれてしまう! お願いだ……高貴な神よ、本当に痛いのです……」

 ミノさんはだんだんと落ち着いた言動をするようになり、やがて黒い神力がなくなった。ヒエンは結界を解き、一息つくと血塗れで倒れているミノさんの前まで歩いた。ヤマヒメもヒエンについていく。ヤマヒメは肩で息をしていた。

 「こんな酷いことをしなければならないなんて……我が山神達はとても怒っています」

 「……反神は私達東軍の仲間……。オモイカネ様は許さないわ」

 「ええ、お兄様が愛したハナヒメを二回も殺し、三回目のハナヒメをなんとか救えたものの、かわいそうな苦痛を与えてしまった。オモイカネ様は許さない。私達が生きているかぎり、このことは覚えています」

 「……この神に名前をつけて新しく生かさないとダメよー」

 ヤマヒメは倒れているミノさんを見つめ、ヒエンにそう言った。

 「ええ、そうですね。日穀信智神(にちこくしんとものかみ)……あなたは、この名でこの地域に信頼を……」

 ヒエンはすぐにミノさんに名前を与え、最後に優しい神力をミノさんに渡し、ヤマヒメとともに去っていった。

 意識を取り戻したミノさんには記憶がなく、起き上がってから裸のまま首をかしげていた。

 人間の青年のような姿。

 性別は男性だった。

 傷はなくなっており、地面に散らばっていた血を気味悪そうに避けて立ち上がる。手を広げ、霊的着物に変わると丘の上にある神社に沢山の人間が願いに来ていることを知り、動き出した。

 「ミノさん、女神のはずだったんだ」

 一部始終を見ていたウカはなんとも言えない気持ちでこちらにいるミノさんを見上げた。

 「……知らねぇ……」

 「……ごめん」

 ウカはキツネ耳が垂れ下がったミノさんをみて、言葉をつまらせながらあやまった。

 ミノさんは泣きそうなウカを横目に見ると、冷たい言動をなおした。

 「ごめん。おたくにあたるつもりはなかったんだ。ただ、本当に知らなかった」

 「そうだよね。記憶がなくなっているんだもん」

 ウカが下を向き、ミタマとリガノは戸惑いながらミノさんを見ていた。

 「ねぇ、どうする? これから……まだ、この本、先があるのかな」

 ミタマが心配そうに重たい口を開いた。

 「ミノさん、俺達は何も変わらない。お前を助けるぞ。百合組地区稲荷は皆が仲間だ。そして……あなたは我々よりも高い場所にいらっしゃる神でした。一度、敬意を示します」

 リガノは帽子をとると、垂れたキツネ耳でミノさんに頭を下げた。

 「……ああ。いいぜ、別にそんなの。どうしようかな……。イソタケルがなんか暴走してるじゃんか、なんとかした方がよくね?」

 「そうだね……でも、僕らじゃおさえられないよね」

 ミタマが悩んでいるところで、ウカが思い付いたように目を輝かせた。

 「この記憶を見てもらえれば冷林様を攻撃することはなくなるよね? 戦いながら徐々にこちらに連れてくるの、どう?」

 「ええ……強制的に見させるために危険をおかすの?」

 ミタマが眉を寄せたが、ウカは頷く。

 「だってあのページから動かないんじゃあ、真相不明のままミスリードしてることになるじゃない」

 「まあ、そうなんだけどさあ……」

 「やるしかなさそうだ……。直接関わらず、彼をここまで連れてくる」

 リガノはページが進む場所を確認している。

 「……わかった。ちゃんと考えよう」

 ミタマの言葉にウカは頷く。

 「百合組地区稲荷! 今、結束の時っ! イナはいないけど!」

 「おーっ! イナはいないけど!」

 稲荷達は拳を振り上げ、イソタケル神をどう誘導するか話し始めた。

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