第34話 共存する未来
ミランの特訓も終え、魔王の居場所もわかった。
ランの息抜きのバカンスとして2週間滞在したが、中々良い収穫だった。
「十分息抜き出来ただろう?そろそろ旅立つぞ。」
と俺がランに言うと
「わかった。」
と案外すんなり旅立ちをしてくれるようだった
唯一の親友と言えるカーラと毎日遊んでいたからここから去るのは名残惜しいと思うから嫌だと駄々を捏ねると予想していたが…
自分の命がかかっているから遊んでばかりでも心が落ち着かないのかもしれない
「次はどこに行くの?」
とランに聞かれる
「水のドラゴンから魔王の居場所を教えて貰った。北の雪山に魔王が住んでいる。そこを目指して出発する。」
「水のドラゴンが?よく教えてくれたね。」
「ちょっと手荒な方法で教えてもらったからな。」
「味方になりそうな貴重な魔物に手荒な真似しないでよね。」
「確かに。それはそうだな。脅して吐かせたのは印象を悪くさせたかも。」
「信じられない。何やってんのよ…。ドラゴン脅すなんて…」
「まぁ結果オーライだ。魔王の居場所はわかったし。俺達の目標に近づけた。」
「水のドラゴンと友好的になった方が魔王を説得する時に役に立ちそうだと思わない?」
「過ぎたことは仕方ない。過去を振り返るな。それに味方は増やさなくても大丈夫だ。俺1人でも魔王を説得してランを生かせてみせるさ。」
「魔族との共存を目指しているんだから魔族側にも人間のイメージをあげないと作戦は上手くいかないのよ。わかってる?」
「そうは言ってもな…俺は友好的になることが苦手だからランがドラゴンと仲良くなれよ。」
「何でも完璧に出来るんじゃなかったの?俺に不可能はないとかよく言ってるくせに。」
「どうやら人との関係を築くことは苦手なようだ。ミランと仲良くなろうと俺なりに努力したが、焼け石に水だったよ。」
「カイトはクーデルとマリナしか仲良くなかったからね。聖人2人と一般人を一緒にしたらそりゃ上手くいかないでしょうね。」
「薄々勘づいたよ。あの2人が優しかったことに。」
「甘やかされたからカイトのような傍若無人が出来上がったのね。」
「それはランもだろう?」
「まぁね。でも私は自覚してるから。カイトは無自覚の傍若無人だからタチが悪いのよ。」
「俺は優しくしているつもりなのに全く響いていなかった。寧ろ前より嫌われたまである。俺がマリナに優しくしていたのもやり方が間違っていたのかもしれない。」
「カイトから優しさを感じたことないからなぁ。」
「はぁ?何言ってるんだ。俺はランの為に命懸けでこの旅をしているのに!?」
「マリナの為に生きてきて、失恋して何をすればいいかわからない時に私が死ぬかもしれないって知ってじゃあ助けようかと思っただけでしょう?」
「そうだけど。」
「優しさじゃなくて目的がなくなって暇になったから暇つぶしに冒険してるだけでしょう?」
「暇つぶしで命懸けで戦うわけないだろ。」
「命懸けで戦ってないじゃん。カイトの実力で出来ることをこなしている。そうでしょう?」
「…まぁ。」
「カイトにとってこの冒険は暇つぶしに過ぎない。それでもカイトには実力があるし、私は命を懸ける価値があると思ったからこの冒険にのったのよ。」
「でも俺は命を懸けるタイミングが来れば俺はランの為に命懸けで戦う覚悟はあるよ。ただの暇つぶしじゃない。信じてくれ。」
「フフッ。そうね。信じてる。この旅にのった時点で私はカイトを信じて旅するって決めてるからね。」
「まぁせめてチャイナお婆さんと引き篭もって暮らすよりは楽しい旅に出来るように努力するよ。」
「もう十分。旅に出て後悔なんてしてない。楽しませて貰ってるよ。」
「前の街で勝手に教祖様にされて疲弊してたくせに。」
「人生山あり谷ありってことよ。いいことも悪いことも全て生きてる実感がするからいいのよ。」
「さすが死期が近い人は考えが悟りに入ってるな。」
「うるさいわね。死ぬ気なんてさらさらないわよ。私は絶対生き残ってやるんだから。」
「ごめんごめん。俺もランを死なせる気なんてないよ。どんな手段を使っても生かせてみせるさ。」
マリナが敵にならないことを祈って
俺達はリービル国を去ることになった
最後の挨拶をしたのはカーラだった
「私さ。ランがおすすめしてくれた本読んだよ。勇者マルクの冒険譚。ごめんだけど、私は全くハマらなかった。魔族と人間はずっと仲良く暮らしていたのに、人間側が戦争を仕掛けて…勇者マルクは次々に罪のない魔族を殺した。そして遂に魔王を封印…。勇者マルクが魔族を殺したりしなかったら、この世界は魔族と人間仲良く暮らしていたかもしれないのに。ランが…死ぬ心配なんてしなくてもいい世界だったかもしれないのに…」
とカーラは俯いて悲しそうに話す
「勇者マルクは人類を守る為に己の信念を曲げずに戦ったのよ。犠牲があることも知りながら自分の信念が必ず人類の平和に繋がると信じて。」
「でも結局封印は解かれて魔王は復活してる。勇者マルクのしたことは無意味よ。」
「300年もの間人類は平和に過ごせた。勇者マルクは偉大な人よ。」
「人間が憎くないの?魔族って理由だけで殺されてたのに。」
「私は最強魔族だと知ったからね。自分が人間だと思ってたし…300年前の同族が理不尽に殺されたと知っても実感なんてないわ。」
「そっか…」
カーラはランの手をギュッと握りしめて
「必ずまた会いに来て。約束だよ。」
少し震えた声で精一杯のエールを込めてカーラはランに言う
「ありがとう。」
ランは微笑んでそれだけ言った
人間と魔族
仲良く暮らせる未来は
ランとカーラの2週間で証明された




