第30話 漢のプライド
次の日になり、俺はミランの部屋のドアをドンドンと叩く
ミランがガチャリと鍵を開けてこちらを見る
「何?」
「今日も特訓するぞ。」
「嫌だ。」
と言って扉を閉めようとするので、俺は扉をガッと掴み扉が閉まらないように力ずくで抑える
「逃げんな。」
「逃げるわ!俺の歯を無条件に折るやつとは特訓したくねぇよ!」
「無条件じゃない。回復魔法の会得の為だ。」
「とにかくカイトとは特訓したくない!」
「ランを守る為に強くなりたいんだろう?文句言ってないで特訓するぞ。」
「ランを守る為に強くなりたいけれど、カイトを師事して特訓はしたくない!ランと特訓したい!」
「好きな女に教えを乞うなんて恥ずかしくないのか?」
「恥ずかしくない!」
「ミランには漢のプライドはないのか?」
「漢のプライドなんて抱えるものではないですよ。そんなめんどくさいものはとっくの昔に捨てました。」
「漢のプライドは持ってた方がかっこいいぞ。」
「かっこ悪くてもいいので。じゃあ。」
と言いながら無理矢理扉を閉めてこようとするので
俺は力で捩じ伏せる
「待て待て待て。じゃあ今日は1日この部屋でゴロゴロして過ごすつもりか?」
「この街には休息の為に来たはずです。別にいいですよね。」
「もう十分休んだだろう?」
「ランはまだバカンス中ですよ。」
「ランはもうすぐ死ぬかもしれないんだからいいんだよ。やりたいようにさせてやれ。」
「俺はランを死なせるつもりはない!」
「そう言うならさっさと部屋から出てこいよ。ダラダラ部屋で過ごして好きな女が守れるのか?」
「うぅ…」
「早く出てこい!」
「嫌だー!!!俺はランに魔法のことを教わりたいー!!ランは努力家だから教えるのも得意なはずのんだー!!」
「うるさい!ランは普通の女の子として今日も楽しく遊んでいるんだ。雑魚のミランの為に時間を割くなんて可哀想だろう?」
「正論を並べるなぁ!ひどいじゃないか!うう…俺もランと一緒に遊びに行きたいよ…」
「今日、ランはカーラと一緒に初めて演劇を観に行くと嬉しそうに話していたぞ。」
「羨ましい…俺も行きたい…俺も演劇行ったことない…」
「やめろ。百合の間に挟まる男は死刑になるぞ。」
「なんですかそれ。」
「知らないけどマリアが言ってた。女の子同士が仲良く遊んでいる間に入る男は殺されて当然の報いを受けるべき重罪らしい。」
「そんな常識があるんですか!?確かに2人の邪魔をしては悪いと思ってはいましたけれど…」
「諦めろ。ミランは今日俺と特訓するしか選択肢ほない。」
「この街で1番強い魔導師の方とかにお願いしにいくとか…」
「お前みたいな雑魚が1番強い魔導師に師事を受けようだなんて図々しすぎる。強き者はミランのような雑魚に時間を割くのは損害なんだよ。」
「じゃあちょっと強い魔導師とかで…」
「俺がこの世で1番強い剣士なんだから1番特訓相手に適任だ。」
「カイトは絶対人に教えることに向いてない性格をしています。」
「ごちゃごちゃ文句ばかりうるさい。さっさと行くぞ!」
俺は往生際が悪いミランの首根っこを掴んで無理矢理部屋から出す
「優しく!優しく特訓してください!」
「優しく特訓して欲しいならあまり俺をイラつかせない方がいいぞ。」
俺達は特訓しやすい誰もいない海の近くの岩場で特訓を始める
「今日はミランが力の制御を出来るように特訓する。昨日のように突然ブレスを吐いていると一般人の人間はあっさり死んでしまうぞ。」
「急に攻撃されたりするとびっくりして力が制御出来ないんだ…」
「そんなことで人を殺してしまうと魔物の印象が悪くなる。ランの印象も悪くなるぞ。」
「力が制御出来るならそうなりたいさ。ランの為にも。」
「よし。」
俺は剣でミランの足を軽く切り裂く
「いってててててててててええええええ!!」
ミランは足から血が垂れてブレスが漏れている
「ほら。またブレスが漏れているぞ。」
ミランは昨日会得した回復魔法で足を治し
「殺す!!」
と言って俺を睨んで炎を俺に吐いてきた
俺は炎を避けてミランに言う
「おいおい。力を制御する特訓なのに反撃してどうするんだよ。」
「いきなり足をぶった斬るからだろうが!」
「いきなり攻撃された時にブレスが出ないように特訓するのに。」
「攻撃されているのに黙っていろと?」
「人間相手に反撃しちゃダメだ。ランは人間相手には何があっても反撃しないよ。足をぶった斬られてもね。」
「…わかったよ。」
「じゃあ攻撃するから耐えろよ。」
俺は次に腕を切ったり腹を切ったりしてミランを攻撃する
「ほら!まだブレスが漏れているぞ!力が出ないように制御しろ!」
ミランは回復魔法を覚えたからひたすら俺の攻撃を耐えて回復している
「すぐに回復出来るんだから防衛本能でブレスを出す癖をやめろ!ブレスを出して攻撃するなら防御する魔法を使え!」
「うぅ…無茶言うな!回復させるだけでも精一杯なのに制御とか防御魔法とか無理だよ!」
「無理なんて言葉二度と言うな!!ランを死ぬ気で守るなら根性でやり遂げろ!」
「根性だけじゃどうしようもないよ!やり方がわからないんだから!!」
「実践あるのみだよ!痛い思いをしたくないならブレスを出す癖を治せ!!俺はその癖が治らないなら一生攻撃をやめないぞ!!」
「うわあああああああん!!もう魔力も尽きそうだよ…回復も出来なくなっちゃう…」
と泣き言を言いながらミランは泣き出してきた
「甘えんな!!漢が泣くんじゃねぇ!!」
「うわああああああああああん!!!!」
ぐすぐすと泣きながら力が制御出来ずに漏れ出すブレスをミランが身に纏っていると
「何してんの…?」
とランがカーラと一緒にやってきた
「ラン!!!」
とミランはランの姿を見るなりランの後ろに隠れた
「おい!漢がかっこ悪いことするな!好きな女を盾にするなんて死ぬより恥だぞ!!」
「助けて!!ラン!!」
「この…!!軟弱者が!!!」
「ちょっとカイト落ちついてよ。私達が演劇の観劇を終えて出てきたら、私の仲間の魔物が人間に虐められてて可哀想だから助けてあげて欲しいって街の人に言われて来たのよ。カイトはやりすぎ。」
「ミランは人間を攻撃させないように特訓することは必要だ。虐めていたわけじゃない。」
「わかってるわよ。ミランには私が教えるからカイトも演劇でも見てちょっとは休みなさい。」
「演劇…マリナとデートで行きたかったな…」
「振られたから仕方ないでしょ。1人で行ってきな。」
「嫌だ!男が1人で演劇なんて恥ずかしい!」
「1人でも楽しめるから。」
「男が1人で演劇なんて不審者だろう!?」
「そんなわけないじゃん…いいからちょっと休みなさい。」
「俺は毎日走り続けたいんだよ!」
「うっさい!邪魔だって言ってんの!早くどっか行け!!!」
とランに叱られたので仕方なくその場を去った
1人で演劇はさすがに嫌なので、広場に来ていた紙芝居を子ども達に混じって一緒に見ていると
「お兄ちゃん1人で紙芝居見に来たの?変な人〜!!」
と一緒に見ていた子供に揶揄われてしまった
ほらみろやっぱり不審者扱いされるじゃないか
たまには休めと言われたから実践しただけなのに
理不尽だ




