第26話 泣いた理由
俺達は休養とバカンスを兼ねてリービル国へと入国した
初日から水着に着替えて海を泳ぎ、海を満喫した
ランもミランもおおはしゃぎで楽しんだ
1週間ほどは先のこととか何も考えずにただ今を楽しむ時間を過ごそうと思っていたが
「行かない。」
ランが布団から篭って出てこなくなった
「昨日あんなに楽しく海で泳いでいたじゃん。どうしたんだよ。」
「今日は気分が悪くなったの。」
「え?体調悪いのか?大丈夫か?」
「寝たら治るから。」
「熱は測ったのか?」
「測ってない。」
「しんどいなら測った方がいいぞ。」
俺は宿のフロントから体温計を借りて、ランの熱を測った
ランは熱はなく平熱だった
「熱はないな。」
「少し寝たらよくなるから。」
俺はランの枕をよく見ると泣いた後があった
枕は濡れた後があり、涎で濡れたわけではないだろうから
ランは大泣きして枕を濡らしたことになる
「おい。枕が濡れてるぞ。昨日、俺達と別れてから何があった?」
「体調悪いからたくさん汗をかいただけ。」
「熱はないのにか?」
「そうよ。もうしんどいから早く寝かせて。」
「…わかった。今日はゆっくり休めよ。」
俺はランの部屋から出て行った
「カイトどうだった?ランは熱があるの?」
とミランに聞かれる
「いや。あれは仮病だ。」
「仮病?」
「昨日の夜、何かあったらしい。枕が濡れるほど大泣きしていた。」
「あのランが泣いたのか?」
「おそらくな。」
「信じられない…何があったか話してはくれないよね?ランのことだから。」
「寝たら治るからの一点張りだ。しばらくは1人にしてやろう。」
「ランが泣くなんて…心配だけど、俺達に頼ってくれたりはしないよね…」
「プライドが高いからな。」
「何があったか気になるけど、深く踏み込んだら余計なお世話だと言われちゃうよね。元気になるまでそっとしてあげる方がいいのかな…」
「ランのストレスを軽減させる為にこの国に来たのに、さらにストレスを溜め込んで嫌な思いをさせるなんて可哀想だと思わないか?」
「それはそうだけど…じゃあどうするんだよ。」
「余計なお節介をするんだよ。昨日、俺達と別れた後、夜に何かあったに違いない。何があったか調べよう。」
ランは魔物の姿をしているから目立つ
昨日ランに何があったか目撃されている可能性はある
俺達は街に聞き込みをしに行った
リービル国の夜は月明かりと海がよく映えるように街に街灯を置いていない
夜になると真っ暗になるらしい
真っ暗な状態で他の人を判別することは難しい
昨日のランの目撃情報も得ることができなかった
「全然手掛かりが見つからないな。」
「真っ暗な夜に出歩く習慣がリービル国にはないみたいだしね。」
「犯罪に巻き込まれても目撃情報がなくて事件解明が難しいことがたくさんあるらしい。だからリービル国こ人達は夜に出歩くことは防犯の意味でもほとんどしないようだ。」
「ランは何かしらの犯罪に巻き込まれた可能性があるね。」
「そうだな…夜中に女の子1人で出歩くなんて危ないからこれからは辞めさせないとな。」
「ランに酷いことをした人がいるなら絶対に許さない!犯人を捕まえよう。」
「…いや。事件に巻き込まれた可能性は低いんじゃないかな。」
「え?」
「ランは強い。いくら俺が人間に絶対危害を加えるなと警告しているとはいえ、一般の男達相手になすがままにされて襲われることはほとんどありえない。ランが制圧することなんて容易いはずだ。」
「たしかに…じゃあ本当に何があったんだ?」
「心に傷を負うようなことがあったことは確かだ。」
「ランは強いけれど繊細で優しい人だからな…」
ランは結構泣き虫だ
クーデルに振られた時も大泣きしていたし
レアジーニャ城で演説をしていた時も泣きながらしていたし
感情的で涙腺が緩い
思えば俺と旅に出てから毎日泣いてるんじゃないかと思うぐらいランは泣いている
泣き虫なくせに強がりだから1人で溜め込む
今回、俺達が泣いた原因を知って解決することで少しでもランが俺達を頼るように心を許してくれるといいけど
聞き込みしても全く情報がなくてお手上げ状態だ
ハァ…と思わず溜息が出る
少し疲れて噴水のベンチで休んでいると
「カイト!ちょっとこっち来て!」
とミランが興奮気味に俺を走って呼ぶ
俺はミランに付いていき、ミランの案内する場所へ行くとそこは俺達が泊まっている宿だった
「これを見て!」
宿の廊下に飾られた絵をミランが指差す
そこには美しい1人の少女が風魔法で飛んでいる絵が描かれていた
「これって…」
「絶対ランだろう!?この絵を描いた人ならランに何があったか知っているはずだ!!」
美しく描かれていたラン
この人とはどういう関係だったのかは
絵を見ればなんとなく想像がついた
きっと親しい間柄だったのだろう
それと同時に昨日の夜に何があったのかも想像がついた
昨日、この絵を描いた人にランは久しぶりに出会ったんだ
そして魔物になったランは…
おそらく拒絶されたのだ




