第20話 最後の挨拶
俺達は3人でナーチス村の村長に旅に出ることを報告しに行った
「ハバロン村長。俺達旅に出ることにしたよ。」
とミランが告げる
「え?どうして?ここに住めばいいじゃないか。」
「以前も話した通り、ランは魔王が死ねば生きていけない。俺達は魔王と共存する為に世の中の魔族に対する偏見を変えなくてはいけない。」
「そうか…難しいことだろうけど応援しているよ。」
「ありがとう。」
「マグタットがドラゴンに変貌し、このナーチス村は滅びるところだった所をランさんが救ってくださった。我々ナーチス村一同はランさんへの恩がある。ランさん。本当に感謝しています。我々ナーチス村に協力して欲しいことがあれば何でも言ってくださいね。」
「こんな辺鄙な村にやって欲しいことなんて何もないわよ。村の復興もまだ終わってないのに私の為に出来ることなんてないわよ。」
とランはぶっきらぼうに答える
「そうですね…まだまだ復興出来ていませんが、ランさんが大雨を降らせてくれたおかげでこの村は生き返りました。我々が役に立てることなんて微力ですが、少しでも力になれるように更なる復興を進めます。」
「この村は穏やかな人が多すぎるから悪い人に騙されないように気をつけなさいよ。」
「はい。せっかくランさんが蘇らせてくれたナーチス村を大事に守ります。」
ハバロン村長に挨拶をして村を出ようとすると
マーブルがいた
「嘘つき…魔王を倒してミランを人間にするって言ってたくせに!!嘘つき!!魔王と共存なんて出来るわけないじゃん!!ミランを返して!!ミランは人間よ!!」
マーブルはミランも一緒に旅に出ることを盗み聴きしていたのだろう
マーブルはミランも一緒に旅立つことを非難してきた
ランは節目がちになり悲しそうにしている
「俺は魔族になれてよかったと思っている。人間社会でいるよりも1人で魔族として暮らす方が性に合ってあた。人間に戻るつもりはない。」
とミランが言う
「時計屋で働いて楽しそうにしていたくせに!!ナーチス村で楽しく過ごせていたじゃない!」
「それはランがいたから。俺は1人で時計屋をやるつもりはない。ランを愛している。」
「もうランとミランの茶番はやめなさいよ!!別にランもミランもお互いに好きでもなんでもないくせに!!」
「俺はランを愛している。この気持ちに嘘偽りはない。」
と真っ直ぐマーブルを見つめてミランは答える
マーブルは一瞬たじろぎ気圧されたが
「本気でランが好きなら尚更行かない方がいいわよ。魔王と共存なんて出来るわけない。ランは死ぬ運命なの。」
「魔王と共存だって夢物語じゃない。魔王は人間に殺すなと命じている。」
「だからなに?それで人間が魔王を許すと思っているの?魔王が復活しただけで何人の人間が死んだと思っているの?魔王が復活したことで人間がドラゴンや魔物に変貌して滅んだ村や町、たくさんの人間が死んだ。魔王は生きてるだけで人間に悪影響を及ぼす。魔王は討伐されるべきなのよ。ミランの師匠のマグタットだって魔王が復活しなければ、ナーチス村で穏やかに過ごすことが出来たのに…」
「もう過去のことだ。」
「ミランは過去のことだけれど、魔王が存在する限りまたマグタットのようにドラゴンに変貌してしまう人間が出てくる。それでも魔王は生きるべきだというの?」
「そうだ。」
「そう…もうミランは人間ではないものね。魔族のランと一緒に暮らせればそれでいいんだ。人間達が殺されても!!」
「魔王が殺しているわけじゃない。」
「魔王の存在が悪だと言っているの!!」
「俺はそんなことないって信じている。」
「ランはクーデルが好きなのに!!そんな女の為にどうしてそんな…」
「俺が好きだから。それ以外の理由はないよ。」
「馬鹿な男。」
「いいんだ。魔族になったことで色々吹っ切れた。やりたいことをして生きれたらそれでいい。」
「ミランはナーチス村が嫌い?」
「そんなわけない。俺の大事な生まれ故郷だよ。」
「絶対…帰ってきてよ。ランを救えても救えなくても。」
「わかった。約束しよう。」
「辛い旅になるだけだよ?」
「残る方が辛いんだ。」
「そっか…いつでも泣きべそかいて帰ってきてもいいんだからね。泣き虫ミラン。」
「泣かせてた本人がよく言うよ。」
「あれぐらいのちょっかいで泣く方が悪いのよ。」
「ひでえなぁ。」
「待ってるから。絶対帰ってきてよ。」
「あぁ…約束するよ。」
マーブルにも別れを告げて俺達は旅立とうとすると
ランは天に手をかざして
地面から大木を魔法で生やした
ランが生やした大木は生命力に溢れていて
美味しそうな林檎が成っている
ナーチス村の人々は突如現れた大木の林檎の木に大喜びしている
「魔族が人を傷つけるだけの種族ではないことをナーチス村の皆さんには覚えていて欲しいです。」
とランは言った
あれだけの大木を生やすには大量の魔力が必要なはずなのに
ナーチス村の為にランは立派な林檎の木を生やした
「こんなことで贖罪になるとは思ってないけど…ごめんね。マーブル。」
とランはマーブルに言う
ミランを連れて行くことに罪悪感があるのだろう
「なんでアンタが謝るのか意味がわからないわ。ミランが恋にうつつを抜かしている馬鹿な男ってだけよ。」
「だって…マーブルの好きな人を連れて行くわけだし。」
「本気で言ってる?煽りで言ってる?どっちにしろくそムカつく。」
「ごめん。」
「謝ってるんじゃねーよ!目障りだからとっとと出て行け!!」
「ありがとう!さよなら!マーブル。私はアンタのこと結構気に入ってたわよ!」
「私はお前のことなんか大嫌いだよ!せいぜい元気に野垂れ死ぬことだな!!」
とマーブルに追い出されて俺たちはナーチス村を旅立った




