第19話 話し合い
魔王の部下と名乗ったロバートとか言う魔族の男は空へ飛んで逃げた後、俺とランもナーチス村へと帰った
ランが話があると言うので、俺は時計屋の2階にあるランの部屋へと向かう
時計屋に入ると
「ラン!よかった…無事で。急に飛び出してどこかに行くから心配したよ。」
とミランがランの姿を見て安堵している
「ごめんね。強い魔族の気配がしたから気になって…」
「無事ならいいんだ。魔族の人は何しに来たの?」
「え…何だっけ?」
「ランと仲良くしたいって言ってたぞ。」
「そうそう。私と仲良くしたいって言ってた。」
「魔族仲間が欲しかったのかな?仲良くなれたの?」
「いや。人間を嫌悪するやつだったから俺が追い返したよ。」
「そっか…やっぱり魔族は人間が嫌いな人が多いのかな。」
「そのようだな。」
「俺も魔族になった時に少しだけ調べたけれど、300年前に人間と魔族の戦争を始めたのは人間側らしいからね…」
「どうして戦争を人間は始めたんだ?」
「自分達より力がある種族を恐れたから。」
「魔族は人間を殺したりしてなかったのか?」
「おそらくね…だから魔族は人間達が嫌いなんだよ。何も悪いことしてないのに急に虐殺されたんだ。」
「でも魔物は魔族側の生命体だろう?魔物は人間達を殺していたはずだ。」
「それはそうかもしれないけれど…そんなことを言い出したら熊だって人間を殺しているだろう?意思疎通が出来ない生命体を制御出来ないのを魔族のせいにするのは理不尽な気がするよ。」
「でも魔族がいなくなれば魔物も消滅するんだろう?魔物の被害が多いなら人間側が戦争を始めるのはわかるよ。」
「俺はそう思わない。魔物の被害があるなら魔物だけ退治するべきだ。罪のない魔族が皆殺しにされるなんて酷すぎるよ。」
「だから魔族の言う通りに人間を恨んで復讐しろと?」
「そんなことは言ってないけど…」
「じゃあミランはどうしたいんだよ。」
「俺は元のように魔族と人間が共存する世界を作りたいよ。カイトとランもそれを目指しているんだろう?」
「そうだ。俺達はランを生かす為に魔王を説得して共存することが目的だ。間違っても魔族側に感化されて人間を恨んだりすることが絶対にないように。」
「そんなに睨まないでよ…わかってるよ。俺がランの生き残る未来を作る邪魔は絶対にしない。」
「人間を傷つけることも絶対にするなよ。」
「わかってるよ…」
「じゃあ俺達は2階のランの部屋でこれからのことを話し合いをするから。」
「話し合い…?」
「そうだ。じゃあお邪魔するぞ。」
「ちょっと待って!俺も一緒に…」
「ミランは時計屋の仕事があるだろう?」
「少しの間休むことぐらい出来る。」
「そうか?じゃあ一緒に来いよ。」
俺達は3人でランの部屋に入った
「ナーチス村では魔族の好感度を十分上げることに成功した。そろそろ次の街へと移動しよう。」
「どこの街に行くんだ?」
「まだ決めてない。」
「そんな闇雲に行動するより、魔王城の場所を探して魔王に会う方法を探す方がいいんじゃないのか?」
「ダメだ。俺達が魔王との交渉に成功しても、人間側が納得しなければ魔王討伐に来る勇者はずっと後を経たない。魔族が無害であることを人間側に広める必要がある。」
「そっか…じゃあ俺も一緒に行ってもいい?」
「俺はいいけど…ミランはいいのかよ。ナーチス村の人々と仲直り出来て師匠から受け継いだ時計屋も続けることが出来て楽しそうにしてたじゃないか。」
「いいんだよ。」
「1年後、俺達や魔族がどうなるかわからないぞ?失敗して魔族が迫害される未来だってあり得る。そうしたらミランの居場所はまたなくなるぞ。」
「わかりもしない未来に怯えはしないよ。俺は今、ランの為に魔族と人間の仲を良くする為に協力したい。それだけだ。」
「愛だな。」
「へ…変なことを言うな!大事な恩人に恩返しをしたいだけだ!!」
「素直になればいいのに。なぁラン?」
「私は反対だよ。」
「何が?」
「ミランはここに残るべきだと思う。」
「何で!?ラン!?俺はランの為に…」
「恩返しとかそんなのいらないから。私が生き残る確率なんて数%しかないのよ。そんな泥舟に乗せられないわよ。ここで平和に生きた方がいい。」
「ランが生き残る確率を上げる為に俺は一緒に旅をしたいんだ!」
「残酷なことを言うけど…私はかなりの高確率で死ぬわよ。目の前で救えない命をミランは耐えられるの?
」
「それは…」
「私達がやってることは悪あがきのようなもの。成功する確率はかなり低い。そんなバカな計画にミランを巻き込みたくないの。」
「俺はどこか知らない場所でランが死ぬなら目の前でランが死んで欲しい!何も知らないままなんて嫌だ!俺も…最後の悪あがきをさせてくれよ!!」
「嫌だ。」
「俺はランが好きなんだ!!嫌だと言われてもダメだと言われても絶対についていく!!」
「はぁ…だって私が死んだらミランは泣くでしょう?湿っぽくなるの嫌いなのよね。」
「そんなの…カイトだって泣くだろう!?」
「いや。カイトは泣かないよ。残念だったねって言うだけよ。」
「そこまでカイトは薄情じゃないよ!」
「いや。薄情な奴なんだよ。カイトは。だからこそ気を遣わないし、一緒にいて楽なの。私のこと好きならこの時計屋で待っててよ。」
「俺が一緒だと気が休まらないから?」
「そんなことない。この数週間一緒に過ごしててとても楽しかった。ずっと暮らせるなら幸せだなって思ったよ。」
「それなら…!!」
「ごめん。ミランのことを気に入っているからこそ一緒に旅をしたくない。死んでいく姿を見られたくないの。」
「嫌だ…一緒に行きたいよ…」
「ごめん。運良く生き残ったら必ずまた会いに来るから。」
「その時は本当の恋人にしてくれる?」
「そんな約束は出来ないよ。死んだ時に呪いになっちゃうから。」
「それでも構わない。約束してくれないと俺は待てないよ。」
「困ったな…私はミランに幸せになって欲しいの。」
「ランを忘れて?」
「そう。」
「それは無理だよ。ランだってクーデルを忘れられなくて毎晩泣いているだろう?俺だってここで待っていても死ぬまで泣き続けるだけだよ。」
「死んでいく人間を想わない方がいい。」
「残り少ない時間だからこそ一緒にいたいんだ。」
「辛い想いをさせるだけだよ。」
「ここに残る方が辛い。」
「マーブルが泣くわよ。」
「俺はランが好きなんだ。」
ランは黙って考えるこんでいる
「私は…ミランのこと好きだけど、それは友人としてだよ。ミランの気持ちに応えることは出来ない。私のことが好きでも無駄な時間を過ごすだけ。」
「有意義な時間の過ごし方なんて知らない。俺はただ好きな人と一緒に過ごしたい。それだけ。」
「死ぬのに?」
「だからこそ一緒に過ごしたい。」
ランはハァー…と大きな溜息をつく
「わかった。そこまで言うなら一緒に旅をしよう。」
「よし!!言ったな!?絶対についていくからな!?」
こうして俺達は3人で旅をすることになった




