第8話 王命
レストランを出て、タクトと別れてから俺達はランの服を買いにブティックへと向かった
ランはお婆さんから貰った魔法ローブをいつも着ていたが、魔女の服という感じで可愛さはない
これから先、ランの可愛さを広めて魔族への理解を広げたいので年頃の女の子が着る可愛い服を購入したい
「これとかどうだ?」
「絶対にいや。バカじゃないの?そんなフリフリのレースだらけの服着るわけないじゃん。」
「可愛いからいいじゃないか。」
「似合わないわよ。」
「そんなことないよ!すっごく可愛いと思う!」
「そういう服はマリナみたいな女の子が着るのよ。」
「ランだって似合うのに…」
「これにする。」
「はぁ?今着てる黒のローブと変わらないじゃないか。」
「黒が落ち着くんだもの。」
「ダメダメ!可愛い女の子のイメージがつくように新しい服を購入するんだから。今の服と変わらない服を買ってどうするんだよ。」
「だって魔法使いのローブしか着たことないし…」
「女の子はおしゃれしなくちゃ!」
「でもどれがいいかなんてわからないし…」
とランが迷っていると
「お困りですか?」
と店員が話しかけてきた
「シンプルだけど可愛い服が欲しいんだけど。」
と俺が尋ねると
「それならこの服はどうですか?」
と渡された服は白のTシャツに黒のズボンだった
「えぇ?これ可愛いの?」
「可愛いですよ。一度試着してみてはどうですか?」
と言われたので、ランは試着室で勧められた服を着た
「どうでしょうか…」
と試着室からランが出てきた
可愛い
シンプルだけれども、体のラインがはっきりする服だ
ランはスタイルが抜群にいいので胸とか尻とか強調されてて最高だ
「いやぁ!素晴らしいよ!これが引き算の美学ということだね!とてもよく似合ってる!」
と俺はパチパチと拍手をしてランを褒めた
「なんか…服がピチピチすぎない?サイズ合ってないと思うんだけど…」
「最近はこういう小さいサイズを着こなすことが流行りなのです。これでもサイズが大きいぐらいですよ。若い女の子はおへそが出るぐらいミニサイズを着てますから。」
と店員がランに説明する
「なにそれ…私は普通のサイズでいいわよ。もっと大きいサイズのやつがいい。」
「とんでもない!これが1番いいですよ!ゆったりめのサイズはランさんには似合いませんから。」
「でも…尻尾も羽も隠せないし…」
「隠す必要なんてありません!ランさんの魅力ですよ!!」
「魔族ってだけで嫌悪感を持たれることも多いから…」
「こんな素晴らしいスタイルの女の子に嫌悪感を抱く人はいません!冒険はやめたらどうですか?芸人として開花しますよ!!」
「芸人?なにそれ?」
「舞台で歌ったり踊ったりするんですよ。可愛い女の子が芸人になるんです。ランさんはとても人気が出ると思いますよ!」
「人前で歌ったり踊ったりするの?出来ないよ。そんなの。」
「魔族として生きていくならいい案だと思いませんか?歌とか踊りが下手でもいいんですよ。可愛ければファンはつきますから!」
と店員はランに芸人になるように熱弁している
ランは困ってたじたじになっている
芸人か。ランが生きていくならそういう職業に就くのもありだな。
芸人として冒険していくとかな…
ガチャ
と服屋の扉が開くと
「ここにランという魔族がいると情報があった。王命によりついてきてもらう。」
と店内に入るなり騎士が言った
「断ると言ったら?」
と俺が言う
「拘束してでも連れて行く。」
と冷たく騎士は言い放つ
店員はおろおろと戸惑っている
「わかりました。行きましょう。」
とランが言うと
「そんな!ランさん!ランさんは何も悪くないのに…」
と店員がランに言うと
「ありがとうございます。呼ばれただけですから。すぐに殺されたりとかしません。心配してくれてありがとうございます。この服は購入します。」
「ランさん…」
「心配しないで、またこの店に来ますから。まだまだ服を買わないといけません。また選んでください。」
「もちろんです!待ってますから!」
「ありがとうございます。」
とランはにっこりと微笑む
誰も味方してくれないと思っていたからこそ
店員がランを庇ってくれたことが嬉しかったのだろう
今まで見たことないぐらい喜んでいる
ランが騎士に連れて行かれようとするので
俺もついていくと
「おい。何をしている。」
と騎士に言われてしまう
「俺もついていこうと思って。」
「連れていくのはランだけだ。お前はここで待っていろ。」
「そんなこと言われても…俺はランの友達です。何をされるかわからない友人を黙って見送れませんよ。」
「話をするだけだ。」
「信用出来ません。」
「俺に逆らうのか?」
「そんなつもりはないですよ。ランを連れてこいと言われただけでしょう?俺がついてきても問題ないはずですが。」
「…勝手にしろ。」
と言われたので勝手についていく
レアジーニャ城に連れていかれて王の間まできてしまった
王座に王様が座っていて俺達を見下ろす
「この世に唯一の生き残りである純潔の魔族のランで間違いないか?」
と王様が言う
「はい。」
とランが答える
「この街でうろうろして人と関わっているようだが…何を企んでいる?」
「死ななくないので生き残ろうとしています。」
「だから魔王も生かそうとしているのか?」
「そうです。」
「魔王が生き返ったことでこの世界にどれほどの被害が出ているかわかっているのか?死者は100人を超えている。」
「魔王が殺したわけじゃないですよね。」
「魔王が復活して魔物が暴れるようになったことが問題なのだ。特にドラゴンは人間に膨大な被害を与えている。」
「人が近づかなければ害はないと思いますよ。」
「魔物の味方をするのか?」
「魔物ですから。」
隣にいる騎士が剣を抜きシャキンとランの首の近くに剣先を向ける
「魔物は人間の敵だ。そういう思想を持っているなら生かしてはおけないな。」
と王様が言う
「魔物は人間の敵ではありません。私達魔物から人間を襲ったことはないはずです。」
「存在が悪なのだ。ドラゴンが生きているだけで大地が荒廃したり、火山が止まらなくなったりしている。人間が住めない世の中になるんだ。」
「それは…」
「ランはドラゴンを2体討伐したり、人間に有益なことをしてくれたことは評価する。だが野放しにはさせられない。」
「私はどうなるのですか?」
「この城に監禁させて貰う。殺さないだけ情状酌量の余地があるだろう?」
「…嫌です。」
「何?逆らうのか?今ここで殺してもいいんだぞ?」
「何故?私が何をしたから殺されないといけないのですか?」
「魔族に生まれたからだよ。」
「ひどい。」
「次は人間に生まれるように願いなさい。」
と王様が言うと同時に隣の騎士がランの首を斬ろうとしたので
俺は剣を抜いて防御し、ランを助けた
「なんだお前は。魔物の味方か?」
「俺はランの友達だよ。」
「お前もランの味方をするなら殺す。」
「ハハッ。出来るものならやってみろよ。」
騎士は俺に攻撃してきたが俺は剣を弾いて騎士を踏みつけた
「王様を守る騎士様がこの弱さか。」
「お前のやっていることは反逆だぞ。わかっているのか?」
「ハハッ。反逆?俺は友達を守っただけだよ。」
「その女は魔物だ。」
「だから何?魔物が友達でもいいだろう?」
「人間を惑わす存在だから…」
「あーーーーーー。ごちゃごちゃうるせえな。ランを見逃せよ。別に悪いことなんてしてないだろうが。」
「生きているだけで悪影響だと言っている。人間が魔物化していることを知っているだろう?存在するだけで魔物を増やしている。」
「そんなことでランを監禁したり、殺す理由になんてならないよ。」
「存在が悪だと言っている。」
「わからないかな。見逃せと言っているんだよ。」
「…それは足元にいる騎士の命が惜しければと脅しているのか?そんなことは脅しにならない。騎士はこの国と私に命を捧げているからな。」
「呑気な王様だな。騎士の命じゃない。王様の命だよ。俺が脅しているのは。」
「…正気か?」
「当たり前だろ。大事な友達を殺そうとしている悪の親玉を脅して何が悪い。」
「私を殺す?君に出来るのか?」
俺は持っている剣を王様の首と肩の間に投げ飛ばして突き刺す
「これは俺が王様を簡単に殺せるという脅しでやったのはわかるだろう?わざと外したんだよ。次は殺すよ。」
「化け物に心を奪われたか。」
「どっちが化け物なんだろうね。ほら。見逃せよ。王様。」
「魔王は討伐される。お前らのやっていることは無駄なことだ。」
「そんなことはないよ。ランはこう見えて優しい女の子なんだ。この世界にも王様にも認めさせてみせるよ。」
「見逃してやる。勝手にしろ。」
「どうも〜。ありがとうございます。王様。魔物と共存できる世界を作ってみせますからね。」
「はやく出ていけ。頭痛がする。」
「失礼しました〜。」
と俺とランはレアジーニャ城から出て行った
「はぁーーーーーーーーー。めちゃくちゃしすぎ!!王様を殺すとか脅して…バカ!!」
とランに怒られてしまった
「ランを殺すとかいうから頭にきちゃって…」
「ふふ…でも王様の王座に剣をぶっ刺した時にビビり散らかしてた王様の顔傑作だったよね〜。アハハ!!」
「馬鹿面だったよなぁ。」
「アハハハハハハハハハハ!!!」
大声で笑うランに俺も一緒になって笑った
こんな可愛い女の子を殺す世の中の方がおかしいよな
俺達は絶対に間違っていない




