第2話 旅立ち
「本当に旅に出るつもりか?」
とランのお婆さんは言う
「うん。行ってくる。」
とランが答える
「はぁ…せっかく人間に戻れて一緒に暮らせると思ったのに…すぐに家出するなんてこの老ぼれの世話はどうするんじゃ。」
「何言ってんのよ。文句ばっかり言って私よりも元気なくせに。」
「足腰が弱っておる。」
「うるさいなぁ。私が魔物の姿になっちゃったんだから一緒に暮らせないわよ。」
「私は気にしない。」
「ババアが気にしなくても村の人は気にするわよ。村八分にされるわよ。」
「そんなことはどうでもいい。私はランと余生を過ごしたい。」
「私は嫌なの。こんなど田舎で引き篭もって余生を過ごしたくないわ。」
「魔王が倒されたらランも死ぬ。わかってて言ってるんだな?」
「当たり前でしょ。」
「マリナもクーデルも強い。1年もすれば魔王を倒してしまうぞ。」
「わかってるわよ。」
「ランは余命1年ぐらいということだ。」
「だからわかってるって。」
「最後ぐらい大人しく過ごせないのかラン。」
「私もそのつもりだったんだけどね。そこのバカに唆されて旅に出ることにした。」
「カイト…お前どういうつもりだ?」
とチャイナお婆さんに睨まられてしまう
大事な大事な孫娘が唆されていると聞かされては
怒って当然だ
そんな紹介の仕方しなくたっていいじゃないかラン
「いやだなぁ。俺はランに生きてて欲しいからこそ一緒に旅に出ようと提案したんですよ?」
「意味がわからん。ちゃんと説明しろ。」
「魔王が死ぬとランも死ぬんでしょう?だから魔王と一緒に生きていける世の中にするための活動をするんです。」
「アホか。そんなこと出来るわけない。」
「そんなのやってみないとわからないじゃないですか。どうせほっとけばランは死ぬ命なんです。だからこそ俺の案にランはのってくれた。どうせ死ぬなら悪あがきしてもいいじゃないですか。」
「…魔王が封印される前の300年前ぐらいは人間と魔族は共存して生きていたんだ。でも…今の時代は魔族は完全に敵だとされている。魔王と共存なんて…」
「大丈夫!!大丈夫!!なんとかなりますって!!」
「何を根拠に?」
「根拠とかありませんよ。勘です!!」
「おまえ…孫娘の命がかかっておるのにそんな適当な…」
「えー。でもお婆さんの言うこと聞いて、ランがここで引き篭もって生活してたら確実にランは死んじゃうじゃないですかー。」
「…。」
「ね?俺はランが生きていけるかもしれない未来を掴む旅に出るんです!!
「はぁ…ただの悪あがきだ。意味がない。」
「少なくともここで引き篭もって生活するよりは意味がある旅にしてみせますよ。」
「はぁ…バカなやつらめ。勝手にしろ。」
「へへっ。すんません!!」
どうやらお許しが出たようだ
正直、ランが生き残る可能性なんて3%ぐらいだ
だから本当に悪あがきでしかない
それでもこんな田舎村で魔物だと後ろ指刺されて暮らすより
俺と旅に出た方が楽しく過ごせるようにはしてあげたいと思う
もちろん3%とはいえランが生きていける道も諦めているわけではない
やるからには全力で魔族の友好性をアピールする旅にするつもりだ
「よし!婆さんの許しも得られたし、そろそろ行こうか。ラン。」
と俺がランに言う
「お婆ちゃん。本当に死ぬ間際になった必ずここに帰ってくるよ。」
とランが言う
「縁起でもないことを言うな。生きる為に旅に出るんだろ?生きていける保証が出来るまで帰ってくるな。」
「お婆ちゃんが私を守ってくれたおかげでハーデス村で過ごした日々は楽しかった。」
「アホか。今生の別れみたいなこと挨拶をするな。」
「ありがとう。」
ランがそう言うとチャイナお婆さんは堪えきれずに涙が溢れた
「ラン。私は何があってもランの味方だ。魔族とか関係ない。私の大事な孫娘だ。それだけは覚えておけ。」
「うん。ありがとう。お婆ちゃん。行ってきます。」
こうして俺達は旅に出た
「どこに行くの?」
「ここから1番近い都心のレアジーニャ街。」
「都心に行くの!?私、魔物なのよ!?捕まって処刑されるわよ!!」
「街に入る時はバレないようにこうやってフードで頭を隠して上着で羽も隠して尻尾もズボンにしまう。」
「えぇ…絶対バレると思うけど…」
「じゃあ忍び込もう。」
「犯罪じゃん。」
「大丈夫!大丈夫!バレなければ犯罪じゃねぇから!」
「フッ。たしかに。」
「魔族が安全で有効的だと認めさせるぞ!」
「初っ端から犯罪行為してるけどね。」
「魔族に優しくない世の中の方が悪いんだよ!」
「フフッ。そうだ!!そうだ!!」
「魔族万歳!!魔族万歳!!」
「魔族最強!!魔族最強!!」
俺達はバカなことを言いながら旅立った
ハーデス村から遠出するのは俺も初めてでわくわくしている
マリナに振られて生きる目的を失っていたけれど
ランと旅をすることが俺の生き甲斐になりそうだ
ランを生かしてみせる
絶対に
少し口が悪くて素直になれないだけの少女が
報われずに死んでいく運命の方がおかしいからな




