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君だけの勇者様  作者: ama
チート系勇者様
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43/55

第1話 失恋

失恋した

幼少期からずっと好きだったマリナ

マリナに愛してもらえるように努力した

体も鍛えた

剣術も磨いた

人にも優しくした

1番に好きになってくれるように

誰よりもいい男になる為に

俺は日々努力した

それでもマリナが選んだのはクーデルだった

きっと最初からずっと努力とか関係なく

クーデルには敵わなかったと思う

力とか容姿とか性格とか

そんなものは関係なく

マリナはクーデルだから好きなんだ

そんなことはわかっていた

それでも俺だってマリナが好きだ

諦めることが出来なかった

俺の努力は自分を諦めさせる為の手段だった

もっと強ければ

もっとかっこよければ

もっと優しい男ならば

そんな気持ちが残る振られ方をしたくなかったからだ

俺はこの世で1番強い男になったし

誰にでも自慢出来るような男になった

俺は十分努力した

だから…振られても心の整理が出来ている

愛してもらえるように

最高にかっこいい男になった

それでもダメだったんだ

やっとこの恋を終わらせられることが出来る

「はぁ…それでもつれーなぁ。」

俺の世界はマリナを中心に回っていた

急にやめろと言われても習慣化されているから難しい

この愛する気持ちをすぐに消すことなんて出来ない

マリナとクーデルは冒険に出るからハーデス村で傷心を癒して暮らすしかない

マリナがいないこんな田舎村で何を目標にして生きていけばいいんだ

何もやる気が出ない

俺が失恋の痛みを忘れることが出来ずに夜中、ハーデス村の山の上にある池でぼーーーっと眺めて過ごしていると

「ひっく…ひっく…」

と泣き声がした

暗くてよく見えないので近づくと

ランが池の側で泣いていた

「おい。」

と俺が声をかけるとびくーーーと驚いていた

「なっ…えっ…今何時だと思って…!!」

とランが言うので

「それを言うならこっちのセリフだ。夜中の1時に1人で池で何やってんだ。危ないだろうが。」

「うっ…うるさい!!ここなら誰もいないと思ったのに…最悪。早くどっか行ってよ!!」

「なんで俺が。こっちが先客だ。」

「ゔゔゔ…」

大粒の涙を溢したままランが何処かに行こうとするので

俺はランの腕を掴む

「何すんのよ!離してよ!!」

「何で泣いてんだよ。」

「ほっといてよ!!1人になりに来たの!空気読めよ!!」

「泣いてる女の子放置する方がひどいやつだと思うけど。」

「ここで引き留める方がひどいわよ!1人にさせてよ!!」

「いいじゃん。失恋した同士仲良くしようぜ。」

「なっ…!!!」

「泣いてるのはマリナがクーデルに告白したからだろう?」

「ゔゔゔ…」

「泣くなよ。ランはまだ振られたわけじゃねぇんだしさ。」

「無理だよ…マリナには敵わない。」

「そんなことないぞ?クーデルはランが好きだと言っていた。」

「…。」

「まぁ俺としてはマリナに幸せになってほしいからクーデルとマリナが恋人になってほしいけどな。」

「とんだ聖人君主ね。普通はマリナが振られた方がチャンスだと思うんじゃないの?」

「好きな女の悲しんでいるところはみたくないからな。」

「バカな男ね。」

「優しい男だと言ってくれよな。」

「私は…クーデルに相応しくないから。」

「両思いならそれでいいじゃないか。」

「ダメなの…ダメなの…ダメなの!!!私は…マリナみたいに優しい女じゃないし!!大人しくて可愛い女でもないし!!」

「口が悪くて愛想悪くてもランがいいって言ってくれてるなら愛されてていいじゃないか。」

「ダメなの…!!私…!!マリナがクーデルに告白してる姿を見ただけで嫉妬して…マリナはお婆ちゃんを助けてくれた恩人なのに…!!こんな醜くてぐちゃぐちゃの感情になって…!!」

「恋はそんなものだよ。気にすんな。俺だってクーデルに醜い感情を持ってるよ。」

「ダメなの!!ダメなの!!」

ランは泣きながら体を震わせている

メンタルが崩壊してパニックになってきている

「おい。大丈夫か?落ち着けって。」

「ゔゔゔ…」

ランは苦しみうずくまり始めた

そして…


ランの頭から角が生え

背中からは羽が生え

お尻からは尻尾が生えた


魔物化

ランは悲しみのあまり魔物化してしまった

「おい!大丈夫か!?魔物化してるぞ!!」

「ゔゔゔ…こんな私じゃ…クーデルと一緒にいられない…」

「大丈夫だ!!マリナの聖女の力があれば元の人間に…」

「私は人間じゃないの!!!」

「…え?」

「私は…魔族の生き残りなんだって。さっきお婆ちゃんから聞いた。」

「嘘だろ…」

「本当は薄々気づいてた。魔物化した人間にお前は魔物だろとか言われたし。お婆ちゃんが私を引き取って田舎で暮らしていたのは私の存在を隠す為だったんだって。私は人間じゃなくて魔物なんだ。はじめから。」

「…。」

「マリナに聖女の力なんか使われたら私は浄化して死んじゃう。だって人間じゃないもん。」

「…。」

「あーぁ。せっかくお婆ちゃんが人間に戻ったのに。私が魔物になっちゃったせいでまた迷惑かけちゃう。ハーデス村で暮らすことも出来なくなっちゃうな。」

「…。」

「お婆ちゃんに迷惑はかけられない。1人で山奥で暮らすよ。誰にも気づかれないように。」

「なんで?」

「なんでって…魔物だってバレたらハーデス村で暮らせないよ。魔物は人間を襲う化け物だから。」

「ランはそんなことしないだろう?」

「しないけどさ。」

「じゃあ別に誰もランを殺す理由なんてないだろう?」

「あるよ。魔物は人間の敵だもん。こんな姿じゃ仲良く暮らせない。」

「姿が変わっただけで何も変わってないのに。変だろ。」

「魔物は人間を襲う生き物だと思っているから仕方ないよ。」

「ランは襲わないと村のみんなが理解してくれれば平気だろ。」

「そんなの夢物語だよ。私は色んな街を冒険したけど、魔物と仲良くしている人間なんてごくごく一部だけだよ。」

「一部の人間は理解してくれているんだろう?もっと増やせばいいじゃないか。」

「いいの。もう。そんなことしなくても。」

「諦めんなよ。魔物だっていい魔物がいるから一部に理解があるんだろう?ランが魔物でも生きていけるよ。」

「無理だよ。私は純粋な血筋の魔族。魔王が死んだから魔族は全員死ぬらしいよ。」

「は?マジかよ…」

「魔王はクーデルとマリナが必ず倒してくれる。だから私の命はあと少しなの。だからもういいの。1人でひっそりと死にたいの。」

「そんなこと言うなよ。ランは何も悪くないのに死んじゃうなんてダメだろ。」

「私が魔族に生まれたから仕方ないの。」

「そんなこと言うなよ…そうだ!俺と2人で旅をしようぜ!!」

「はぁ?何言ってんの?」

「魔物が怖くないって世界に広める旅をするんだ!そうすればランの生きやすい世界になるだろう?」

「無理に決まってる…」

「大丈夫!!大丈夫!!俺には作戦があるから!!」

「どうせ死ぬのにそんなことして何になるの?」

「世界的に魔物が安全だと広まれば、魔王を殺さなくてもいい共存するルートもあるかもしれないし。」

「ありえない夢物語。」

「そうか?ランが普通に理性的に話せる魔族なら魔王だって人を襲う化け物じゃない可能性が高い。現に魔王が復活したっていうのに魔物の被害はあるけど、魔王が直接人間に被害を与えた話は聞いたことがない。」

「それはそうだけど…」

「ほら!話せばわかる魔王かもしれない!」

「だからといって人間達が魔族相手に友好的になるわけが…」

「だから俺達の旅が重要になるんだよ!ランが先陣を切って魔物は優しく友好的だと証明するんだ!」

「絶対無理…」

「やってみなければわからないだろう?どうせ山中で死んでいく命なら俺と旅して余生を過ごそうぜ。」

「…いいわよ。のった。どうせ死ぬならカイトに賭けてあげる。悪あがきは得意なの。」

「よっしゃー!!俺達の失恋旅!!楽しもうぜ!!」

「フッ。そうね。恋愛の敗北者の悪あがきの旅楽しもうじゃないの。」


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― 新着の感想 ―
失恋から始まる物語という王道の導入でありながら、カイトとランという「敗れた者同士」を主人公に据えた発想がとても印象的でした。特に、お互いの傷を抱えながらも前を向こうとする会話は自然で、読んでいて応援し…
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