第38話 抽選
俺は高級宿で1人で泊まることが出来た
ランは朝起きるのが遅いのでお昼の12時にコーク街で1番大きなレストランで待ち合わせをしている
12時まで暇なので、この街で今日の夜開催されるお祭りについて話を聞いて回る
「よぉ!坊ちゃん!今日の花祭りの観光客か?」
と花屋のお兄さんが話しかけてきた
「いえ。俺は冒険者で旅の途中で寄ったコーク街がたまたまお祭り時期だったんです。」
「そりゃあ運がいいなぁ!坊ちゃん!コーク街の花祭りは盛大で綺麗だぞ!」
「それは楽しみですね。あと俺はもう14歳なので坊ちゃんではありません。」
「14歳なんてお坊ちゃんだよ!アハハ!花祭りは初めてだろう?自分の好きな花を購入して願いを込めて中央の噴水に供えるんだよ。」
「なるほど。面白そうだ。」
「冒険者なら1人で来てるわけじゃないんだろう?お仲間と一緒に花を買いに来てよな!」
「そうだね。後でまた伺うよ。」
「絶対だからな!うちの花が1番華麗に手入れしてあるからご利益あるぞ!」
「それは素敵だな。」
「あとは花言葉とか調べて買うといいよ。願いと合わせて買うんだ。」
「花言葉?」
「知らないのか?花には全て意味が込められているんだ。冒険者に人気の花はリンドウ!花言葉は“勝利”だ。綺麗な紫の花だ。いいだろう?」
「うん。とても綺麗だ。」
「花祭りで人気の花は薔薇だ。赤い薔薇は“愛”の花言葉を持っていて恋人同士で愛を誓うんだ。」
「それは聞いたことがあるな。俺の村でもプロポーズをする時に贈る花は赤い薔薇だったよ。」
「そうだろう!?女性は美しい赤い薔薇で告白されることをみんな夢見ているんだ。この花祭りで告白するカップルも多いんだ。」
「へぇ…」
「おっと興味ありかい?恋人になりたい女の子でもいるのか?」
「い…いや…あの…その…」
「アハハ!わかりやすいなぁ!坊ちゃん!真っ赤になっちゃって可愛い〜♡青春だねぇ!」
「恥ずかしいからもうここでは買わない。」
「待て待て待て!坊ちゃんの想い人にバラすようなことを商売人がするわけないだろう!?何年この花祭りで花を売ってると思ってるんだ!そんな野暮なことしないって!」
「坊ちゃんって呼ぶのをやめろ。」
「じゃあにいちゃん?」
「まぁよしとしよう。」
「思春期の男の子は気難しいなぁ。」
「他におすすめの場所はある?」
「好きな子と来るならカヌーがお勧めだよ。川を2人でカヌーで漕いでゆったりとした時間を楽しむんだ。」
「カヌー?って何?」
「カヌーを知らないのか?船だよ。2人で漕ぐ船。」
「それって初めてでも出来るのか?」
「もちろん。難しくないからね。」
「楽しそう!どこで乗れるんだ?」
「カヌーは人気だから今からなら抽選券を貰って当たった人にだけしか乗れないよ。」
「え!?抽選ってどこで!?」
「あそこのお洒落な本屋を左に曲がると橋がある。橋の下でカヌーの受付をやってるからそこで抽選だよ。」
「ありがとう!!」
俺は急いで橋の下へ行き、抽選券を貰った
予約が取れなかった人はみんなこのカヌーの抽選をしているようだ
「当たった…」
なんと俺の抽選券は当たりだった
時間は20時からのカヌーに乗れることになった
「やった!!!」
俺は大喜びしてランとの待ち合わせの場所へと向かう
待ち合わせの10分前に到着して、人が混んで入れなくなる前に席を取っておいた
時間ぴったりにランはレストランに来たが
「ちょっと!ついてくんな!!」
「いいじゃん!パーティ入れてよ!!」
「雑魚に用はないの!!」
とランとジェシカは言い争いをしてレストランに入ってきた
「一晩で随分仲良くなったみたいだね。」
と俺が言うと
「ねぇ。面白くない冗談やめてくれる?私だって本当は高級宿に泊まりたかったのに!!我慢してこんな女の家に泊まってもう最悪の気分よ!!」
とランが言う
「なによー!昨日の晩御飯とかも食べさせてやったのに!!」
とジェシカが言う
「まるこげの卵焼きで偉そうにしないでよね!食べてやったことに感謝しろよ!!」
「ひどーーい!」
と2人は言い争っている
「えっと…ジェシカさん。俺達2人で冒険したいからパーティには入れられないよ。ごめんね。」
と俺がジェシカに言うと
「やだやだやだ!!一晩ランを泊めてあげたんだから恩返しぐらいしてよね!」
とジェシカが言うので
「えっと…いくらぐらいかな?」
「お金じゃないの!パーティに入れて欲しいの!」
「それは出来ないよ。」
「お試し期間でいいから!お願い!!」
「うーん…俺達は特殊なパーティで、自分の身を自分で守れるような人じゃないと一緒には旅出来ないよ。」
「うぅ…」
「ジェシカの命を預かるんだ。俺達には荷が重いよ。」
「ドラゴン倒すぐらい強いのに!?」
「俺達はお互いに信頼して背中を預けているからドラゴンも倒せるんだ。仲間を庇いながらは戦えないよ。」
「うぐぐ…」
「ごめんね。ジェシカは回復が得意なんだろう?それならどこのパーティにも重宝されるさ。」
「だって!他のパーティに入っても弱い魔物相手に苦戦して回復だけ私にさせるんだもん!つまんない!つまんない!!私はもっと強い冒険者の役に立って回復役をしたいの!!」
「回復は確かにとても重要だ。でも自分の身を守れるぐらい強くないと強い魔物と戦いにいくパーティには選ばれないよ。」
「うぅ…回復は本当に得意なの!!お願い!!一回でいいから連れて行って!!」
「うーん…どうする?ラン?」
俺はランに話をふる
「却下。」
と無情に吐き捨てた
「ひどい!!!一晩泊めたんだからお礼に一度だけ冒険に連れて行ってくれたっていいじゃん!!」
「A級モンスターならいいんじゃないか?ラン。」
「それでジェシカが死んでも構わないならいいわよ。」
「守ってくれないの!?」
「私は嫌よ。」
「死なないようにカバーはするよ。」
と俺が言うと
「本当!?やったー!!じゃあギルドいこ!A級モンスターの依頼を受けなくちゃ!!」
「まずはここで昼食を食べてからだよ。」
「そっか!そっか!」
と言ってジェシカは上機嫌でランチを食べている
一晩泊めた恩を仇で返すわけにはいかないからな
「そうだ。今日はコーク街で花祭りがあるだろう?カヌーが乗れる抽選に当たったんだ。20時から一緒に乗ろう。」
と俺が言うと
「え!?いいんですか!?嬉しい〜♡」
とジェシカが言う
「いや…あの…俺はランと一緒に…」
「え?ランと?嘘でしょう?」
「いや…本当だよ…」
何故今の話の流れでジェシカが誘われていると思ったのか
謎だ
「カヌーって何?」
とランが言うので
「2人で乗る船だよ。初めてでも簡単に漕げるらしい。」
「私泳げないけど。」
「大丈夫さ!俺がしっかり漕いであげるよ!」
「勇者様も初めてなのに?大丈夫なの?」
「じゃあ私が漕いであげよう!!私は何とカヌーで漕いだことが人生で3回もあるんだ!!経験豊富で素晴らしいと思わないかい!?」
とジェシカが言う
「いや…俺はランと一緒がいいから…」
「そんな可愛くない女より私の方がいいですよ!」
「卵焼きもまともに作れないくせに。」
「これから練習するんだもん!」
「無駄よ。勇者様には幼馴染の可愛い女の子マリナが好きなんだから。ジェシカなんて相手にならないわ。」
「ランじゃないの!?」
「えぇ。私とは違って大人しくて可愛くて優しくて超絶可愛い女の子よ。諦めなさい。」
「えぇ…幼馴染が可愛いとか卑怯!」
「卑怯ってなんだよ…」
「結局男って強い女より家庭的で可愛い女を選ぶのね。あーあ。つまんなーーい。」
「そうそう。じゃあ諦めてとっとと帰りなさい。」
「いやいやいや。食べ終わったらギルド行くわよ。」
「本当にA級モンスター倒しに行くの?」
「当たり前!!回復役がパーティにいるだけで戦力が全然違うことを認めさせてやるんだから!!」
「ジェシカのメンタルは鋼だね。」
「あったりまえ!私が世界一可愛くて強いって信じて生きてるからね!!」
俺もジェシカのメンタルは見習うべきなのかもしれない
自分が強いと信じることは俺の課題だ




