第3話 旅立ち
俺はランと一緒に魔王を倒す旅に出ることにした。
村のみんなも両親も応援してくれた。
カイトも一緒に行こうと言ったけれど、マリナを置いて旅には行きたくないと断られてしまった。
カイトはマリナが一番大事なんだな。マリナだけは旅に出ることに否定的だった。
「そんな危険な旅、何があるかわからないよ!心配だよ…。」
「大丈夫。危険な時は逃げるからさ。自分の身を一番大事にして旅をする。約束するよ。」
「私だって力があれば一緒に旅に出たかったのに…。」
マリナが泣きながら言う。俺はマリナの頭を撫でて慰める。
「必ず無事に帰ってくるから。マリナ。心配してくれてありがとう。」
そう言うとマリナは俺に抱きつき泣きじゃくる。
「絶対絶対絶対絶対絶対だから!約束して!!」
「うん。約束する。」
ランはハーデス村の男の子の双子の六歳のキノとピノを抱き締めていた。
キノとピノはランと離れたくないと泣きじゃくっていた。
「いやだよ…行かないで…ランお姉ちゃん…。」
「ごめんね。おばあちゃんを助ける為なの。」
「僕達がもっと力があれば一緒に旅に出てランお姉ちゃんを守ってあげるのに…。」
「ありがとう。キノ。ピノ。一緒に旅に出るクーデルはすっごく強い勇者だから大丈夫だよ。」
「嘘だ!」
「嘘じゃないよ。クーデルは私とおばあちゃんを助けてくれた勇者なの。だから私クーデルを信じてる。」
「うう…。大きくなったらクーデルより強くなって俺達が一緒に旅に出るから!!」
「フフフッ。ありがとう。大好きだよ。キノ。ピノ。」
三人で感動の抱擁をしている。ランがキノとピノに別れを告げて俺に近づく。
「じゃあ行こうか。」
「うん。」
俺達は村のみんなに盛大に見送られながら旅に出た。
「これからどこに行くんだ?」
「レアジーニャ城。勇者一行を支援してお金をくれるらしいから。」
「勇者一行って…俺らも貰えるの?」
「わかんないけど…魔王討伐する人達はみんな王様に挨拶して行くのが決まりらしいから。」
「そうなんだ。それよりランがキノとピノと仲良いなんて知らなかったな。」
「キノとピノはよく私のお家に来てたのよ。私が魔法の練習してるのを毎日見てたわ。」
「毎日!?そんなにずっと一緒にいたの?」
「あの村、何もないからね。魔法を見ることが珍しくて見に来てただけだけど。でも見てるだけじゃなくて少し使えるようにもなったのよ?」
「キノとピノが魔法を?」
「うん。」
「全然知らなかった…。」
「私の家に来てることも秘密にしてたみたいだし、魔法を使えることも秘密にしてたみたいね。なんで秘密にしてたのかは知らないけれど。」
「ふーん…。」
ハーデス村は秘密にすることなんて出来ないぐらいすぐに村のみんなに知れ渡る。
だから正直キノとピノがそんな秘密を抱えてると知ってなんと言うか…少しモヤモヤしてしまった。
ランと仲良くしたいと俺は思っていたのに、キノとピノは俺よりもずっとランのことを知っていて仲良くしてるなんて先を越された気分だ。
「俺達とはあまり仲良くしたくないと思ってたよ。」
「そういうわけでは…。私は封印魔法を成功させる為に日々特訓してたから。それに幼馴染三人の世界が出来上がってるし入り難いわよ。新参者は。」
「新参者だなんて…同じ村で育ったから同じじゃないか。俺はランとも仲良くしたかった。」
「ろくに話しかけてくれたこともないくせに。」
「そ、それは…。」
「アハハ!いいじゃん!これから一緒に旅するんだからこれから仲良くしていこうよ。」
「そうだな…。」
「仲悪くなって旅するのが嫌になるかもね。」
「それはないよ。」
「どうして?」
「俺はランが好きだから。」
「はぁ!?マリナが好きなんでしょ!?」
「え!?い、いやそういう意味ではなくて…人として…。」
「はいはい。どうせ私はマリナみたいに可愛くないですよーだ。」
「そんなこと…。」
「あるくせに。」
「…。」
「正直で残酷だね。クーデル。」
「ごめん。」
「フフッ。いいじゃない勇者らしくて。」
「どこが?」
「この世の中で正直に生きていくことはとても難しいことなのよ。みんな人の顔色を伺って偽って生きてる。でもね。クーデルは違う。自分の価値観を一番大事にして生きてる。勇者らしいと思うわ。」
「こんなの普通だよ。嘘をつく方が相手に失礼なだけ。勇者らしくも何ともないよ。」
「クーデルには勇者の自覚が足りないなぁ。」
「そんなこと言われても…。」
「今からクーデルのこと勇者様って呼ぶから。」
「は!?やめろよ!恥ずかしい!!」
「どうして?これから魔王を倒すんでしょ?勇者様。」
「やめろって!」
「やめないよーだ。これはおまじない。クーデルが勇者になれるように。言霊って大切なんだよ?」
「そんな…恥ずかしい…。」
バン
背中を叩かれる。
「いって…。」
「魔王を倒すのよ!勇者様!!堂々と勇者を名乗りなさい!!」
「えぇ…。倒した後に名乗るものなんじゃ…。」
「絶対クーデルが魔王を倒す勇者になるんだから!ね!!」
どうしてランはそんなに俺を信じてくれているんだろうか。
やはりお婆さんから貰った鍵に選ばれたのが俺だからなのか。
「わかったよ。俺は魔王を倒す勇者だ。」
そう言うとランは満足そうに笑う。
「あ、笑った。」
「え?」
「いつも学校では無表情だったから。珍しくて。」
「そんなに?私無表情だった?」
「うん。」
「おばあちゃんにはうるさいっていつも怒られてたのになぁ。」
「そうなの?」
「私自分のことうるさい人間だと思ってた。」
「ハハッ。これからうるさい旅になりそう。」
「怒るの?」
「まさか。とても楽しみだよ。」
無口で人と関わることが嫌いだと思ってたランは俺が思っていた人と全然違った。
初めてみた笑顔はとても愛らしく可愛いことを知った。
これからランと旅することが楽しみで人生で一番ワクワクしていた。
ランはどうだろうか。
ランも俺と同じようにこの旅を楽しんでくれるといいな。




