第28話 光魔法
マリナのことは大好きだった
小さい頃からずっと一緒で
優しくて可愛いマリナ
好きになるのは当然だと思う
でも俺には絶対に敵わない恋敵のカイトがいた
カイトも強くて優しくて何でも出来る完璧な男だった
何もかも中途半端な俺がカイトに敵うわけがない
マリナのこと好きだったけれど
カイトとマリナの仲を切り裂いてマリナを独占しようなんて全く思わなかった
俺はカイトとマリナを巡って戦う気なんて全くなくて
2人の結婚式をおめでとうと見送るつもりでいた
それなのに
ランはどうしても誰にも譲りたくなくなった
ただの友人であるカーラに対してもランが懐いているという事実だけで面白くないし
俺は魔王を倒した後は用済みだと思われていたことにかなりのショックを受けた
魔王を倒した後はハーデス村に戻って
俺とランは夫婦になって末永く一生共に過ごすものだと勝手に思っていた
ランがハーデス村を出て行くなんて想像もしなかった
お婆さんが大好きだからずっとずっとハーデス村にいると思っていたけれど
お婆さんが亡くなった後は
もしかしたらハーデス村に未練なんてなくて
出て行ってしまうかもしれない
外の世界の魅力を知ってしまったランは
田舎のハーデス村なんて煩わしい存在になるのかもしれない
外の世界で友人や
…恋人を作るつもりなのかもしれない
それだけは絶対に嫌だ
絶対にランを他の人に渡したくない
こんな感情が自分に湧くなんて
ドス黒くて醜い独占欲と
一途に相手を思う尊い感情
これが恋なのか
「ふぁぁ…。おはよ。勇者様。」
今日はいつもよりねぼすけの11時にランは起きた
恋心を自覚してから
前よりもさらにランが可愛く見えるようになってしまった
寝起きのランはぽけっとしてて
凄く可愛い
このランを知っているのは俺とチャイナお婆さんだけだという事実が嬉しい
「おはよう。ラン。」
昨日までの俺ならもう少し早く起きろよと文句も言いたくなっていたが今はそんなことはどうでもいい
ランの寝顔とランの寝起き姿を独占出来ていることに満足していた
「今日は何するんだっけ?」
「今日は俺の修行をしてくれる人を探しに行く予定だよ。」
「冒険者ギルドでまた情報仕入れてくるの?」
「そうだね。」
「じゃあ私ここで待ってる。」
「そんなこと言わずにさ。たまには一緒に冒険者ギルドに行かないか?」
「えぇ?だって私関係ないし。私も自分の修行したいし。」
「同じパーティの俺のことは関係なくはないだろう?」
「勇者様は関係なくないけど、勇者様の指導者なんて関係ないじゃない。」
「たまには俺の我儘に付き合ってくれよ。」
「えー。やだ。私も修行したいもん。」
頑なに俺と冒険者ギルドに来てくれない
まぁランは本当に大鎌の練習をしているからだろうけど
「せっかく一緒に旅をしているんだ。たまには俺の修行に付き合ってみないか?」
「うーん…まぁそこまで言うならちょっとだけ。」
としぶしぶ今日は付いてきてくれた
昼食を俺達は冒険者がら集まるレストランで食べた
「よお!クーデル!今日はランも一緒なんだな!」
とシグルが話しかけてくれた
「こんにちは。シグルさん。」
「聞いてくれよ〜。リービル国が平和になりすぎて、なんと今日のモンスター討伐依頼は0!冒険者の商売上がったりだぜ。」
「平和なことは素晴らしいことですよ。」
「そりゃそうだがな…。俺は適当な雑魚狩りをしてゆるーく生活することが好きだったのに…このまま平和だと別の国へ行くしかなくなってしまうよ。リービル国気に入ってたんだけどなぁ。」
「どこに行くつもりなんですか?」
「ジャガラ島かな…」
「ジャガラ島?」
「ああ。ここから結構離れた場所だけど、ジャガラ島も森のドラゴンがいるのに、リービル国のように平和だと聞いたからな。」
「海と森のドラゴンは平和的なんですね。」
「そうみたいだぞ。それとは違ってここから近いヒビ砂漠は風のドラゴンがいてハリケーンが常に巻き起こって悲惨な状態らしいぜ。」
「へぇ。そうなんですね。」
「ああ。近づけないみたいだ。遠方から少し姿が見えるだけでみんな吹き飛ばされてしまうらしいよ。」
「風のドラゴンを討伐するのは難しそうですね。」
「砂漠のハリケーンなんて砂嵐で地獄らしいぞ。砂嵐で前が見えないらしい。」
「なるほど…教えて頂きありがとうございます。」
「これぐらい普通の雑談だよ。」
「1つお聞きしたいことが。」
「なんだ?」
「リービル国にいる剣士で1番強い人って誰ですか?」
「そりゃあカズヤ様だろ。」
「有名な方なんですか?」
「そりゃあもう。リービル国で1番強い剣士なのに、冒険はしなくて、奥さんと一緒に花屋を営んでいる変わり者だよ。」
「へぇ…なんか羨ましいですね。」
「そうだなー。俺も可愛い嫁さん貰って早く引退してー。」
「あはは!ジャガラ島に行くより、ここでお嫁さん探しでもしたらどうですか?」
「無理だよ。俺はゴツくてイカついからモテねぇ。カズヤ様みたいに高身長なイケメンならよかったのになぁ。」
「シグルさんは魅力的な人です。きっと素敵な女の人と結婚出来ますよ。」
「そんなもの好きどこにいるのやら。」
「カズヤさんが営んでいる花屋さんを教えてもらえますか?」
「いいけど…剣士は引退したみたいだし、門前払いされるかもよ。」
「お話するだけしてみます。」
俺達はシグルさんに場所を教えて貰ってカズヤさんの花屋へと向かった
ちょうどカズヤさんらしき高身長のイケメンが花屋にいて
「いらっしゃい。恋人へ花のプレゼントですか?」
と話しかけてきた
俺とランが恋人に見えたようだ
「いえ。僕達は恋人ではなく、冒険者パーティです。」
「それは失礼しました。これから告白の為にですかね?」
「いやちがっ…違わないけど…でも今じゃなくて…えっと。あの。その!!」
俺は告白という単語に動揺してパニックになってしまった
ランの目の前でみっともなく取り乱して恥ずかしい
告白したいとは思っていたけど
まだ心の準備が出来てないのに!!
「フフッ。可愛い冒険者さんだね。バラなんてどうだい?告白にピッタリだよ?」
「だから違います!!」
「さっき違わないって…」
「いや…その…とにかく今は違うんです!!俺はカズヤさんに剣術を教えて貰いたくて伺ったんですよ!」
「俺は剣士はとっくに引退したから他を当たりなよ。」
「カズヤさんが1番強いと伺いましたので。太刀筋だけでも見てくれませんか?」
「まぁそれぐらいなら。」
「ありがとうございます。」
俺は鍵の剣を取り出し
「鍵よ力を!」
と言って鍵を剣のに変貌させた
「へぇ。凄い。鍵は見えないけれど剣になれば見えるようになるんだね。不思議な剣を使ってるんだね。」
「この鍵の剣を作った人は事情があって今は話せないんだ。この鍵の剣の力は魔物に強いってことしかわからなくて…」
「これは光魔法だよ。勇者だけが扱えると言われている力さ。」
「めずらしいのですか?」
「とてもめずらしいよ。俺も光魔法が使えるから最強の剣士なんて言われてたんだ。」
「カズヤさんも光魔法の剣を持っていたんですか?」
「光魔法の剣なんてどこにもないよ。君の剣が初めてだ。俺は普通の剣に光魔法を付与していただけさ。」
「この鍵の剣って使えます?」
「わからない。少し貸してみてくれよ。」
「わかりました。」
俺は鍵の剣をカズヤさんに渡すと
鍵の剣は消滅し、元の鍵に戻ってしまった
「あ…ダメみたいですね。」
「そうだな。どうやらこの鍵の剣を作った人が条件付きで鍵の剣を扱える人が決まっているようだ。」
「なんの条件なんですか?」
「まずその鍵が見えないからな。見える人が条件なのだろう。」
「どうして俺だけ見えるのでしょうか。」
「光魔法使いなら誰でも見えるわけじゃないからな…。こればっかりは製作者に聞かないと謎だね。」
「そうですか…」
「光魔法はね。心で操るのさ。」
「心で?」
「そう。どんな強敵でも強い心を持たないといけない。弱気になると光魔法は応えてくれない。だから扱える人も少なく、勇者の力なんて言われているんだ。」
「光魔法ってどうやって鍛えるのですか?」
「心の強さは経験の豊富さかな。強い敵と戦って勝つことで力が増していくと思うよ。」
「なるほど…教えて頂きありがとうございました。」
「太刀筋は見なくていいのかい?」
「はい。俺の師匠から教わったことを崩したくないので。」
「じゃあなんで太刀筋を見て欲しいと?」
「鍵の剣を見せたかっただけです。」
「なるほどね。じゃあ最後に強くなるアドバイスをしてあげよう。」
「どうすればいいですか?」
「告白してもっと深い関係になれば…」
「わ…わかりましたから!もういいです!!さようなら!!」
俺は逃げるように去ったが、カズヤさんは面白いのか笑いながら手を振って見送っていた
恥ずかしくて俺は顔を真っ赤にする
「大丈夫?」
とランが声をかけてくれた
「ごめん…今日はせっかくついてきてくれたのにかっこ悪い姿ばかりで…」
「気にしないで。それに勇者様はマリナが好きなんでしょう?私はわかっているから平気よ。」
「え…いや…」
確かに俺はマリナが好きだった
でも今はランが好きなのに
ランは俺のことどう思っているのだろうか
ただのビジネスパートナー?
それとも…
「なぁ。魔王を倒して冒険が終わったらどうしたい?」
直接告白する勇気もないヘタレには
こうやって気持ちを確かめることが精一杯だった
ハーデス村でお婆さんと暮らすと答える
絶対そうなんだ
ランはお婆さんが大好きだから
そしたら俺はゆっくりランと関係を深めていけばいい
告白するのは今じゃなくても
ゆっくり進めていけば…
「リービル国で暮らしたい!ババアと一緒に!!」
蒼天の石礫
声が震える
「な…なんで…」
「この国気に入ったから!」
それは俺よりもカーラが気に入ったということなのか
ランにとって俺は魔王を倒せば用済みの存在でしかないのか
ショックで何も言えないままでいると
「勇者様はマリナと結婚してハーデス村で暮らすのでしょう?」
と追い討ちをかけられてしまう
「マリナはカイトと結婚するだろ。俺は…」
「そうかしら?私はそう思わないけど。」
どうしてそんなこと言うんだ
やめてくれ
ランの言葉から聞きたくない
「だって勇者様とマリナの方がお似合いだわ。」
やめてくれよ
ランからそんなこと聞きたくなかった




