第25話 大鎌使い
ランは今日も10時起きていた
よく寝ているからだろうか最近はご機嫌だ
「今日も気合い入れて特訓するわよ!」
「特訓はしたいけれど、どうすればいいんだろうね。この街の有名な剣士と魔法使いに教授してもらうように頼む?」
「私より強い魔法使いなんているの?」
「強くはなくても色んな種類の魔法が使える人はいると思うよ。」
「長年他の魔法を練習して一切出来なかったのに、ほんの数日で他の魔法を会得できると思わないけれど。」
「もしかしたら画期的な方法が見つかるかも。」
「えぇー?それよりもさ!大鎌使いに教授されたいな!!」
「たしかにランの大鎌は邪魔なだけだもんね。」
「やっぱり大鎌使いとして名乗るには教えてもらいたいわ!!」
「うーん…もしも大鎌が使えるようになったとして、結局魔物は切れないだろう?」
「まぁ…そうだけど…」
「人間相手や魔物討伐のサポートは強力な魔法があるだろう?」
「そうね。」
「大鎌を練習しても意味がないんじゃ…」
「この大鎌で大悪党を切り裂くのよ。」
「魔法を使った方が強いよね…?」
「…。」
「もう大鎌使いやめて可愛い魔法の杖でも買ったら?」
「やだやだやだ!これがかっこいいんだもん!!私は絶対大鎌使いになるんだもん!!」
「かっこいいけどさ…」
「いいから!大鎌使いの師匠を探すわよ!」
俺達は冒険者の溜まり場であるレストランへと向かい情報収集を行うことにした
「こんにちは。」
俺は冒険者のパーティに話しかける
「こんにちは!挨拶が出来て最近の若者は偉いねぇ。随分と可愛らしい冒険者だな。何歳だ?」
屈強な30歳ぐらいの男が答えてくれた
「俺達は14歳です。」
屈強な男は俺の頭をわしゃわしゃと撫でて言う
「14歳のガキンチョが魔王討伐を目指すとはすげえな!お前!俺の名前はシグル。戦士だ。よろしく。」
「俺はクーデル。剣士です。こちらの女の子はラン。魔法使いです。よろしくお願いします。」
「よろしくな!それで?何か聞きたいことでもあるのか?」
「えっと…大鎌使いの人って知ってますか?」
「大鎌使い?1人知ってるけど、もう他のパーティメンバーに入っていたぞ。勧誘は無理なんじゃないかな。」
「いえ。大鎌の使い方を教えて欲しくて。」
「ランちゃんが持っている武器が大鎌だからか?」
「そうです。」
「でもさっき魔法使いって…」
ランが会話を遮って乱入してくる
「魔法使いを辞めて大鎌使いになりたいんです!!」
「えぇ…。こんなに可愛らしい女の子には向いてないんじゃないかな…?」
「大鎌使いになりたいんです!」
「どうして?」
「かっこいいからです!!!」
ランは目をキラキラと輝かして熱弁をする
シグルさんは俺に小声で耳打ちする
「なぁ…大丈夫なのか?」
俺は小声でシグルさんにだけ聞こえるように答える
「ごめんなさい。言い出したら聞かない我儘姫なんです。大鎌使いの方に教わって出来なかったら諦めると思うので…」
「思春期の女の子のご機嫌取りは大変だな。」
俺は微笑んで答える
「大変ですけど…とても楽しいです。ランの我儘に振り回されるのは。」
「愛だね。」
俺達がこそこそと話していると
「ちょっと!何で内緒話してるのよ!」
「ごめん!ごめん!えっと…大鎌使いだろう?今日はシーサーペントを狩って戻ると言っていたから夕方には戻ってくるんじゃないかな?」
「夕方か。まだ少し時間があるな。どうしよう。」
「ここでまったり待っていればいいじゃねぇか。」
「ふむ。情報収集を兼ねてここで待たせてもらおうかな。」
俺達は冒険者の溜まり場のこの場所で色々情報収集をした
水のドラゴンの討伐要請は一応されているものの
リービル国にとって恩恵しかない水のドラゴンは誰も討伐するつもりがないこと
寧ろこのリービル国では水のドラゴンは守り神の様に崇められるようになりつつあることを教えてもらった
リービル国で暴れている魔物は少なく、平和であることから冒険者の休憩場所として有名らしい
スライムやシーサーペントなどの魔物はいるけれど、凶暴性は少ないので倒しやすい
リービル国は水のドラゴンのおかげで水源が豊富になり、国が豊かになったので報酬も弾むそうだ
命のやり取りをしている冒険者にとってこのリービル国はオアシスのような場所のようだ
俺達が情報収集も兼ねた雑談をしていると
「お!おーーい!!サーシス!!」
とシグルさんが大声で呼ぶ
どうやら大鎌使いのサーシスさんがシーサーペントの討伐を終えて帰ってきたようだ
「どうした?シグル。」
サーシスさんは20歳ぐらいの背の高いかっこいい男の人だった
「この子供達がサーシスに大鎌を教えてもらいたいそうだ。」
サーシスは訝しげな目で俺達をみる
「はじめまして。俺はクーデル。戦士です。」
「はじめまして!大鎌使いのランです!」
大鎌なんか使えないくせに…
「はじめまして。俺の名前はサーシス。大鎌使いだ。ランちゃんが俺に大鎌を教えてほしいってことかな?」
「はい!」
「何がわからないのかな?近くに敵が接近した対処法とか?素早い敵に対して鎌を当てることが難しいとか?」
「まずはどうやって鎌を持つか教えてほしいです!鎌の振り方とか!」
「大鎌使いなら誰でも知ってる初歩的なことだけど?」
「最近なったので。教えてほしいんです!」
「最近…?遊びで冒険しているタイプなのかな?」
「何言ってるんですか!!私と勇者様は魔王を討伐するパーティですよ!!本気も大本気です!!」
サーシスは目配せでシグルさんと俺に助けを求めているが
シグルはお手上げのポーズをしてランの我儘ぶりに同情しており
俺は手を合わせてお願いするポーズをして何とか初歩的なことでも教えてやって欲しいと頼んだ
「簡単な初歩的なことでいいなら教えてやってもいいけど…」
「本当!?ありがとう!!」
ランは目を輝かせて喜んでいる
サーシスさんの懐のデカさに感謝だ
俺達とサーシスさんは周りに人がいない海辺まで歩いて移動した
「じゃあまずは鎌の持ち方からね。」
サーシスさんが優しくランに教えている様子を俺は遠目から見学している
サーシスさんが優しくてかっこよくていい人なのは素晴らしいことだが
ランがかっこいい男の人と一緒に楽しく修行をしている姿はなんだか面白くない
ランは人に懐くことがほとんどないのにサーシスさんにはよく笑い楽しそうに大鎌の使い方を学んでいる
サーシスさんもはじめはめんどくさそうにしていたが、ランがあまりにも素直に可愛く教わるものだから感化されたのか楽しそうにしている
何故2人の仲睦まじい姿を眺めないといけないのだろうか
サーシスさんに嫉妬している自分の小ささに嫌気が刺す
「じゃあ今教えたことを踏まえて鎌を振ってみよう。」
とサーシスさんが言う
「はい!」
ランは勢いよく鎌を構えて大きく振ると
大鎌はすっぽーんと手から抜けていきまた投げてしまっていた
「わ!」
サーシスさんが鎌を構えてランが投げ出した大鎌を防御しようとすると
ランは投げ出した大鎌を風魔法で操り、自分の手元に戻した
「もう!また失敗しちゃった!サーシスさんすみません!!もう一度お願いします!!」
とランが言う
サーシスさんは呆気に取られている
「今のは?どうやって鎌を手元に戻したの?」
「風魔法で!」
「ランは大鎌使いじゃないのか?」
「大鎌使いです!」
「魔法使いじゃないのか?」
「とうの昔にやめました!」
「最近だろ!!なんでやめたんだよ!!さっきの相当高度な魔法だったぞ!!」
「魔法使いなんて古臭い時代遅れの職業はもうやめたんです!!」
「アホか!ランに大鎌の才能はない!大人しく魔法使いとして冒険するんだな!」
「そんなぁ!サーシス師匠見捨てないでくださいよ!!」
「ランは破門だ!大鎌使いにはなれないよ!!」
「がーーーーん。」
口でがーんとか言う人初めて見たよ
大鎌の修行初日で破門にされてとぼとぼと俺の元に帰ってきたランに声をかける
「お疲れ様。やっぱりランは魔法使いが似合うんじゃない?ランの華奢な体じゃ大鎌は難しいよ。」
と言うとランはニヤリと笑って答える
「フフ…見た!?勇者様!!大鎌がすっ飛んでも風魔法で操れるなら問題ないわ!!大鎌を空中に舞わせて敵を地獄に叩きつける!!素晴らしい戦術が誕生したわよ!!」
と得意気に話した
大道芸人のような戦術を編み出してご満悦のようだ
大鎌は飛ばして使うもののようだ
大鎌を飛ばして使うより
魔法の杖で戦う方が強そうだけど…
本人はかっこよさ重視のようなので
ランが満足そうならそれでいいか




