第21話 修行
「ドラゴンは海にいるの?」
「そう。ドラゴンは海に住んでいて、特に被害はないらしい。ドラゴンも温厚で人を襲うことはしないようだ。それでも人類の敵だから何人かの勇者は海のドラゴンを倒しに行ったらしい。でも誰も傷をつけることも出来ずに帰ってきたらしい。負傷者はゼロ。」
「ふーん。じゃあ海のドラゴンは放置でいいわね。被害がないなら倒す意味もない。それに魔王を倒せば海のドラゴンは人間に戻るかもしれないからね。」
「そうだな。わかった。じゃあ次の国にまた出発しないとな。」
「そうね。それにしても…魔物全員が人間を殺そうとするわけじゃないのね。」
「そうだな。ミランは普通の青年だったし。」
「存在が災いを呼ぶなんて人間のエゴよね。魔物からしたらいい迷惑だわ。」
「魔物はそんなに悪い種族ではなかったのかもね。」
「300年前に人間が勝利したから。勝った方が正義なのよ。」
「正義が勝つんじゃなくて、勝った方が正義か。」
「そうでしょう?」
「でも正義が勝つと信じて生きたいよ。」
「アハハ!それこそ無理無理!」
「だって私達が魔王を倒すのよ?私達の正義って何?」
「ランの笑顔だろ?」
「そんな正義が正しいわけないじゃない。」
「世界で一番大事なことなのに…。」
「世界で一番どうでもいいことよ。正義なんて振りかざすもんじゃないわ。どこかに悪が生まれるだけなんだから。この世には天使もいなければ悪魔もいない。正義もなければ悪もないのよ。」
「この世で信じられるのは自分だけ?」
「そうよ。」
「ランならそう言うと思った。俺を信じてくれないの?」
「胸を触る変態を信じるわけないでしょう?」
「なんかラン辛辣になってない?ちょっと揉んだだけじゃないか…。あんなに勇者かっこいい大好きって言ってくれてたのに。」
「胸を触った罪は重いのよ。一生反省しろ。」
「申し訳ございませんでした。」
「明日にでも旅立つか。この国でやることは何もないし。」
「え…急ぎ過ぎじゃない?もう少し滞在しましょうよ。」
「何で?」
「えっと…修行の為?」
「この国で修行するの?有名な魔法使いでもいるの?」
「そんな人はいないけど…」
「ランがそんなことを言うのは珍しいね。今すぐにドラゴンを討伐して、魔王を倒してお婆さんを助けたいって言うのに。」
「そりゃあ私だって今すぐババアを助けたいよ!でもなんというか…力を身につける期間も必要かなって。」
「確かに俺も自分の力不足は実感しているからな。自分の力を扱う練習をした方がいいかもしれない。」
俺が不甲斐ないせいでランが1つの村を燃やしてしまうことになった
鍵の剣の力は俺の知らない力がまだまだあるようだ
この鍵の剣はランのお婆さんチャイナさんから譲り受けたもの
チャイナさんが封印されている今、鍵の力を聞くことは出来ない
今わかっていることは魔物相手に強い力を発揮すること
普通の剣では炎のドラゴンを斬りつけることなんて出来なかっただろう
「俺も鍵の剣の力を知る機会は欲しいと思っていたんだ。しばらくリービル国に滞在して自分の力を扱う練習をしようか。」
「うん。それがいいわね。」
自分の力を知るにはやはり戦うしかない
俺達はギルドに向かって魔物討伐の依頼を探す
「スライム討伐に行きましょう。」
とランが言う
「え…どうして?力を試すならもっと強い魔物の方がいいんじゃないか?」
「私はスライムも倒せないもの。スライムぐらい倒せないと。今回は勇者様の助けは必要ないわ。私1人で討伐してみせるから!」
「大丈夫かな…」
俺達は1番簡単なスライム討伐に行くことになった
今回はランの修行の為に俺は手を出してはいけないと念を押されてしまう
俺はランの勇姿を見守ることになった
ランの目の前に1匹のスライムが現れた
「でたわね!覚悟しなさい!!」
ランは大鎌を振り下ろし、スライムに攻撃する
スライムはサッと避けて逃げていく
「待ちなさい!!」
ランは風魔法でスライムを追いかける
スライムに雷魔法を当てるが、やはりランの魔法は魔物相手には傷1つつけることが出来ない
「でええええい!!」
ランは大鎌を振り下ろしスライムに攻撃するが、また大鎌はすっぽ抜けて飛んでいってしまった
スライムはランに向かって突撃し、ランはまたスライムの粘液まみれになっていく
「うわああああああああああん!気持ち悪いよおおおおお!!」
「ラン!!」
俺がランに駆け寄ろうとすると
「ダメ!私がやっつけるんだから!勇者様はそこで見てて!!」
ランが大声で叫ぶので、俺はグッと堪えて見守る
ランはスライムを素手で掴み
「観念しなさい!」
と言ってスライムを握り潰そうとするが
スライムはスルンとランの手から抜けて無傷だった
「くそッ!絶対負けないんだから!!」
ランは大鎌を拾い、再びスライムを討伐しようと構えると
目の前には先ほどまで相手にしていた小さなスライムではなく、ランの体よりも3倍ほど大きなスライムになっていた
「ふん!でっかくなった方が私の鎌の餌食になるわよ!!成敗してやるんだからーー!!」
ランの大鎌はついに大きなスライムに当たったが
ぽよよよんと跳ね返されてスライムは無傷だった
「私の大鎌も効かないの!?」
大きなスライムはランをパクりと飲み込んでしまった
「きゃあああああああああああ!」
「ラン!!」
俺は堪えきれずに鍵の剣を取り出す
「鍵の剣よ!力を!!」
鍵の剣はスライムを切り裂き、ランを助けることが出来た
「ラン!大丈夫か!?」
「うっ…うっ…私の鎌でも傷をつけることが出来ないなんて…」
「魔法だけじゃなくて、ランの攻撃全て魔物には傷をつけることは出来ないみたいだね。」
「これって強くなれば傷をつけることが出来るようになるのかしら…」
「あくまで予想でしかないけれど…心の清らかさが魔物相手には有効らしいから…ランが修行するから心の修行になるんじゃないかな。」
「心を清らかにする修行ってこと?」
「そうだね。」
「どうすればいいの?」
「街のボランティアとか?」
「何をするの?」
「ゴミ拾いとか?」
「ええー。めんどくさー!!」
ランは魔物相手に攻撃することは全く出来ないと思っていいな…
心を清らかにするなんてたぶん無理だろうから
「ゴミ拾いしてからまたスライム討伐挑戦するわよ!」
「ゴミ拾いしたぐらいではスライム討伐出来ないんじゃない?」
「なによ!じゃあ他に何をすればいいの!?」
「こういうのは日々の積み重ねというか…心を毎日清らかにしようとしないと…」
「わかった。リービル国で私は心を入れ替えてスライム討伐してみせるわ!!」
「大丈夫かな…」




