第20話 秘密の特訓
勇者様が眠りについた後、私は時々夜に抜け出す。
日中はタクトが傍を離れるなという忠告を守って勇者様と私はほとんど行動を共にしている。
そんなことしなくても私は強いから大丈夫なのに。
「海が綺麗だから海でやろうかな。」
私は海へ移動する。
夜の海は真っ暗で綺麗というよりは怖かった。
でも神秘的でいいなとも思った。
夜こっそり抜け出してやること。
それは風魔法の練習。
勇者様の前で努力してる姿を見られるのが恥ずかしくてこうして練習するのが癖になってしまった。
風魔法だけは苦手で操ることが難しい。
自分や勇者様を風魔法で浮かせることが出来れば魔物討伐も移動も楽になるのに。
「今日はあの岩まで飛ぶ練習するか。」
私は大鎌を構えて風魔法を纏う。
自分を浮かせてゆっくりと岩へと移動する。
なんで風魔法だけこんなにコントロールが難しいの?集中。集中。集中。
「はぁ。やっと出来た…。願うだけでコントロール出来るようになりたいのになぁ。こればっかりは練習重ねて慣れるしかないかぁ。」
そう私が呟くと砂浜に人影が見える。
「?」
人影は座って何かしているようだった。
私はこっそりと人影に近づく。
「何やってんの?」
「わぁ!!」
人影の正体は私と同じ歳ぐらいの女の子だった。
どうやら絵を描いていたようだった。
私が覗き込み絵を見ると、先程私が風魔法を使っていた絵が綺麗に描かれていた。
「凄い上手ね。」
「そ、そんな…お世辞でも嬉しい…。ありがとう。」
「でも勝手に描くのは良くないんじゃない?」
「ごめんなさい…。」
「その絵は誰にも見せないでよね。私がこっそり夜抜け出してるの勇者様にバレたら怒られるもの。」
「どうしてこっそり風魔法の練習をしてるの?」
「練習してる姿がかっこ悪いから。」
「ええ!凄く綺麗でしたよ?」
「そうじゃなくて…上手く出来ない自分を見せるのが恥ずかしいの。」
「とてもお上手な魔法なのに。」
「貴方こそ一人でコソコソ絵を描いてるじゃない。どうして?」
「それは私も恥ずかしくて…。下手だし見られたくなくて。」
「こんなに上手なのにそれこそもったいないわよ。私なら自慢するけど」
「そんな…私の絵なんて何の価値もないものですから。才能ある人達に比べたらとてもじゃないですけど人に見せれるレベルじゃないんです。」
「でも描くのが好きで辞めれないんでしょう?」
「そう。こんなことしても何の意味もないのに。売れるわけない絵を描き続けて時間の無駄だってわかってるのに。それでも辞めることが出来なくてこうして夜中にこっそり抜け出して描いてるの。バカよね。ほんと。」
「いいじゃない。一人でこそこそするのって楽しいわよね。私も昔から好きだった。時間の無駄を過ごして何が悪いの?楽しいからやる。理由なんてそれでだけでいいのよ。」
「貴方も魔法使うのが楽しいの?」
「嫌いじゃないけど…苦しい時もたくさんあった。私もね。魔法の才能がなかったの。一生懸命練習したけれど結局出来なかった。辛かったな。あれほど時間をら費やして何も出来なくて、膨大な時間を無駄にした。こんなに努力してるのに何でって。私のやってることに意味はあるかなって凄い思った。でも今ならわかる。私は結局その魔法を使うことは出来なかったけれど、あの努力した時間は絶対無駄じゃなかった。」
「魔法は使えなかったのに?どうして?」
「泣きながらがむしゃらに頑張ったあの日々が今の私を支えてくれてるから。」
「そう…。私もいつかくるかな。自分の絵を好きになれる時が。」
「さぁ?どうだろう。でも私は好き。貴方の絵。」
「ありがとう。良かったらあげるよ。今日描いたその絵。」
「本当に?嬉しい。私誰かに絵を描いて貰ったの初めてだったの。いい記念になったわ。、」
「うん。私も今わかった。こんなに夜中にこそこそ絵を描いて捨てて時間を無駄にして何やってんだろうって思ってたけど。意味はあった。だって貴方に絵を渡すことが出来た。それだけで過去の私が救われた。」
「こそこそ仲間同士仲良くしましょう?」
「うん。」
「私はラン。貴方の名前は?」
「カーラ。よろしくね。ラン。」




