第18話 悪には裁きを
街を出て国境を越えるのは長い旅路になった。
もう一カ月程旅をしているがまだ着かなかった。
途中、魔物の討伐をしたり、剣の修行をしたり、全然吹けないフルートを吹いたりして順調に旅を続けていたが、その日は事件が起きた。
「おい。お前ら。金を全額置いていけ。金さえ出せば命だけは見逃してやる。」
振り向くと盗賊団が十名程いて、俺達を追い剥ぎに来たようだった。
「そこのお嬢ちゃんはお金を渡してもちょっとだけ楽しませて貰おうかな。大丈夫。痛くはしないから。ちゃんと気持ちよくしてあげるからね〜。」
盗賊団がそう言った瞬間。
ランは盗賊団の親玉を目掛けて木の蔦を地面から生やし、素早く蔦で首を締めた。
ギリギリと蔦を締めて親玉はあと数秒で死にそうだ。
「ラン!やめろ!!」
「こんなやつら生かしておいた方が危険よ。」
「殺し合いからは何も生まれない!まず話合いをしろ!」
「話し合ってこいつらを逃してどうなるの?他の冒険者達が同じ被害あうだけでしょう?ここで殺した方が世の中平和になるのよ。」
「ここで改心して悪行を辞めるかもしれないだろう?殺しはダメだ!!」
「チッ」
ランは舌打ちをして首の蔦を少し緩める。
しかし、まだ蔦は首に纏わりついたままだ。他の盗賊団が逃げようとしたのをランが逃すはずもなく、全員蔦で拘束をした。
「君達を街の自衛団に引き渡す。もう二度と犯罪を犯すな。」
「勇者様が寛大でよかったわね。私ならここで今全員殺していたわよ。」
俺達は近くの街の自衛団へ引き渡そうと十名の盗賊団を蔦で拘束した状態でズルズルと引きづり連れて言った。
一番近くの街に入った。
その街は地獄のような街だった。
女性が全員奴隷になっていたのだ。
街の男達に暴力を振られ、鞭で叩かれ、焼き石を押し付けられ働かされていた。
「おい!冒険者の女がきたぞ!お前らこの女を拘束しろ!!」
街の男達がランに向かってゾロゾロと近づく。
「ラン!耐えろ!攻撃するな!!まずは話し合いを…」
そう言い終わる前にランは目の前の男の首を手に持っていた大鎌で落とした。
「やめろ!それ以上は…!!」
俺は必死に止めようとするが、ランは全く聞き耳を持ってくれなかった。
「う、うわあああああああ!」
街の男達は目の前にいた男の首が跳ねられたのを見て恐れ慄き、逃げ出す。
ランは逃げた男達全員をあっという間に燃やし、炭に変えてしまった。
「うわああああああああ!!!」
断末魔が街に響く。
逃げ惑う男達を次々にランは燃やし殺していった。
街は燃え盛り、地獄絵図になった。
ランは街で見つけた男達を全て燃やし尽くしてしまった。
先程捕まえた盗賊団は失禁をしてガタガタと震え、悪魔…悪魔だとブツブツ呟いていた。
「その男達もこの村の男達です!殺して下さい!!」
この街の女の子が盗賊団の男達を指刺し、叫ぶ。
「ひいいいいいい。ごめんなさいいいいいい。二度と罪を犯さない!約束する!!お願いだ!!見逃してくれーーーー!!」
「殺して!!!早く!!!」
ランは盗賊団の男達も一瞬で消し炭にした。
その姿は残酷で…とても美しい死神のようだった。
「ありがとうございます!ありがとうございます!!」
街の女の子達はみんな平伏してランに感謝の言葉を口にしていた。
「悪魔を殺してくれてありがとうございます!貴方は私達の神様です!!」
「やめてください…。私はただ怒りのままに大量殺戮をしただけです。一番の悪魔は私です。」
「貴方が悪魔だと言うなら、今日からこの街は悪魔崇拝をします。本当にありがとうございました!!」
「……。」
俺は…ランを止めることが出来なかった。
俺は知っていたのに。
初めて人を殺めることを躊躇って一番初めの攻撃の鎌を持つ手が震えていたことを。
人を殺していい気分になるやつなんていない。
ランを守らないといけなかったのに。
ランの手を血に染めさせてしまった。
「ラン…。」
「勇者パーティなのに犯罪者になっちゃった。ごめんね。私にはやっぱり向いてないみたい。善行するみたいなの。」
「そんなことないよ。ナーチス村では雨を降らせてたじゃないか。」
「村を助ける為にやったわけじゃないから。」
「それでも村は助かった。今回だってやり方は最悪だけどランは街の女の子達を助けたんだ。そうだろう?」
「私を責めないの?」
「泣きそうな女の子を怒れないよ。」
俺がそう言うとランはその場で泣き崩れた。
俺はランを抱きしめて慰める。
ランを二度と泣かせないようにと思っていたのに。
この小さな女の子に大きな罪を背負わせてしまった。
俺が手を染めなければいけなかったのに。
ランにやらせてしまった。
「ランが殺してなかったら、俺が殺していたよ。だから…俺達は同罪だ。」
「嘘つき。勇者様は話し合いで解決するつもりだったでしょう?」
「……。」
「わかってた。でも話し合いで解決して女の子達の恨みも憎しみも消えないと思った。だから殺した。」
「ごめん。俺が甘いこと言ってたから。」
「違う。勇者様が正しくて私が悪魔だった。こんなやり方間違ってる。でも…どうしてもあいつらを許せなかった。」
「違うんだ。あいつらは死んで当然の人間達だった。だから…俺がやらなきゃいけなかったのに。俺がヘタレで臆病で人を殺せなかった。だからランが罪を背負うことになってしまったんだ。」
「これからもヘタレで臆病なままの勇者様でいいのよ。勇者様の手が血で染まると魔物を切れなくなるかもしれないもの。魔物を切ることができるのは清く美しい心持ち主の勇者だけ。」
「そんな…!俺はランを守る勇者だ!ランを傷つけるようなことはしたくない!」
「ありがとう。でも勇者様に魔王を倒してもらわないと困るの。だからこれから先も私が汚れ役をやる。大丈夫よ。今度はもっと上手くやるから。」
「……。」
「そんな泣きそうな顔しないでよ。勇者様。私達は最強の勇者パーティ。誰より強く正しくて美しい存在でないとね。」




