開けゴマ 入れ力士
賭場流華院を見事に撃破。一息ついてから奴を問い詰めたかったが、状況はそれを許さなかった。
「髷の広域センサーに感ありでごわす」
「こ、今度は何ですか……?」
潰れた門の残骸を片付けようとしていた小春が振り返る。その脇にいた小雪も、手を止めてこちらを見据えていた。
「複数の車両に、養殖力士らしき影。恐らくは……」
「さっきの奴の仲間ですね」
小雪の推測に、おいどんは頷きで答える。野良相撲関係の取り巻きだろう。
「動きに統率は無いでごわすが、いかんせん数が多い」
単なる偶然だろうが、バラバラにやって来るせいで包囲網のようなものが出来上がっている。どの方角に逃げようとも、見つかってしまうだろう。
「もう戦うしか⋯…」
抱えていた門の破片を置き、戦闘態勢になろうとする小雪。おいどんはそれを手で制した。
「いや、やり過ごす方法があるでごわすよ。ついてくるでごわす」
おいどんは、2人を連れて相撲部屋の母屋へと踵を返した。
◇◇◇
「よいしょーっ!」
稽古場の中央に鎮座する、寂れた土俵。その上でおいどんは弓を担ぎ、力強く四股を踏んだ。弓取りである。観客がいないため、掛け声は自前ではあるが、立派な弓取り式であった。
「あの、雷電さん。なんで弓取りを……?」
「そうですよー! 追っ手をどうにかしないといけないのに」
小雪と小春がやきもきしながら声を上げる。まぁ、知らなければ当然の反応だろう。そう思っていると、仕掛けが作動し土俵が揺れ始めた。
「「えぇっ!?」」
「木を隠すなら森の中、力士を隠すなら土俵の中でごわす!」
土俵が割れ、隠された地下室への入り口があらわになったのだ。これこそが本物のセーフハウス。ここに潜みやり過ごすのだ。
「さぁ、中へ!」
こうしておいどん達は、地下室へと足を進める。その背後で、土俵は元の位置へと戻るために再び揺れ始めた。




