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使役を捨てた召喚師の成り上がり ~最弱のミニドラゴンと、虐げられた仲間たちと歩む世界改革~  作者: チョコ大福


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第8話:ギルドのどよめきと、変わる視線

登場人物

レイン・アークライト

主人公。アークライト家を出奔し、ミニドラゴンのファル、ウルフのフェリルと共に新しい旅を続ける心優しき召喚師。力による支配を否定し、対等な絆を大切にする。

ファル

レインの相棒である手のひらサイズのミニドラゴン。初めてのクエストでの大活躍を経て、少し自信をつけたお兄ちゃんドラゴン。

フェリル

レインの新しい仲間である小さなウルフ。優れた嗅覚と聴覚でパーティの危機を察知し、戦闘では鋭い動きで貢献する。

受付の女性職員

オルテナの冒険者ギルドで働く職員。新人であるレインたちの無謀を心配していたが、報告を受けて驚愕することになる。

ルーク

オルテナの森でレインたちの戦いを目撃したベテラン冒険者。最初は冷ややかに見ていたが、その実力を目の当たりにして認識を改め始める。

前書き

『使役を捨てた召喚師の成り上がり ~最弱のミニドラゴンと、虐げられた仲間たちと歩む世界改革~』第8話をお届けします!

前回、初めてのクエスト(月光草の採取とゴブリン討伐)を「青い魔方陣」による見事な連携で見事に成功させたレインたち。第8話では、いよいよオルテナの冒険者ギルドへと戻り、周囲の冒険者や職員たちの反応がどのように変わっていくのかを描く、爽快感たっぷりのエピソードです。ぜひじっくりとお楽しみください!

午後の温かい日差しがオルテナの町の石畳を照らす中、レインの一行は冒険者ギルドへと続く大通りを歩いていた。

朝の静けさとは打って変わって、町の中心部は多くの商人や旅人、そして昼過ぎの仕事を終えたかこれから動き出す冒険者たちで非常に賑わっている。

「ふう、初めてのクエスト、無事に終わって本当によかったね」

レインが肩の上でくつろいでいるファルに声をかけると、ファルは「きゅあっ!」と誇らしげに小さな胸を張り、得意げに尻尾をパタパタと振った。まるで「僕がゴブリンを吹っとばしたんだぞ!」とでも言いたげな、最高に誇らしい表情だ。

そして、その足元ではフェリルが楽しそうにしっぽを揺らしながら、レインの足並みにしっかりと合わせてトコトコと歩いていた。

ギルドでブロンズランクの登録を済ませたその足で向かったオルテナの森は、彼らにとって初めての実戦の場だった。

世間の人々や他の冒険者たちは、ミニドラゴンと小さなウルフを連れた召喚師など「すぐにモンスターの餌食になる」と嘲笑していたが、結果はその真逆だった。力でねじ伏せるのではなく、互いの信頼と青い魔方陣による絆のシンクロによって、ゴブリンの群れを鮮やかに無力化してみせたのだ。

ポケットの中には、丁寧に採取した「月光草」の束と、討伐の証であるゴブリンの耳がしっかりと収められている。

これらをギルドの窓口に提出すれば、初めての報酬と、冒険者としての確かな実績が手に入るはずだった。

やがて、重厚な丸太と石材で造られた冒険者ギルドの建物が見えてきた。

前回訪れたときは、冷ややかな視線やガレルトのような高慢な召喚師からの侮蔑が全身に突き刺さるような場所だったが、今のレインの足取りに迷いは微塵もなかった。

「それじゃあ、中に入ろうか。報告を済ませたら、何か美味しいものでも食べに行こう」

レインが声をかけると、二匹の相棒は元気に鳴き声をあげて応えた。

重い木の扉を押し開けてギルドのホールに足を踏み入ると、相変わらず酒の匂い、そして屈強な冒険者たちの喧騒が満ち満ちていた。

しかし、ホールの一角にいた何人かの冒険者――特に、あの日の朝に森の浅い場所でレインたちの戦闘を木陰から目撃していたベテラン冒険者のルークとその仲間たちは、レインの姿を見た瞬間、ピタリと動きを止めた。

「おい……嘘だろ。あいつ、本当に無事で帰ってきたぞ」

「しかも、あんなにケロッとした顔をしてやがる。ゴブリンの群れに襲われたはずじゃなかったのか?」

「馬鹿野郎、お前忘れたのか。あのガキが使った魔法陣の色……普通の赤い奴じゃなくて、透き通るような青だったぜ。それに、あのトカゲの動き、ただ者じゃなかったぞ」

ルークたちの間で、ヒソヒソとした動揺混じりの声が交わされる。

彼らは昨日までの「どうせすぐに死ぬ素人だ」という侮りの目を捨て、どこか警戒の色を交えた探るような目でレインの一行を見つめていた。

そんな周囲のざわめきを一切気にすることなく、レインはまっすぐカウンターの窓口へと歩みを進めた。

そこにいたのは、前回登録手続きを担当してくれた眼鏡をかけた女性の受付職員だった。彼女はレインの顔を見るなり、驚きと心配が入り交じったような複雑な表情を浮かべた。

「……あれ? お客様、無事に帰還されたのですね。正直なところ、初級クエストとはいえ、無事に戻って来られるかどうか心配していたのですが……」

職員の女性はそう言いながらも、どこか信じられないといった様子でレインを見つめた。

世間の常識では、戦闘に向かない小さな魔獣を連れた召喚師が生き残ることは奇跡に近いとされていたからだ。

「ご心配をおかけしてすみません。無事に依頼を完了してきましたよ」

レインは穏やかに微笑みながらそう告げると、ポケットから月光草の束と、討伐の証であるゴブリンの耳を取り出し、カウンターの上に丁寧に並べた。

職員の女性は、その並べられた品々を目の当たりにして、思わず「っ……!」と息を呑んだ。

月光草は一枚も傷ついておらず、最高の状態で保存されている。さらに、ゴブリンの耳の数も指定された群れの数と完全に一致していた。初心者が初めて挑んだクエストの成果物としては、非の打ちどころがない完璧な出来栄えだった。

「こ、これは……本当に、お一人と二匹で、すべて集められたのですか?」

「ええ、この子たちと一緒に協力して、問題なく片付けてきました」

レインが隣にいるファルとフェリルに視線を向けると、ファルは『ふんっ!』と胸を張り、フェリルは「ワンっ!」と短く誇らしげに鳴いてみせた。

窓口のやり取りを見ていた周囲の冒険者たちからも、「マジかよ……全部クリアしてきたのか?」「あの小さな魔獣を連れて、ゴブリンの群れを倒したっていうのか……?」と、驚きを隠せないどよめきが徐々に広がっていいた。

職員の女性は、急いで台帳を確認し、震える手でクエストの完了印を捺した。

「し、信じられない……。お見事です、レイン様。ブロンズランクの初級クエスト、見事に完全達成です!」

その声がギルドのホール全体に響き渡ると、先ほどまでレインを冷ややかに見下していた者たちの空気が一変した。

「おい、あのガキ……本当にやりやがったぞ」「ただの運じゃないのか? いや、でもあの月光草の鮮度を見ろよ。めちゃくちゃ丁寧に扱われてる証拠だ」「見かけによらず、とんでもない実力を持った召喚師なんじゃないか……?」

あちこちから、驚嘆と新たな評価の囁き声が漏れ聞こえてくる。

もはや、誰もレインの一行を「お遊びの道化師」などと笑う者はいなかった。力による支配を絶対とするこの世界において、誰も見たことのない「丁寧で確実な戦い方」が、着実に周囲の意識を揺るがし始めていたのだ。

「こちらが報酬の金貨と、クエスト達成の証拠となる証明書になります。本当によく頑張りましたね」

職員の女性は、先ほどまでの冷ややかな事務的対応から打って変わって、心からの称賛を込めた温かい笑顔で報酬の入った小袋を差し出した。

「ありがとうございます。これからもお世話になります」

レインが丁寧に礼を言い、報酬を受け取ると、肩の上のファルが『やったね!』とばかりに嬉しそうに飛び跳ねた。

その時だった。

ギルドの奥にある個室のほうから、ガチャリと重い扉が開く音が響いた。

「なんだ、このガヤガヤした騒ぎは。……ほう、もしやと思えば、あの時の落ちこぼれのガキじゃないか」

聞き覚えのある、ひときわ嫌味を含んだ高慢な声が、ホール全体の空気をピリッと凍らせた。

振り返るとそこには、以前に(第5話や第6話でも)遭遇した、豪華な装飾をまとった若い召喚師――ガレルトの姿があった。ガレルトは相変わらず巨大なオークを従え、鼻を鳴らしながら冷ややかな笑みを浮かべて近づいてきた。

ガレルトはカウンターの上の月光草やゴブリンの耳を一瞥すると、信じられないものを見るような、そしてすぐにそれをあざ笑うような侮蔑の表情に変わった。

「なんだ、お前らが生きて帰ってきただと? まさか、ギルドの裏口からこっそり逃げ出して、そこらへんで拾ってきた雑草でも並べて『クエストを完了した』とでも言い張るつもりか?」

ガレルトの言葉に、周囲の取り巻きの冒険者たちからも「さすがにそれしかあり得ないだろ」「あんなトカゲと犬にゴブリンが倒せるわけがない!」と、同調するような嘲笑の声が上がった。

しかし、レインは動揺するどころか、ガレルトをまるで哀れむような静かな目でまっすぐに見据えた。

「残念だったね、ガレルト。僕たちは正真正銘、自分たちの力でこのクエストを完遂してきたよ。君のように、モンスターを首輪で縛り上げて怯えさせなくても、ちゃんとした成果は出せるものさ」

「なっ……なんだと、この雑魚が……!」

ガレルトの顔に、怒りとプライドを傷つけられたことによる激しい険しさが走った。

ガレルトが手元の魔導具を荒々しく握り締め、従えていた巨大なオークに威嚇の圧力をかけさせようとしたその時だった。

「そこまでよ、ガレルト。他人のクエストの成果に難癖をつけるなんて、エリート家の人間として恥ずかしくないのかしら?」

ホールの一角、ひときわ静かな特等席のテーブルから、凛とした、しかし冷徹な美しさを湛えた声が響いた。

その声の主に向かって、ギルド内にいた全員の視線が一斉に集まった。

そこに座っていたのは、仕立ての良い上質な旅装束を身に纏い、冷めたエメラルドグリーンの瞳をした一人の美しい少女だった。彼女の傍らには、まるで彼女の知性を象徴するかのように、高度な魔導書や美しい魔力結晶が静かに浮かんでいる。

その少女の姿を見た瞬間、ガレルトはわずかに顔を青ざめさせ、言葉を詰まらせた。

「す、シルビア……!? なんでお前がこんな辺境のギルドに……!」

「私の居場所いちいちあなたに報告する筋合いはないわ。それよりもね、ガレルト」

シルビアと呼ばれたその少女は、冷ややかな視線をガレルトに向けたまま、スッと立ち上がった。

「力で威圧し、恐怖で従えることしかできないあなたのような者が『召喚師の誇り』を語るなんて、同じ名門の血を引く者として聞いていて吐き気がするわ。あの少年がどのように戦い、どのような成果を出したのか、さっきから見ていた周囲の人間たちが一番よく知っているはずよ」

シルビアのその的確で容赦のない言葉に、ガレルトは顔を真っ赤に怒らせながらも、相手が格上の名門出身であることを知っているのか、これ以上言い返すことができずに歯噛みした。

「くっ……! 覚えてろよ、落ちこぼれめ!」

ガレルトは捨て台詞を吐き捨てると、従えていたオークを乱暴に引っ張りながら、足早にギルドの出口へと去っていった。

騒ぎが去ったあと、ギルド内には再び静けさが戻り、そして何事もなかったかのようにざわめきが再開した。

しかし、先ほどの少女――シルビアの目は、まっすぐにレインの方へと向けられていた。

シルビアはゆっくりとレインのほうへ歩み寄ると、その透き通るような青い瞳で、レインの肩の上にいるファルと足元のフェリルをじっと観察した。そして、興味深そうな、しかしどこか納得がいかないといった表情を浮かべて口を開いた。

「あなたが、あの『絆の召喚師』と呼ばれる少年ね。……噂通り、変な組み合わせのパーティーだけど、確かに面白いものを見せてもらったわ」

予想外の人物からの接触に、ファルは警戒するように『きゅっ……』と身を縮こまらせ、フェリルは低く唸り声をあげた。

しかし、レインは慌てることなく、穏やかな笑みを浮かべて少女に向き直った。

「ありがとう、シルビアさん、でよかったのかな? 助け舟を出してくれて感謝するよ」

「礼には及ばないわ。私はただ、あの傲慢で頭の固いガレルトの顔が不快だったから真実を言っただけよ」

シルビアはふん、とそっぽを向いたが、その耳のあたりがほんのりと赤くなっているのをレインは見逃さなかった。

名門の家出中で、かつ冷徹な因習に疑問を抱いている彼女は、レインの持つ「青い魔方陣」の秘密や、モンスターとの対等な絆のあり方に、心の底から強い興味を惹かれているのだった。

そして、この出会いこそが、レインたちの旅をさらに大きく、そしてドラマチックに加速させていく新たな運命の歯車だった――。

「さてと、無事にクエストの報告も終わったし、美味しいものでも食べに行こうか、ファル、フェリル」

『きゅあっ!』

『ワンっ!』

シルビアが少し驚いたような顔で見つめる中、レインは二匹の相棒を連れて、清々しい足取りでギルドのホールを後にしたのだった。これから始まる新しい出会いと試練の予感を胸に抱きながら。

後書き

第8話「ギルドのどよめきと、変わる視線」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

初めてのクエストを完全達成してギルドに戻ったレインたち。周囲の冒険者たちの見方が変わり始める爽快感や、高慢なガレルトを論破する名門出身の少女・シルビアとの運命的な出会いを描かせていただきました。ファルやフェリルの可愛さも健在で、パーティーの絆がますます深まるエピソードになっていれば幸いです!

次回の第9話では、ついに新しいモンスターの仲間である小型ゴースト・幽霊系のマスコット「ポルカ」が登場するエピソードに繋がっていきます……!

ブックマークや評価、いいねなどをポチッと押していただけると、執筆のモチベーションがものすごく跳ね上がります!

それでは、第9話でお会いしましょう!

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