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使役を捨てた召喚師の成り上がり ~最弱のミニドラゴンと、虐げられた仲間たちと歩む世界改革~  作者: チョコ大福


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第5話:オルテナの町と、冷たい視線

登場人物

レイン・アークライト

主人公。アークライト家を出奔し、ミニドラゴンのファル、ウルフのフェリルと共に新しい旅を続ける心優しき召喚師。力による支配を否定し、対等な絆を大切にする。

ファル

レインの相棒である手のひらサイズのミニドラゴン。好奇心旺盛でお兄ちゃん風を吹かせつつ、町のにぎやかさに少しドキドキしている。

フェリル

レインの新しい仲間である小さなウルフ。鋭い感覚を持ち、レインの足元で周囲の様子を警戒しつつも、温かい旅を楽しんでいる。

ガレルト

オルテナの町の門や広場で見かけた、魔獣を道具として荒々しく扱う高慢な若い召喚師。

前書き

『使役を捨てた召喚師の成り上がり ~最弱のミニドラゴンと、虐げられた仲間たちと歩む世界改革~』第5話をお届けします!

前回、絆の青い魔方陣を通してフェリルを正式な仲間として迎え入れたレインたち。第5話では、いよいよ最初の大きな拠点である「オルテナの町」に到着します。世間の人々や他の召喚師たちがモンスターをどのように扱っているのか、そしてレインの「対等なスタイル」が周囲からどう見られるのかを描く、物語の大きな転換点となるエピソードです。ぜひじっくりとお楽しみください!

青空の下にそびえ立つ、石造りの頑丈な城壁。その巨大な門をくぐり、レインたちはついに辺境の商業都市「オルテナ」の町へと足を踏み入れた。

一歩足を踏み入れた瞬間、石畳の道を行き交う人々の喧騒、あちこちから漂ってくる香辛料や焼き立てのパンの匂い、そして威勢の良い商売人たちの声が一気に押し寄せてきた。森の中の静寂とは打って変わった活気ある光景に、レインの肩の上でくつろいでいたファルは「きゅっ……!」と驚いたように小さく声を漏らし、レインの首元にぴたりと体を寄せた。

「すごい人込みだね、ファル。怖がらなくていいから、しっかり掴まっていてごらん」

『きゅぁ……』

ファルがレインの襟をギュッと前足で掴み直すのを確認してから、レインは足元に視線を落とした。

フェリルは初めて見る町の賑わいに少し警戒しているのか、ピンと耳を立て、低く唸るような気配を隠しながらも、レインの足首にピタリと寄り添うようにして歩みを進めている。野生の警戒心を残しつつも、レインを絶対的に信頼しているからこそ、パニックを起こさずにきちんとついてきているのだ。

「さて、まずは旅の資金を稼ぐためにも、冒険者ギルドか、あるいは当面の食料を調達できる市場を探さないとね」

レインが独り言をつぶやきながら広い大通りを歩いていると、周囲を行き交う人々や他の冒険者たちの視線が、自然とレインの一行に集まっていることに気づいた。

だが、その視線は歓迎や好奇のそれではなく、どこか冷ややかで、奇異の目を向けるようなものだった。

「おい、あれを見ろよ……」

「おいおい、あんな小さなトカゲと、ひねこびた野良犬みたいな小動物を連れているぞ」

「あんなのが冒険者崩れか? それとも、ただの物好きの道化師か何かか?」

ひそひそと交わされる囁き声が、周囲のざわめきの中からハッキリと聞こえてきた。

本来、召喚師とは魔力や契約によって異世界の存在を呼び出し、自らの手足として使役する魔法使いの一種とされる。この世界において、一般的に召喚師やテイマーと呼ばれる者たちは、屈強で獰猛な魔獣を従えてこそ一人前とみなされる。例えば、鋭い爪を持つ大型のウルフや、頑丈な装甲を持つゴーレム、あるいは空を制圧するワイバーンなどを従え、周囲を威圧しながら歩くのがステータスだった。

それに比べて、レインが連れているのは「手のひらサイズのミニドラゴン」と「傷だらけの小さなウルフの子供」だ。

戦闘の役に立たないどころか、一般人でも簡単に踏み潰せてしまいそうなほど頼りなく映るのだろう。彼らにとって、レインの一行は「落第生の珍道中」や「滑稽な見せ物」にしか見えなかったのだ。

周囲の冷笑的な視線や、あからさまに馬鹿にしたような笑い声を浴びても、レインは足を止めることなく、ただ静かに前を見据えて歩き続けた。

――笑いたければ笑えばいい。彼らは知らないのだ。この小さくて臆病な相棒たちのなかに、どれほどの無限の可能性と、魂の輝きが秘められているかを。

「――どけ、そこをどけ!」

突発的な怒声とともに、大通りの真ん中を慌ただしく、かつ乱暴に突き進んでくる一団が現れた。

周囲の人々が悲鳴を上げながら慌てて左右の路地や露店の隙間に飛び退く。何事かとレインが視線を向けると、そこには豪華な装飾をまとった若い男が歩いていた。

その男の名前はガレルトといった。ガレルトはいかにも高慢ちきといった笑みを浮かべた若い召喚師であり、その周囲には、鉄の重い首輪と、痛々しい魔力のかせをはめられた巨大なオーク型の魔獣が二体、無理やり従えられていた。

ガレルトが手元の魔導具を荒々しくカチッと鳴らすと、オークたちは苦しそうにうめき声を上げ、ガレルトの足並みに合わせて無理やり引きずられるように進まされてた。

「おい、もっと早く歩かんか! 貴様のような粗大ゴミを飼ってやっているのはこの俺様だぞ!」

ガレルトが、鞭を振るうようにしてオークの背中を叩いた。

オークは痛みに耐えかねて「グォッ!」と地を這うような悲鳴をあげたが、首輪から流れる強制的な魔力の縛りによって、逆らうことすら許されずにただうなだれるしかなかった。

(……あれが、アークライト家をはじめとする、世間の「召喚師」のやり方か)

レインは心の中で、冷たい怒りと深い憐れみを覚えた。

モンスターを「対等な仲間」ではなく、「恐怖と暴力で支配するだけの使い捨ての道具」として扱う。あのような歪で冷酷な主従関係が、この世界では「当たり前の常識」としてまかり通っているのだ。

首輪のせいで血を流し、誇りを踏みにじられているオークの姿を見たとき、フェリルは思わず「ヴルル……ッ」と低い敵意の唸り声をあげ、全身の毛を逆立てた。自分がかつて受けた理不尽な扱いと、目の前で虐げられている魔獣の姿が重なったのだろう。

『……フェリル、落ち着いて』

レインはフェリルの頭にそっと手を置き、優しくなでて落ち着かせた。

ここで余計なトラブルを起こすのは得策ではないが、だからといって、この光景を見過ごして平然としているような自分にもなりたくなかった。

高慢な召喚師であるガレルトは、ふと視線を横に向け、レインの一行を目撃した。

ガレルトは、レインの肩の上にいるファルと、足元にいるフェリルをじろりと一瞥すると、腹の底から湧き出るような侮蔑の笑みを浮かべた。

「なんだあいつは? トカゲの化け損ないみたいな雑種を連れて、ここは子供の動物園じゃねぇんだぞ。おい、そんな見世物みたいな役立たずを連れて歩いて、恥ずかしくねぇのか?」

ガレルトの連れていた供の者たちや、周囲の野次馬たちからも「だな」「みっともねぇ」「あんなんでよく召喚師が務まるな」と、下劣な笑い声が浴びせられた。

普通の人間であれば、ここで顔を真っ赤にして怒るか、あるいは恥ずかしさに耐えきれずその場から逃げ出していただろう。

しかし、レインは微動だにしなかった。彼は冷ややかな笑みを浮かべるガレルトを真正面から見据え、透き通るような穏やかな声で、はっきりとこう言い放った。

「——見世物かどうかは、いざという時に分かるさ。少なくとも、僕たちは互いを道具として扱ったりはしないからね」

「はぁ? 道具じゃねぇだと? モンスターなんてのはな、力で屈服させて利用してナンボの便利な駒に決まってんだよ! お前みたいな甘ったれたガキが、そのうちそのトカゲどもに食い殺されて泣きを見るのが目に見えてるぜ!」

ガレルトは吐き捨てるようにそう言い放つと、ふん、と鼻を鳴らして再び大きなオークを引き連れて通り過ぎていった。

周囲の野次馬たちも、物珍しそうにレインをしばらく見ていたが、やがて興味を失ったようにそれぞれの日常へと戻っていった。

騒ぎが去ったあとの静かな大通りで、レインは小さく息を吐き出した。

怒りに身を任せて言い争う必要はない。自分たちが目指す道は、あのような冷酷な男たちとは全く違う場所にあるのだから。

ふと肩に視線をやると、ファルが心配そうにレインの頬に自分の小さな頭をこすりつけていた。

『きゅぅ……』

「大丈夫だよ、ファル。あんな人の言うことなんて気にする必要はないさ。僕たちは僕たちのやり方で、もっと強くなろう」

レインが優しく微笑みかけると、ファルは安心したように小さな翼をパタパタと動かした。

そして足元では、フェリルが「ワンっ!」と力強く一度だけ吠え、まるで「僕がいつでも守ってあげるからね」と言わんばかりに、しっかりと前を向いて歩き出した。

冷たい視線や、古い常識にとらわれた人々からの侮蔑。

それらは確かにこの町のあちこちに存在していたが、レインの胸にある決意の炎を消すことはできなかった。むしろ、この世界に蔓延る「力による支配の歪み」を自分の手で変えていかなければならないという思いを、より一層強くさせるものだった。

「さあ、まずはこの町で情報収集を兼ねて、冒険者ギルドに行ってみようか」

オルテナの町の中心部に向かって歩き出すレインの背中は、追放されたばかりの頼りない落第生のものではなく、新しい時代を切り開く若き召喚師のそれへと確実に変わり始めていた。

これから待ち受ける試練と出会いが、彼らの絆をさらに強く試すことになるとも知らずに——。

後書き

第5話「オルテナの町と、冷たい視線」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

ついに最初の大きな町「オルテナ」に到着したレインたち。そこには、モンスターを力で支配し、道具として冷酷に扱う「世間の当たり前」が広がっていました。周囲の冷たい視線や高慢な召喚師ガレルトとの遭遇を通じて、レインの信念や、ファル・フェリルとの温かい絆がより一層引き立つエピソードになっていれば幸いです。

次回の第6話では、いよいよ冒険者ギルドでの登録や、そこで巻き起こる新たなトラブル、そして運命的な出会いに繋がっていきます……!

「レインたちの旅をこれからも応援したい!」「次の展開がめちゃくちゃ気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価、いいねなどをポチッと押していただけると、執筆のモチベーションがものすごく跳ね上がります!

それでは、第6話でお会いしましょう!

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