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使役を捨てた召喚師の成り上がり ~最弱のミニドラゴンと、虐げられた仲間たちと歩む世界改革~  作者: チョコ大福


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第4話:青い魔方陣と、はじまりの絆

登場人物

レイン・アークライト

主人公。名門アークライト家を出奔し、ミニドラゴンのファル、そしてウルフのフェリルと共に新しい旅を歩み始めた心優しき召喚師。

ファル

レインの相棒である手のひらサイズのミニドラゴン。臆病だが、フェリルに干し肉を分けるなど、お兄ちゃんとして少しずつ頼もしく、かつ愛らしく成長している。

フェリル

森の中で出会った小さなウルフ系の魔獣。前の主人に捨てられて深い傷とトラウマを負っていたが、レインたちの優しさに触れて救われ、正式に仲間となる。

前書き

『使役を捨てた召喚師の成り上がり ~最弱のミニドラゴンと、虐げられた仲間たちと歩む世界改革~』第4話をお届けします!

前回、傷ついたウルフのフェリルと出会い、心を通わせたレインたち。第4話では、一夜が明けて新しい朝を迎えた野営地での穏やかな時間と、レインが「召喚師」としての新しい一歩――力による支配ではない、絆の魔方陣を刻む重要なエピソードを描きます。

ファルとフェリルの可愛いやり取りや、レインの優しい決意をぜひじっくりとお楽しみください!

澄み切った朝の空気が、深い森の木々の隙間から差し込む柔らかい木漏れ日に照らされている。

昨夜までパチパチと音を立てていた焚き火はすでに小さく鎮まり、その代わりに、森の鳥たちのさえずりと、小川のせせらぎが心地よいハーモニーを奏でていた。

「ん……もう朝か」

レインは目をこすりながらゆっくりと上体を起こし、深く伸びをした。

心地よい疲労感はあるものの、不思議と昨日のような重苦しいプレッシャーはない。むしろ、背負っていた古い因習の鎖から解放されたような、すがすがしい開放感が全身に満ちていた。

ふと、自分の足元に視線を落とすと、そこには微笑ましい光景が広がっていた。

昨夜、傷の痛みに耐えながら眠りについた小さなウルフ――フェリルが、レインの足にしがみつくようにしてスヤスヤと眠っている。そして、そのフェリルの背中にピタリと体を寄り添わせるようにして丸くなっているのが、相棒のミニドラゴン、ファルだった。

二匹とも、まるで何にも脅かされない安全な世界にいるかのように、無防備で穏やかな寝息を立てている。

人間たちから「役立たず」「落第品」とレッテルを貼られ、冷たく捨てられた者同士が、こうして温め合いながら眠っている姿を見ていると、レインの胸の奥がじんわりと温かいもので満たされていくのを感じた。

「おはよう、ファル、フェリル」

レインが小さく声をかけて優しく頭を撫でると、ファルが先に「きゅ……」と寝ぼけたような声を漏らし、ぱっちりと大きな目を開けた。

『きゅあ……っ!』

ファルはレインの顔を見るなり、安心したように小さな翼をバタバタと動かし、よちよちとした足取りでレインの膝の上へと駆け上がってきた。まるで「ちゃんと守られていたよ」と言わばかりに、レインの指先に自分の鼻先をスリジエと押し付けて甘えてくる。

その少し遅れて、フェリルも目を覚ました。

最初は大人の気配にびくっと身を硬くしたが、すぐに目の前にいるのが昨日自分を救ってくれたレインであり、隣にいるのがファルだと気づくと、尻尾をパタパタと左右に大きく振り始めた。

「昨日の傷も、すっかり痛まなくなったみたいだな。よかった」

レインがフェリルの頭をなでると、フェリルは「くぅん……」と心地よさそうに目を細め、レインの手のひらに頬をすり寄せた。野生の魔獣とは思えないほどの懐きっぷりだが、それは彼らが本能で「この人間には悪意がない、それどころか魂の底から自分たちを大切にしてくれている」と理解しているからに他ならなかった。

さて、とレインは小さく息をつき、地面に視線を向けた。

ここから先、旅を続けていけば、さらに危険な場所や、他の人間たちとトラブルになる場面も出てくるだろう。特に、フェリルを正式に自分のパーティー、そして契約獣として迎え入れるためには、召喚師としてちゃんとした手続き――「絆の契約」を行っておく必要がある。

一般的なアークライト家のような召喚師であれば、血を流させ、恐怖と絶対服従の呪縛を刻み込むような冷酷な赤い魔方陣を用いる。

しかし、レインが選ぶのはそんなやり方ではない。

「フェリル。君を、正式に僕の相棒として迎え入れたいんだ。……いいかい?」

言葉の意味を完全に理解しているわけではないだろうが、レインの真摯な眼差しと優しい声色を感じ取ったのか、フェリルはぴんと耳を立て、じっとレインの目を見つめ返した。そして、肯定するように小さく「ヴぅん」と鳴いてみせた。

「ありがとう。じゃあ、始めるよ」

レインは腰から小さなナイフを抜き取る……わけではなく、代わりに自らの魔力を指先に集中させた。

アークライト家の教えでは、契約には必ず血が必要だと教え込まれていた。血の重みで魂を縛り付けるためだ。

だが、レインはそれを否定する。信頼と絆に必要なのは、血の痛みではなく、互いの魔力と心が共鳴し合う温もりだけで十分なはずだ。

レインは地面に跪き、指先から淡く優しい青色の魔力を放ちながら、丁寧に、そして力強く一つの複雑な魔方陣を描き始めた。

それは、アークライト家の特徴である鋭く尖った血紅色の陣とは全く異なっていた。

どこまでも透明感があり、水面のように柔らかく、そして中心にいる者を優しく包み込むような、穏やかな光を湛えた青い魔方陣だった。

『きゅ……!』

ファルは、その美しい青い光に見惚れるように、小さく声を漏らしてパタパタと飛び跳ねた。

レインが最後の線を描き終えると、青い魔方陣はふわりと淡い光の粒子となって空間に溶け込み始めた。

「さあ、フェリル。この陣に、君の足をそっと乗せてくれ」

レインが促すと、フェリルは少しだけ緊張した面持ちで一歩踏み出し、青い光の中心にそっと前足を置いた。

次の瞬間――。

フェリルの体が、眩い、しかし全く痛みを伴わない温かい青い光にふんわりと包み込まれた。

光の中から、心地よい微風のような魔力の波が広がり、レインの胸の奥とフェリルの意識が、まるで細い糸で結ばれるような不思議な感覚が走る。

それは、奴隷契約のような支配の繋がりではない。

互いが互いを信頼し、背中を預け合うことができる「対等な絆の証明」だった。

光がスーッと収まると、フェリルの額のあたりに、ごく薄い青色の美しい紋様(契約の証)がほんの一瞬だけ浮かび上がり、すぐに消えていった。

そして、フェリルの体から、先ほどまでの疲労や痛みの残り香が完全に消え去り、全身の毛並みが以前よりもツヤツヤと輝きを増したように見えた。

『わおーん……っ!』

フェリルは嬉しそうに空に向かって一声遠吠えをあげると、レインの足元に飛びつき、まるで喜びを全身で表現するかのようにグルグルと回り始めた。

「すごいな、フェリル。これで君も、正式に僕の相棒だ。よろしく頼むよ」

『きゅっ、きゅっ!』

ファルも「僕もお兄ちゃんだからね!」とでも言いたげな顔で、フェリルの頭を自分の小さな前足でちょんちょこと叩いてじゃれ合っている。

一人と二匹。

かつては「役立たず」「落第生」「捨て駒」と呼ばれた者たちが、いまや互いを補い合う最高のパーティーとしてここに誕生したのだった。

「さてと。昨日の今日だし、まずは近くの町まで行って、当面の食料と旅の支度を整えようか」

レインが立ち上がり、空を見上げると、太陽はすでにすっきりと昇り、雲ひとつない青空が広がっていた。

ファルはいつものようにレインの右肩にちょこんと陣取り、フェリルはレインの足元をぴったりと寄り添うようにして歩く。

森の小道を抜け、整備された街道に出ると、遠くの地平線の向こうに、石造りの頑丈な城壁に囲まれた大きな町のシルエットが見えてきた。

あれが、この地方の中心都市である「オルテナ」の町だ。

町へと続く街道には、商人たちの馬車や、他の冒険者らしい一団がちらほらと行き交っている。

中には、手慣れた様子で強力な魔獣を従えて闊歩している高名な召喚師の姿もあった。彼らはモンスターを屈強な檻に入れたり、冷たい首輪で繋いだりして、まるで「自分の武力の誇示道具」のように扱っている。

そんな光景を街道の脇から眺めながら、レインは心の中で静かに息をついた。

(あぁいう人たちから見たら、僕のスタイルは滑稽に見えるかもしれないね)

肩の上ですやすやと眠そうにしている手のひらサイズのミニドラゴンと、足元で楽しそうに尻尾を振っている小さなウルフ。

世間の常識から言えば、どちらも「戦闘の役にも立たない、落ちこぼれのトカゲと犬」でしかない。

しかし、レインの瞳に迷いはなかった。

力で従えるのではなく、絆で結ばれた彼らと一緒に、この世界に蔓延る古い因習を少しずつ変えていく。それが、アークライト家を飛び出した自分が選んだ、たった一つの誇り高い道なのだから。

「行こうか、二人とも。町に着いたら、何か美味しいものでも食べよう」

レインの言葉に、ファルは「わーい!」とばかりに小さな翼をパタパタさせ、フェリルは元気よく「ワン!」と短く吠えた。

こうして、落ちこぼれの召喚師と小さな相棒たちの、世界を変えるための第一歩となる町への道中が、賑やかに、そして力強く動き出したのだった。

後書き

第4話「青い魔方陣と、はじまりの絆」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

フェリルが正式にレインの仲間となり、力による支配の赤い陣とは異なる「絆の青い魔方陣」を介して結ばれる熱い(そしてほっこりする)エピソードを描かせていただきました。

ファルのお兄ちゃんぶりが発揮されるシーンや、いよいよ次の舞台である町「オルテナ」へと向かうワクワク感をお楽しみいただけたでしょうか?

次回の第5話では、ついにオルテナの町に到着し、世間の冷たい視線や、他の召喚師たちとのファーストコンタクト、そして新たなトラブルや出会いが待ち受けています……!

「続きが気になる!」「レインたちの旅を応援したい!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価、いいねなどをポチッと押していただけると、執筆のモチベーションがものすごく跳ね上がります!

それでは、第5話でお会いしましょう!

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