#3 呼び出し
新学期が始まって早々、僕は零を生徒会室へ呼び出した。
用件なんて、もちろんない。
ただ、会いたかった。
家で会うより、零は学校にいるときの方が表情が柔らかかった。
だけど、他の生徒と話している姿や笑っている顔を見ると、ひどく苛立った。
こんな感情、知らなかった。
「なんの用だよ、生徒会長さん」
不機嫌そうにドアを閉めながら、零がこちらを見る。睨む、といった方がいい。
あの春休みの日と、同じ場所。
零は気づいている。
如月を抱いていたのが、僕だということを。
だからだろうか。
このあと起こることを、きっと予感している。
零はドアの近くから動こうとしない。
少し伸びた金髪の前髪。
その隙間から覗く反抗的な目には、かすかに怯えの色が混じっていた。
「ネクタイはどうした?着用は校則で決まっている」
「忘れた。めんどい、あれ」
僕はゆっくり立ち上がると、零へ歩み寄った。
一歩近づくたび、零の肩がわずかに強張っていく。
その反応だけで、喉が熱くなる。
「な、なんだよ」
「ネクタイをしないのなら、せめてボタンくらい――」
僕は零の制服のボタンへ指をかけた。
「っ……!?」
零が肩を震わせる。
細い喉が、ゴクリと上下した。
最初は、本当にボタンを閉めるだけのつもりだった。
校則を盾にして、ほんの少し、あいつに触れる理由が欲しかっただけ。
それだけのはずだった。
制服の隙間から、微かに肌に触れただけで……。
――駄目だ。我慢できない。
頭の中で、何かがぷつりと切れた。
「お、おい、やめ――」
気がつけば、ソファへ押し倒していた。
零の瞳が大きく揺れる。
どんな顔で怒るのか。
どんな声で反抗するのか。
どこまで追い詰めれば、自分の名前を呼ぶのか。
熱を持ちはじめた零の白い頬に、背筋の震えが止まらない。
「や、やめ……て……」
自分の痕を刻み込むたび、零は泣きそうな顔で僕を睨み返す。
誰にも触れられないでほしい。
僕だけを見ていてほしい。
――嫌われてもいいから、そばにいて。




