#2 義兄弟
数日後。
父から「再婚相手とその息子を紹介する」と告げられた時、僕は心底どうでもよかった。
兄律の母親が他界して、すぐに僕の母と再婚した父。
そして、母も随分と前に家を出て行った。
息子である僕を置いて――。
今さら父に、この家に、僕は何の期待もしていない。
新しい家族?
滑稽だ。この家は、とっくに壊れている。
――けれど。
リビングへ現れた金髪の少年を見た瞬間、僕は息を呑んだ。
――あの目だ。
春休みの生徒会室。
扉の隙間から僕を見ていた少年。
「やぁ、こんにちは」
律が柔らかな笑みを浮かべる。
「かわいい弟ができてうれしいよ」
そう言って、零へ手を差し出した。
――触るな。
律の指先が零へ触れた瞬間、猛烈な不快感に襲われた。
――それは、僕のものだ。
「どうした,、弦?」
僕の視線に、律がこちらを見る。
穏やかな声音。いつも通りの微笑み。
今思えば、律はあの時,、僕が零へ向けた異常な執着を、もう嗅ぎ取っていたんだろう。
律は僕以上に狂った異常愛の持ち主だった。
「怖い顔して、なにか気に食わないことでもあったかい?」
「……いえ」
零を巡って、酷く泥沼な争いが始まる――そんな不吉な予感。
「その髪色、新学期までには直すように」
気づけば、そんな言葉が口から出ていた。
零が眉をひそめる。
「は?」
「聖音高校の生徒として、相応しい身なりで登校してくれ」
「めんどくさ」
吐き捨てるような返答。
大手企業の創立家でもある神大寺家。その家名にも、僕の凄みにも、怯えることも媚びることなく、真っ直ぐ睨み返してくる。
「こら、零!」
母親の静止も聞かず、零は露骨に顔をしかめた。
「あんた、生徒会長だろ?」
「そうだが」
「生徒会長は生徒の代表。生徒の意見を学校に伝えることも役目のひとつ――だよな」
粗忽な服装と態度のくせに、零は優秀だった。
そうでなければ、レベルの高い聖音高校に編入なんてできるわけがなかった。
「もっと自由な校風に改善してくれよ、生徒会長さん」
その反抗的な目を、もっと歪ませたいと思った。
ぐしゃぐしゃに乱して、それでもなお、自分を見返してくる顔が見たい。
「自由を求めるなら、まずは規律を守ってから主張してくれ」
「うざ」
心底面倒だと言わんばかりに、零は嗤った。
「零、いい加減にしなさい!すみません、生意気な息子で――」
僕はどうしようもなく、零を愛おしいと思ってしまった。




